第3話 真の入社試験

俺は何故か盾の部屋に呼ばれた。

椅子に腰掛けて盾考案の印刷してもらった短編を読む。

1万文字の短編。


それに目を通してみる。

俺は一応、現文のみだが成績は優秀だ。

自慢じゃないが毎回、100点満点ばかり取っている。

だからこういう小説は...ってか...面白いなこれ。


「盾」

「...は、はい」

「...これは小説大賞とか応募しないのか?」

「何でですか?」

「いや何でって。このままにしておくの勿体無い」

「...でも...私は...」

「公開しよう。これ。...データあるのか?...俺が趣味で登録したカクヨムって所に登録して観てもらおう」

「...でも自信は無いです...から」

「いや。それは世の中が判定する事だ。少なくとも俺は面白いと思っている。...寧ろ続編も書いてほしいぐらい。ミステリーなんだな?」


ミステリー恋愛。

だけどこれ面白い。

仕掛けとか全部...工夫されている。

個性もはっきりしている。

そして...キャラクターが生きている。

このままでは勿体無い。


「...原石は磨けば宝石になる」

「...え?」

「お前は外の世界を知らないのかもしれない。だけど...これは原石だ。...あくまで磨かないと勿体無い」

「...ですが...」

「良いから。一か八かでも良いじゃないか。...観てもらおう」


そして俺は盾に指示を出す。

それからカクヨムに登録してから...公開する。

と同時に予想通りだったが初めてなのにフォロワーが50人超えた。

これは予想通りだな。

算段通りだ。


「これ...どういう意味ですか?」

「ユーザーの50人がお前の小説が面白いって判断したんだ」

「え?!」

「...つまりお前の勝ちって事。...予想は当たったな」

「...そ、そうなんですか...私、自己満足でやっていました」

「俺は外部と繋がる派。だから...良かったんじゃないか」

「...ありがとうございます」


俺は小説の印刷された用紙を置いてから「じゃあ仕事に戻るから」と手を挙げる。

すると「あの」と声がした。

俺は「...?...どうした。盾」と聞く。

盾は「今までの人と違います」と声を発した。


「...今までの人は婚約目当て。容姿目当て、莫大な遺産目当てでした。...貴方はお金欲しく無いんですか?私達が欲しく無いんですか?」

「お前らはあくまで同級生だがお客様だ。...それに確かにお金は欲しいが。...だけどそういうのは働いて対価で得るものだ。...楽して数億円とか受け取るのは性に合わないから」

「...!」

「...それにお前らと婚約というより。...俺はお前らが自由に幸せになってほしい気がする。俺には勿体無い」


そして俺は笑みを浮かべてから箒を手にする。

そろそろ掃除に戻らないと怒られる。

それも...メイド長に。

そう思いながら俺はその部屋を後にした。



「今日のお仕事は終わりです」


メイド長がそう言いながら俺に向く。

俺は「ありがとうございました」と言いながら頭を下げる。

それから清掃道具を直してから着替えて表に出る。

更衣室から出るとそこに何故か盾が居た。

何をしている。


「...?...どうしたんだ。盾」

「あの。...また作って下さいね。...あのサンドイッチ」

「...ああ...良いぞ?...それだけを言いに来たのか?」

「あ、違います。...実はカクヨムの小説フォロワーが300人超えて...」

「ああ。良いじゃないか。...その調子で500人突破しようぜ」

「...そ、それで...」

「?...何だ?」

「...もし1週間、私達が認めないならどうするんですか?」


そう聞いてくる。

俺は首を傾げてから「まあそうなったら他のアルバイトだな」と笑みを浮かべる。

すると盾は「...そ、そうですか」と言う。

何か戸惑っている。


「...私は...貴方は良い人だと思います」

「...そうか?俺はクソガキだよ。単なる」

「しかし貴方は他の人と違う」

「...いや。クソガキだ。未熟な半端者だよ」

「...」


俺はそう言いながら「じゃあ帰るから」と言いながらニコッとする。

それから鞄を持ってから屋敷を後にしようとした。

すると「私...貴方なら良いと思います」と声がした。


「へ?何が?」

「こ、ここに...勤めてもらっても良いと思います」

「...いや待て...早いわ。...1日しかまだ経ってない」

「わ、私は...あのサンドイッチがまた食べたいです」

「...それはいつでも俺が作ってやるから。まだ判断が早い」

「...」


盾は悲しげに言い淀む。

俺はそんな盾の頭に手を触れる。

それから柔和になってから歩き出す。

すると。


「...娘が君を認めた様だな」


と声がした。

俺は「!?」と思いながら屋敷のドアの所を見る。

そこに帝さんが立っていた。

帝さんは「まさに盾の言う通り。君は...他の人と違う。遺産も目当てじゃない。娘目当てでもない。...失礼ながら君は一体何を求めているんだね」と聞いてくる。

その言葉に俺は「...俺は労働の対価がただ得たいだけです。職場と仲良くして...」と口角を上げる。


「...気持ちよく働いて...気持ちよく年取って、気持ち良く死にたい。...そう思っているだけです」

「...ははは。まさに理由が天晴れだ。...君なら正式にここに雇って勤めてもらっても良さそうだ。そうだろう?...剣」


その言葉に奥から剣がやって来る。

コイツもしかして盗み聞きしていたのか?!

そう思いながら驚きながら剣を見る。

剣は赤面しながら「...そうね。彼なら良いと思う」と答えた。


「...いやいや。まさか俺の性格をずっとテストしていたんですか?」

「寧ろこっちが真の試験だよ。...ただ1週間、耐えてもらい気に入ってもらえれば良いってもんじゃない。何なら今日の1日。いや寧ろ1時間もそうだがそれで君を見極めた上で切り捨てる予定だったからな。まあそれは無いと思ったがね」


剣と盾は俺を見る。

そして俺はその言葉に「...」となりながらも。

「分かりました」と頭を下げる。

それから「宜しくお願いします!」と言う。


そうしてから正式に俺はアルバイトがこの場所に決まった。

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