第18話 それぞれのジョブ
「これは……、【語り部】ですね。魔法職系の中で、一番下の」
メルファスは、カウンターに詰め寄った。
「ええっ。そんな訳ないっ。わたしなら、きっともっとレアな職種に決まってるっ」
龍俊はメルファスの肩をたたいた。
「メルたん……。諦めるっす。メルたんはパンツで拙者をいつも癒してくれてるから大丈夫っす。それに、語り部は、滅多に出ないレアジョブらしいっすよ。ただのおしゃべりする人っすからね。プププ」
受付嬢も、あたふたとしている。
「そ、そうですよ。わたしも、実物を見るのは初めてです。語り部が発現した方は、大体すぐに冒険者やめちゃいますし。超貴重種!! レアですよ。レアっ!!」
メルファスはむくれた。
「そんなレアさ、なんか全然嬉しくないんですけれど〜?」
受付嬢は、彩葉(旧名:シスたん)の方を見た。
「……こほん。次の方は何かな〜?」
彩葉が手をかざすと、水晶が激しくひかった。
受付嬢は目を見開き口に手をあてた。
「これは、上級職の【ステルス•ハウラー】ですよっ!! すごい。わたし、初めてみました」
龍俊は首を傾げた。
「それって、どんなジョブっすか?」
受付嬢は興奮気味に説明してくれた。
「アサシンとウィザードの融合職です。敵に背後から近づいて、ナイフを媒介にして相手の急所に直接に魔法を流し込むんです。相手に物理耐性があっても魔法耐性があっても有効なんですよ!!」
「ワタシはそんなにすごいのか? エッヘン。龍俊、ほめろ」
彩葉は、腰に手を当てて胸を張った。
龍俊は笑顔になると、彩葉の周囲をクルクルとまわりながら称賛した。
「彩葉たんっ。すごいっすー!! どっかのへっぽこ女神とは大違いっすー!!」
「龍俊に褒められるの……わるくない」
龍俊に頭を撫でられ、彩葉は嬉しそうだ。
メルファスはむくれた。
(なんなのあいつ。彩葉にばっかり優しいんだけど。このロリコンっ)
そして、ジョブ判定は龍俊の番になった。
龍俊が手をかざすと、水晶は無反応だった。
すると、周りにいた冒険者たちが騒然とした。
「もしかして、奇跡の0じゃない?」
「いや、まさか。でも……。でも、ステルス•ハウラーがいるパーティーなら、あり得るんじゃないか?」
(なんだかわからないけれど、すごいの引いたっぽいっす。これでしょぼいのはメルたんだけっす)
龍俊は、メルファスをいじれることが心底嬉しかった。
「奇跡の0って何っすか?」
龍俊が質問していると、騒ぎを聞きつけて奥からでてきた大男が説明してくれた。
「申し遅れた。ワシはガウス。ここのギルドマスターだ。奇跡の0とは、全属性の魔力が高次元で拮抗することにより、水晶玉が0を示すことをいう。滅多に出ない英雄級のクラスだ。龍俊とやらは、どれどれ……」
ガウスは龍俊の額に手をかざした。
「うーむ。これは珍妙な……。おまえのジョブは」
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