第27話 首都へ to the city
中心都市グランテラ近郊 ウボナラ村
穀倉地帯に木造の建物が立ち並んでいる。
俺達はクリスティアの背中から下りる。
「つっかれたな。」
ヴィヴはずっとクリスティアの頭の方にいたからな、風をずっと受け続けてたんだろう。
「エルは楽しめた?」
クリスティアが人型に姿を変化させ、村に入る準備をする。
「えぇ。流石は龍の飛行速度ね。
楽しかったわ。」
「あまりこの小娘を調子に乗らせるな。」
「ふーん ヴェルグ
ご褒美として高級パンをおごってくれてもいいのよ。」
「バカなのか、ここいらの食料は全部帝国軍が買い占めてるさ。」
そんな軽口を叩きながら村に入っていく。
「――パンが
パンがなーーーーーい!!!!」
クリスティアが叫んだ通り
店の通りにあるはずのパン、パスタなどの主食の一切が消え失せていた。
「おー もしかして旅人さんかい?
今はタイミングが悪かったね。昨日、帝国軍の人たちが全部買って行ったよ。」
村の入口近くで集まっていた老齢の男性が話しかける。
「そんなぁ。」
「そういえばこの名前の人物を知りませんか?」
俺はコルプガイストの街長から渡された手紙の名前を見せる。
街長の字は達筆すぎて読めないからな。
「――カリス・ガイスター
あぁ、どこじゃったかの。
あっちじゃったような。こっちじゃったような。
近くだったはず。」
老齢の男は辺りを見回す。
「カリス魔具店
あれじゃ。」
老齢の男が指刺した方に店が建っていた。
「確かに」
「町長は元気じゃといいがの。」
カリス魔具店
「おー らっしゃい。
ずいぶんと大人数だね。何が入用かな?」
「エルミシアの街長から紹介していただきました。」
「――そうか、君たちが。
早報である程度は聞いてるよ。」
「エルミシアと繋がってたのね。」
「――そちらのお姉さまは詳しいようで。
頑張って引いたんだよ。首都との連絡網がほしかったからね。」
「?」
「早報っていうのは魔具<ガイスト>で信号を増幅する糸電話みたいなものよ。
文字で伝える形式もあるけど。」
「帝国だと全都市を結ぶネットワークがあるよ。」
「へー お嬢さんは帝国出身なのかい。
まぁそれは後で聞くとして魔具<ガイスト>のメンテナンスと宿なら任せてくれ。
離れを使ってもらって構わない。」
「助かります。」
「あら あんたお客様?」
2階から恰幅のいい女性が階段を降りてくる。
「街長の紹介だってさ。グランテラに行く前に色々準備する必要があるらしくて。」
「街長には街を出る時まで世話になったからね。
あんた達、困ったことがあったら何でもいいな。」
「お言葉に甘えて。」
同日 フォルグランディア セリアル城
「潮時だな。」
白髪の大男と赤いドレスの女が城の頂上でグラスを掲げている。
「連邦軍が弱すぎね。船も2つ貸したのに。」
「ふん フォルグランディアで門を開くまでの時間潰しには良かっただろう。
門が開けば世界は我が手に」
「でも帰れないんでしょ。」
「時間、空間があらゆる形でゆがんで繋がっている。
元の世界に戻れたとして太陽系に出る保証もなければ、ましてや西暦のある時代に戻れることはほぼないだろうな。」
「――あっそ。
まぁこっちを美しい世界にすればいいだけ。」
赤いドレスの女が指をパチッと鳴らす。
すると女の影から戦艦が現れる。
「ここの兵を蹴散らしてフォルグランディアに行くとしましょう。
帝国のハエが目ざわりすぎるし。」
「大事な開門の前だ、ほどほどにしておけ。」
「ふん、さっさと行きなさい。メリケン」
「――転生者がいたら連れてこい。」
「まさか、あんたしくじったの?」
「さぁな。」
ドッと白髪の大男が城から飛び降りる。
空中に魔術紋が展開され、
魔術紋を大男が通り過ぎた瞬間、大男の姿が消えた。
「ちっ、便利なエスキート。」
翌日 中心都市グランテラ近郊 ウボナラ村
「大変だ!!!」
「どうしたんですか?」
俺達が泊まっている離れに、カリスさんが急いで入ってきた。
「帝国軍が壊滅的な被害を受けて、国境付近に撤退した。
近いうちに国際的な戦争になるぞ。」
「サトー、どうする?
あなただけなら国外に逃がすことも出来ると思うわ。
それこそエヴァネスさんのとことか。」
「うん うちに来るといいよー!
サトーはいいやつだし。」
「いや
俺は転生者だから
――同郷の者の始末は俺が付けるのが筋だろう。」
「それもそっか。
分かった。
無理をしてでも帝国には入れないようにしてほしいな。」
「はは、約束するよ。」
数刻後
「――あたしとこいつは帝国に戻る。
お前等も転生者を倒すために無茶はしてほしいが、死ぬなよ。」
「じゃあねー。」
「あぁ ありがとう」
ヴェルグとエヴァネスが去っていくのを見届け、
俺達は中心都市 グランテラへと入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます