第36話

「偶然じゃねぇか?」




あたしの頭に肘を置いたまま、碇さんが言う。



ウンウンと頷くあたしなのですが……長谷川さんの表情は晴れません。




「そう……なら良いが」



「でもなんでシンが狙われるの?」




柚乃ちゃんが小首を傾げます。



ああ、可愛い。 




「包丁の人は、“ココロを寄越せ”と言っていましたが」



「“ココロ”??えっ!?その包丁男、シンのことが好きなの!?」



「違います!!」



「「違う違う」」




あたし達は同時に首を横に振る。




「??」




あの、あたしのことなのに何故二人も否定を……??


しかもそんなドヤ顔で。


特に碇さん。




「よくわかんないけど……。関係あるかどうかはわかんないけどそういえばさっき、シン“星”を出したよね」



「そうですね」




“星”出しました。


喜田川さんが死ぬかもという恐怖と驚きで……。



それを聞いた長谷川さんの表情が厳しくなりました。




「それを見たってのか、その男が?」




碇さんが長谷川さんを見る。




……え?




「可能性はある。包丁男もコイツの“星”を見て豹変しただろ」



「それは……」




そうなのですが……


でもあたしの“星”が“ココロ”というのはどういう……




「シンが狙われてるってこと?」



「まだハッキリとは言えないが……」



「「「……」」」




周囲が入学の喜びにわく中、あたし達の周りには重い沈黙が流れます。



長谷川さんの言ってることが正しいのであれば、あたしはどうしたらいいのでしょう?



ここに居る、新入生の皆さんにその家族の皆さんを巻き込むわけにはいきません。



とりあえず喜田川さんと話しを



















「なぁーーに深刻な顔してんだよっ!!」



「え……?」




碇さん??

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