おまけ
俺の視界は、何故か真っ暗だった。
まだガラガラのファミレスの小さな喧騒が耳を撫でて、ハンバーグの美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
「……それで、どんなシチュエーションがいいと思いますか?」
「あいつ、すごいビビりだから、シンプルな方がいいと思うよ?」
「ぶっちゃけ、
「そもそも、アイツ平野さんに気がありそうだし、そんな思い悩まなくてもいいんじゃない?」
「ほんとですか? ……それでも、失敗は絶対嫌なので」
「ちなみ、そこに突っ伏せてる奴は、どう思う?」
一樹の声がまっすぐ俺の方に向かってくる。見えないけれど、みんなの視線もブッ刺さってる気がする。
「……いっそのこと殺せ!」
「いや、そういうのはいいから? 参加するって決めたのはどこの誰だっけ?」
「シンプルで、いいと思います……」
「……よっ、よかったです……」
「結奈、カワイイ〜」
「ちょっと……抱きつかないで!!」
「いいじゃん!」
「もぉ…………えっと、それで、どうやって切り出せばいいでしょうか?」
「下駄箱に手紙入れるのは? 平野さんが一番緊張しなくて済むと思うけど?」
「でも、アイツは嘘告と思って見てみぬふりするかも? アイツ心配性だからな」
「はいはい! じゃあ、屋上はどうですか? こんなカワイイ結奈に屋上に呼び出されたらもう間違いないでしょ!」
「でも、そこまで仰々しくやったら、アイツたぶん身構えると思うよ?」
「そっかぁ……それはめんどくさ……じゃなくて、確かに疑われちゃいますねぇ……」
「めんどくさく無いよ?」
「えっ、目が怖いんだけど…………ってか、学校帰りとか、待ち伏せするのは? 『一緒に帰りましょう』って言って、帰り際に告白しちゃうみたいな?」
「平野さんはアイツと一緒に帰ったことがある?」
「……あります。というか、私からついていったと言いますか……」
「結奈ちゃん、カワイ……ぐはっ……」
「すぐ、抱きつかないの。はい、なんかきたよ! えっと、お子様ランチ……」
「あ、それ結奈の……」
「じゃない!」
「えっ、でも、少量がちょうどいいと……」
「私のじゃない!」
「……そうだね、結奈のじゃ無かったわ。私のです! ………………結奈あとで、パフェ奢りね」
「何回も帰ったことがあるなら、やっぱ帰りが自然でいいんじゃないか? ねえ、そこで突っ伏してる人?」
「…………………………いいと思います」
「いや、ちゃんと顔上げて言って? そろそろ、お前の頼んだやつも来るから、突っ伏すスペースなくなるよ……ってほら、来たよ?」
俺はゆっくり顔をあげる。久々の光が目に刺さり眩しいけれど、それ以上に、顔を真っ赤に染めた平野さんはもっと眩しくて、目を逸らした。
開いた側から注文した唐揚げ定食が滑り込む。いつの間に全員分揃っていて、本当に突っ伏せていたのが邪魔だったらしい。
「で? 帰り際が自然でいいと思うよね?」
チラチラの真正面から、視線があったり、合わないなかったり。
「…………いいと思います」
「……よっ、よっ、よかったぁ……」
平野さんは耳まで真っ赤に染めながらも、すごくいい笑顔を見せるものだから、自分の頬が余計にも熱くなってくる。
「じゃあ、次は告白の言葉かな? 何がいいと思う、岡田」
一樹は俺を覗き込みながら、ニヤニヤと口にする。だから言ってやった。
「もう、いっそのこと殺してくれ!!」
もちろん、逃してもらえるわけもなく。この拷問もとい、俺と平野さん以外のお楽しみタイムはたっぷり二時間は続いた。
せっ、先輩、来ちゃったんですか?? さーしゅー @sasyu34
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