第10話 ネットカフェ事件
佐々木の状態が悪い。
あまりにも急速に遠藤平吉を育てすぎたせいか、人格の入れ替りが激しく、それ故に基本人格の佐々木が疲労している。
それは佐々木からの連絡を受けて分かった事だった。
佐々木は、史郎としての自分と遠藤平吉としての自分との境界が曖昧になってきていることを話す。そこに岡田や興奮状態の史郎が出てくるので、基本の史郎の意識が飲み込まれてしまいそうだと嘆いていた。
これは計画そのものを破綻しかねない。
一度、基本の史郎の薬物療法を優先し、急速が必要と判断した俺は、史郎の回復を待った。
2年後。
私は相変わらず交番勤務。定年を迎える歳となった。
計画を実行するにはもう1年もない。佐々木はまだかと焦る俺に、佐々木から連絡が入った。
いけます。やりましょう。
若干無理をしてでも私の要求に応えようとする佐々木は、遠藤平吉を抑えられてはいない様子だった。
大丈夫なのか?お前ありきの作戦だぞ。
それは、俺にとっても同じです。あなたなしではなし得ない。ただ、史郎としてあなたに連絡をするのはこれが最後になるかもしれません。
どういう事だ?
遠藤平吉の意識が強すぎて、それを抑え込むのに史郎の意識を持っていかれます。あなたの中の遠藤平吉も意識下に入ってくると、史郎としての意識はほぼ無くなります。
それでは、私の遠藤平吉を意識下におくのを止めたらどうだ?私からは既に計画の全容は伝えてある。あの言葉でスイッチが入るようにしてさえおけば、あとは俺が何とかする。
それでは今から半年の間に計画を実行します。その後の事はあなたにお任せします。スイッチの言葉だけなら、史郎の意識を何とか残したまま犯行は可能でしょう。
うむ。それでは私もその腹積もりでいる事にする。
無理はするなよと言いたいところだったが、もし出来なければ、計画の全容を知る史郎を私が殺らなければならない。一(にのまえ)と共に2人も同時期に殺るのは危険でしかない。無理をしてでもやって貰わなければならない。
それでは。
その4ヶ月後、史郎は見事に計画を実行した。一(にのまえ)を殺ったのだ。
私は山下を挟み捜査本部の中枢の情報を得ながら家路写楽として事件を解決に導いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます