第5話 興味
「
ガンフェニックスの改造を行い、その後、フルスクラッチのジョイント・パックの完成をさせた。
これがジョイントパック――迅雷創世。最高のプラモだ。
「ついに完成させたのね」
「ふーん。いいじゃない?」
マヤハとメイも肯定的だ。
円筒型のメインエンジンが四つ。本来の機動性を高めるためだけに設計された――第七つ目のジョイントパック。
でも武装が何もないのは寂しいな。
それ専用の武器を考えてみるか。
「でも、ガンフェニックスがいれば問題ないわね」
「そうだね。最高のプラモだし」
メイの言葉に苦笑で返す僕。
「けど、この間みたいにガンフェニックスが使えない状況ができるかもだし」
マヤハは意外と冷静に分析をしている。
僕もこのガンフェニックスが最高だと思っている。
だけど、アマリリスも良いできだと思う。
これからも活躍してくれそうな気がする。
「しかし、Gゼロもまだまだ改良の余地がありそうだけど? 互換性の高い形にしてあるみたいだし」
Gゼロのジョイント・パックは互換性の高い3mm二軸で構成されている。うまくいけば、別のジョイント・パックだって接続できる。
今はサブマシンガン二丁と、ビームサーベル二つを装備させている。
Gゼロにも無限の可能性があると思える。
「あら。それはゲハルテもだけど?」
メイの機体・ゲハルテも背面に3mm軸が一つある。
今はスラスターだけの装備だけど、全身にあるくぼみからしてまだまだ改良の余地はありそうだ。
というか、まだ未完成の状態といえよう。
ゲハルテはまだ
これが完成すればさらなる戦力アップにつながりそうだ。
シンプルな素体だからこそ、いろいろなものを装備できそう。
「そうだね。ゲハルテも、Gゼロもまだまだ可能性に満ちていると思う。僕のガンフェニックスだって追加武装を考えていたところだし」
「はあ? あの完成度でまだ満足していなかったわけ!?」
ミライが驚いたような、怒ったような顔を向けてくる。生真面目なのかもしれない。
でも僕はまだ満足していない。
あいつには可能性を感じている。
「うん。僕のガンフェニックスも負けていないと思うよ。だから改造するんだ」
「そう、なのかしら……」
言いよどむメイ。
どうやら納得はしきれていないみたい。
実は追加武装の案は最初からあったけど、なかなか形にはできずにいた。
それは僕の技術がうまく進歩していなかったからだ。
でも二人のプラモデルに刺激されて、ようやく形になってきた。
今は設計図の段階かもしれないけど、いつかは完成させてみせるよ。
「ふーん。その可能性とやら、見せてもらえるのかしら?」
「ああ。絶対にね。約束する」
自信満々に言う僕。
今度こそ、僕は勝つんだ。
記憶の奥底にある何かが僕を突き動かす。
絶対に勝つという気持ちを持って。
腹の下から湧き上がるこの衝動はなんだろう。
僕は何かを思い出しそうになった。
「そうだ。ペル。作り方を教えてよ~」
「うん。いいよ」
マヤハが作り方分からないとは珍しい。
「マヤハ……魂を売ったのかしら」
メイが何か言っている。
「あ。ここゲート跡が残ったままだよ」
「本当だ。ありがと!」
ゲートを処理するマヤハ。
その横でプラモデルを再調整する。
ガンフェニックスだってまだまだやれるんだ。
でも昨日の戦いで分かった。このままじゃダメだって。
僕はプラモデルを守り切れなかった。
その事実が僕を不安にさせる。
「なに暗い顔をしているのかしら?」
メイは僕の顔を覗き込んで言う。
「ええっと……」
「何か悩み事? 話せる?」
マヤハも心配そうに僕を見てきた。
「大丈夫だよ。それよりもプラモデルは?」
「はは。やっぱりペルはプラモが好きだよね」
マヤハは可愛く笑いながら、プラモデルを作る。
「ん? どうしたの?」
