壊した虚像
つばめいろ
壊した虚像
私たちは常に監視されている。付き合ってからだ。いや、前々からだったが気づかなかっただけか。どこにいようが監視されている。そして、あるカタログ通りの「幸せ」な生活を送らされている。それ以外のことはできない。もしすれば、周りに知らしめられ、非難を受ける。それは死ぬも同然だ。果たして、私たちは周りに何か許されない悪いことをしただろうか?
こんな生活を続けてどのくらい経っただろうか。未だ慣れない。慣れてしまったらだめな気もする。ああ、やりたいこともできない生活の息苦しさがわかるだろうか! 高校生の健全な、幸せなカップル像に従ってしか生活できないのだ。死にたくもなる。きっと君も同じだろう。いつも苦しそうな顔をしている。付き合う前はそんな顔なんてしたことなかったのに。
周りの人を少し殺しても何も変わらないだろう。無意味なことはしたくない。だったら二人で逃げてやる。誰にも見られない、追いつけないところまで逃げ切ってやる。君も頷いてくれた。だから、こんな窮屈な生活から二人で手を繋いで逃げ出した。そのまま、私達は高い建物の屋上から走って飛び降りる。君は笑っている。こんな顔を見るのは久々だ。身体に幸せが満ちていくのを感じる。
「追いつけるもんか、ばーか」
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