③
第11話
▽
「何見てるの?」
ざわつく校内のラウンジスペースでひとり、図書館から借りた本を読んでいると頭上から声をかけられた。
「さっちゃんか、びっくりした」
「『簡単!10分で作れる時短レシピ』」
「あはは」
題名を読み上げられて恥ずかしくなって笑う。声をかけてきたのは、編入生の五月(サツキ)だった。既に社会人なのだが、取りたい資格があるという理由で編入してきた男の人だ。綺麗な金髪でサイドがきれいに編み込まれている姿は一見すると不良のお兄さんに見えなくもないが、実は女の子になりたい願望を持つ不思議な人だ。本人曰く、オネエではないらしい。
「ああリップ剥げてる!」
「あ、ごめんポーチ今もってなくて」
「塗ってやる!サンプルでいい?」
「え、あはは、いいの?」
「はいこっち向いて―」
ラウンジでイケメンに唇を触られていると、周りが少しざわざわする。さっちゃん他の人にお化粧好きなこととかワンピース好きなこととか話してないからなあ。下手したら恋人同士に見えるんだろうな。
「さっちゃん、誤解されてる気がする」
「いいんだよ。虫よけ」
俺どっちかっつーと男のが好きだし。というさっちゃんは、私の唇に朱色の口紅を乗せていく。
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