第13話 魔王殺しの勇者様 亜夢side

 勇者様と二度目の面会となった。今日はプライベートルームで話す事になった。


「姫様、今日も憂鬱そうですね」

「心配してくれてありがとう、私は元気よ」

「こんな婚約者は嫌ですか?」


 困ることを聞いてくるな。本当になにを言えばいいのだ?


 私が下を向いていると。


「ここからは、政治の話です。私は勇者として魔王を倒しました。しかし、この国にとって魔王以上の脅威が私になったのです。そこで王族と政略結婚をして城に幽閉するのが、この結婚の目的です」


 !?


「そんな事を私に言っていいの?」

「えぇ、私はこのまま勇者の身分を隠して旅に出ようと思います」

「勇者様!?」

「姫様には辛い思いをさせてしまいました。お詫びに異世界に転生する魔術をかけても良いですか?」

「異世界!?志治の居る世界ですか?」

「そうです。姫様の強い愛が二人を再び導くのです」


 ……。


 一瞬の沈黙の後、私は重い口を開く。


「そんな事をしたら、勇者様は罪人になってしまいます」

「ふ、もうすでに魔王殺しの罪人と変わりません」


 皮肉を言う勇者様に私は決意の表情に変わる。


「わかりました、異世界への転生をお願いします」

「素直でよろしい、ホント、姫様は魅力的で困ります」

「ありがとう、その言葉は勇者様らしいわ」

「では、魔術をかけます。ただし、その愛の記憶までは保証しません。でも、その愛する人が姫様の手紙を受け取っていれば、大丈夫、きっと幸せになります」


 その言葉の後、勇者様は剣を抜刀すると空間を切り裂く。私はその切れた空間の隙間に吸い込まれていく。


 それは素敵な笑顔の勇者様が印象的な出来事であった。

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