光の旅路
天堂 サーモン
プロローグ
宇宙裁判所の法廷は、緊張感に満ちていた。壁一面のガラス越しに降り注ぐ星々の光の中、衣擦れの音も聞こえそうな静寂が空間を支配していた。そんな中、傍聴人たちは息を詰めながら中央の被告人席に立つ人物の動向を伺っていた。
被告人席に立っていたのは思わず目を惹くような存在感を放つ女性だった。彼女の髪は長く美しいプラチナブロンドで、どこか高貴な雰囲気を漂わせている。しかし、その端正な口元には、大きな火傷の跡が刻まれていた。半ば灰色に変色したその傷跡は、彼女の苛烈な人生が物語っていた。
その女性──アリスは、被告人用のグレーの法廷服を纏い、冷たい床の上に立っていた。そのまっすぐ伸びた背筋からは、どこか潔さすら感じられる。
裁判官たちが審議を終え、各々の席につく。中央に座った主裁判官がハンマーを叩き、法廷内に乾いた音が響き渡る。
「被告人アリス・リヴィエール」
裁判官の声が厳かに響く。
「あなたは銀河統合議会に反逆し、その命令に背いて独断で第7惑星タルミスにおける軍事作戦を実行した。この行為により議会の権威を著しく損ない、多大な混乱を引き起こしただけでなく、銀河系の安定を脅かす結果を招いた。この罪状により、第13星系連邦法第72条に基づき、母星帰還刑を言い渡す」
瞬間、法廷の空気がわずかに揺れた。母星帰還刑──それは罪を犯した者を故郷に送り返す、過酷で孤独な罰だった。
しかし、アリスは動じなかった。判決が下された瞬間も、ただ静かに法廷の中央に掲げられた銀河統合議会のシンボルを睨み続けていた。
裁判官は再びハンマーを振り下ろす。
「これにて閉廷とする」
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