第12話

「おはよう、るな」




後ろを振り返らずとも誰かなんてわかる。



あたしにこんなことをするのは八千流とるな、この二人だけだ。




「んふふ」

   



嬉しそうに笑って隣に来たのは、梶本るな。



高校に入ってから仲良くなった友達だ。



前髪に赤メッシュの入った金髪ショートカット。


ツリ目で八重歯が特徴の、笑顔の可愛い女のコ。




だけど……



「ねぇねぇ、一華」



「ん?」



「今日、新しく出来たクラブに行かない?」




ニッコリ笑って出てきた言葉はそんな言葉。



彼女は両親が不仲で、どちらも彼女に興味がないらしく……。



ならば悪い子になって、困らせてやる!!と悪いことはなんでもやりたがる少々困ったちゃんだった…。





「行かないよ」



「えー、なんでー?ドリンク半額なんだよー」



「行かない」



「一華ーっ行こうよぉ!ねぇー、一華ぁー」




手を取られ、ブンブン振り回される。


子供か。




「行こぉ」



「るなちゃん……?」



「うひぃっ!?」




八千流が戻ってきていた。



そして……るなの顔面を掴み、アイアン・クローをかける。




「いだだだだだだっっ、八千流っ痛いっ!」



「おはよう、るなちゃん。うちの叔母を変なことに誘わないでって、何ッッ回同じことを言わすかな?」




八千流はニッコリ笑ってるんだけど、瞳は笑ってないし、手にはドンドン力が込められていく。




「叔母さんって、言うな」




同い年だっての。




「いだだだっ!八千……八千流も行こ……」



「行かない」




キッパリと断った八千流は、るなの顔から手を離した。




「なぁーんでー、行こうよー」




懲りないな……。



そして何かとあたし達を巻き込もうとする困ったちゃんでもあった。




「行ったらダメよ。最近、あそこら辺って治安悪いみたいだから」




八千流が言う。




「痛い目みるよ」




そしてあたしも。




「む”ーーっ」




コレは……行くな。




「忠告はしたからな」



「……」




返事をしないるなに、八千流と二人ヤレヤレと肩を竦めた。




「で?アンタはジャージ借りれたの?」



「盗ってきた!!」




八千流にどうなったか聞くと、ジャージが入ってる袋を自慢気に掲げる八千流。



泥棒か。



てか、それに気付かないハイドって……




「八ー千ー流ー」



「……」




あ、気付いた。



八千流が脱兎のごとく逃げ出す。



それを全力で追うハイド。



アホ双子め……。




「ねぇねぇー」





朝からこの騒がしさ、もう疲れた。



帰っていいかな?

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