可愛い唸り声を。
エリー.ファー
可愛い唸り声を。
私は歩いていた。
音が聞こえてきたが、そちらの方に顔を向けることはなかった。
花吹雪がやってきて、私を包み込む。
そのまま、消えることができたら、どれだけいいだろうか。
そんな思いが、私の中に生まれることはない。
いっぱい殺して来た。
おそらく、明日も、明後日も。
繰り返すだけだ。
血まみれだ。
私の体は、私の意思で動かすことのできないものとなった。
音楽が私の中を流れている。いずれ、その音楽はヘドロとなって、見ず知らずの人間を犯してしまうだろう。
水辺で、魚が死んでいた。
あと少し、というところで、魚が死んでいた。
魚が死んでいた、と思っていたら、魚の死体ではなかった。
何かの勘違いをしているうちに、時間が来た。
別れのために積み重ねた、私の姿がそこにはあった。
またも死体が積み上がる。
差別ではない。
区別でもない。
私だ。
私の死体を探すための旅に、私は出ようとしているのだ。
青い光の中に、私を見つめる誰かがいた。
私は花吹雪に閉じ込められているから近づくことはできない。
でも。
何か通じ合っている気がした。
私ではない誰かと一緒に、どこかへ行こうする私の意思。
私は、人殺しをやめられないだろう。
明日も、明後日も、その次の日も、そのまた次の日も。
私は死体を数えることをやめられないだろう。
罪の数は、私を押しつぶすだろう。
私の罪深さは、私の背中を使って煙のように立ち上るだろう。
遠くからでも見える私でありたい。
誰かにとっての、どこにでもいる私でありたい。
気づかれないように、私を数えている人たちに問いたい。
私は、あなたたちにとっての、面白い何かであることはできましたか。
ここから先に見える幻想は、私を作り上げるために重要なのです。
私は、もう殺し屋をやめなければならない。
何故なら、私には時間がないから。
もう、私を捨ててもいいだろうか。
花吹雪の中に、私を埋もれさせたい。
私ではない。
私に似た何かでありたい。
偽物でいたいのだ。
この気持ちが分かるだろうか。
分からないだろう。
分かるわけがないのだ。
私には、私の中の純潔がある。
他の誰にも渡すことはできない。
花吹雪に囲まれていた私の過去が、一瞬だけ濃くなった。
そして。
また、一瞬で。
消えた。
目の前の花吹雪も消えた。
私も消え去りたかった。
音の中にいる私。
音と共にいる私。
私の顔をした悲劇と喜劇に心をすり減らしながら、今日も私は川の中に自分を見た。
飛び込んでみた。
最高だった。
もう二度と、私は、私を思い出すことはないだろう。
さようなら。
私は、どこに行くのか。
さようなら。
私ではない、私以外の何かは、私に憧れるのか。
さようなら。
私だった私。
さようなら。
客席から聞こえてくる、私と私の光。
さようなら。
さようなら。
さようなら。
スポットライトの中に生き、スポットライトと共に生きた私。
水の中に落ちた私。
投げ捨てられた私。
投げ捨てた私。
女性のために生きていくことを誇りに思います。
そう。
きっと、これが皮肉として受け取られてしまっても。
それでも、私は。
ありのままの心で、女性のために生きていくことを誓います。
そして、私は。
女性を十九人ほど殺した。
すべて、真実である。
可愛い唸り声を。 エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます