第47話

「あ、眞夏」



高すぎない、寝起きの少し掠れた細い声がすんなりと俺を迎え入れた。



「……はよ」



どういう顔をしたらいいのか考えていたが、いつもと変わらない雰囲気に緊張が解けた。短く挨拶を返すと、ただそれだけなのに、蛍はものすごく嬉しそうな顔をして笑った。



「おはよ。早いね」


「おー……」



……なんだか顔をまともに見れなくて洗面所に引っ込む。

今まではただ泊まりに来るだけだったが、一緒に住むとなると勝手が違う気がする。


というか、いいのだろうか。

仮にも義兄弟とは言え、男女がひとつ屋根の下で、しかもワンルームって問題しかない気がする。現に今もなんか持つ気がしねえ。



顔を洗ってからまた台所に戻ると、髪をゆるく結んでエプロン姿の後ろ姿が見えた。


白くてほそいうなじが目に入って、思わず目を逸らす。



まじでこの人って何の警戒心もない。



弟だからという理由で警戒してないのか、中学生だからなめられてるのか。




「眞夏どーした、寝惚けてる?」



気配に気づいたのか、蛍が降り返っておーいと手を振る。


化粧なんかしてないはずなのに、なめらかな肌は触ったらとけそうなくらい白い。キャミソールに半そでのパーカーを羽織った蛍の鎖骨が見えて、思わず反射的に舌打ちした。

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