「いやマヤハってそんな顔をしてプラモデルを作るんだなって思って」
「ペルが、プラモ以外に興味を示した……!?」
「坊やちゃんが!?」
なんで二人とも驚くのさ。
訳が分からないよ。
「まったく人をなんだと思っているのさ」
「「プラモデル馬鹿」」
「まあ、間違ってはいないけど」
そう言われて気分がいい。
「褒めていないわよ?」
メイが険しい顔でこちらを睨む。
「ええ……」
僕は複雑な思いでマヤハを見る。
「はは。わたしとしては嬉しいけどね」
エマはクスクスと笑う。
やっぱり複雑な思いだ。
プラーナとは身体の中を流れる魔法因子である。
この魔法因子というのが、プラモデルに含まれるある種のプラスチックに反応し、荷電粒子を生み出す。
荷電粒子により地磁気との斥力を生み出し、滑空や飛翔をする。魔法因子の電磁流体ソケットが反応し、プラモデルを流動的かつ柔軟に動かすことができる。
また荷電粒子によるビームや爆発、実弾を再現することができる。ただこれは再現だけにとどまらず、実際に損壊をさせたり、溶かしたりなど、様々な物理的にダメージを与えられる。
この事実によりプラーナを持つ人々はプラナイドと呼ばれ、戦場に駆り出されていた。
だが、プラーナを利用した非合法なプラモデルバトルも行われるようになった。
プラモデルバトルでは観客が賭けの対象をプラナイドに依存し、賞金を出している。
僕はこの非合法のプラモデルバトルに参加することで稼ぎを得ている。
合法とされるバトルはすべて戦場に送り出されている。
それがいやで逃げ出すプラナイドも多い。
そんな彼らが行き着く先が非合法のプラモデルバトルなのだ。
今までプラモデルを愛してきた人々にとってプラモデルバトルは夢のような話ではある。
だが規制を行おうとする政府軍とのいたちごっこになっている事実もある。
とにもかくにも僕の行っていることはリスクの高い犯罪行為ではある。
ちなみにプラーナはその人の体格や性別、遺伝など、様々な要因によって量や質が異なる。これは努力でどうにかなるものではなく、天性の才で決まる。
またプラーナは睡眠によって回復する。
プラーナの量や質が高ければ高いほど、プラモデルの持続力や動きは良くなると言われている。
まあ、あくまでも一般論ではあるのだけど。
とにもかくにも、プラーナを持っていない人からすれば、プラモデルがある環境下では危険であるため、規制がかかっているのだ。
管理しきれない政府軍の痛いところでもあるのだろうけど。
プラーナをコントロールすることができなくなる場合もあるので、政府軍で一括管理したいのだろうけど。
でも、縛られるのも、戦場に身を投じるのもいやだ。
何が独立紛争だ。勝手にやっていろ。
僕は僕の意思でプラモデルを愛する。
それでいいじゃないか。
あとこっちの世界ではプラモデルの素材であるプラスチックが大量にとれる。
これもプラモ戦争の引き金の要因でもある。
だって資源が見つかったのだから。
地球の化石燃料が枯渇し始めた矢先に空間の
ご存じの通り、プラスチックは石油由来の成分である。だが、こちらの世界には天然自然のものとして採取される。
プラスチックはプラモデル以外にも様々な用途がある。
食器や車の部品、電子回路に至るまで使われている。
この未曾有のプラスチック大飢饉にこっちの世界は嬉しい発見だったのかもしれない。
こっちの世界に誰も住んでいなければ、の話だが。
だが、そこに別の人類がいた。
それがプラナイドなのだ。
地球とプラジネット。
両星間では以前として緊張状態が続いている。
戦端が開かれてから、プラスチックの消費量は増え続けている。
僕はもう、こんな現実にうんざりだ。
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