第9話
私と目が合うと、その切れ長の目を細めた。
「よっし、じゃあ行くか」
「え?」
「近くにめっちゃ美味い焼肉屋あんの。今なら多分空いてるし」
ほら、となんだか当たり前のように手を差し出された。
意味を図りかねて黙っていると、
「いや?」
と聞きながら手を繋がれた。
自分より一回り大きな手が、包み込むように自分の手を握ったのを見て、「いや意味わかんない」と無意識に同じ言葉を繰り返してしまった。
名前も知らない 奈瀬セナ @nase_sena
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