居場所を求めて…

asuga

私の居場所はどこ?

 季節はもう冬、友達もみんな「最近寒くなったね」なんて話してる。でも私は、まだ夏に取り残されたままだった。


 自分の周りはみんなまだ夏気分、それでもかつての友達は冬を楽しんでいる。海風に吹かれた異国の地で、私はかつての友達と会話をして少しセンチな気分になる。


 友達と一緒だった頃は世界が広くて、自転車さえあればどこまでも行けるんじゃないかと本気で思ってた。

 でも、私は此処に来てから碌に家から出ていない。外は自分とは違う宇宙人がたくさん居て、自分の言葉なんて伝わらずただその世界に恐怖した。

 

 そんな宇宙人の国で、私は今日もあの場所へ行く。いや、正確には動物になる。みんな私が来ると、見世物小屋の動物のように少しだけ距離をとりこちらを見る。


 私は知らんぷりして退屈そうに頬杖をついて、何とか楽しい妄想に耽る。


 周りが言ってることなんてわからないし、こんなところで動物で居続けるなんて正直、それを感じていたくなかった。


 「ーーーーーーーーーー」


 まただ・・・


 私はその宇宙人に話しかけられる。でも、私はなんて返せばいいのかわからなくって黙り込んで下を向いた。その宇宙人も、私の為を思って話しかけてくれたんだろう、でも私はそんなもの欲しくなんてなかった。


 私が本当に求めていたものは、かつての自分の居場所。


 友達と「あのアイドルは顔がいい」とか、「最近肌が荒れてきた」とかなんてことのない会話ができた私の居場所に帰ることをただ望んでいた。


 それから三年ほど時が流れただろうか?自分でも時間の進みが恐ろしく感じる。それはきっと、あっという間に過ぎてった時間を後悔しているからだろう。


 分かっている。


 私は思い違いを…いや、私は自分の心に頭に、すべてに嘘を吐いていた。


 宇宙人なんていない、それはきっとどこかの誰かさん。みんな私を見ているわけなんてない、それは自意識過剰だと。


 そんな自分の誤った三年を悔やむような、それでいてどこか腑に落ちたような、そんな自分でもよくわからない心情になってしまった。


 久しぶりに私が残した、私だけが憶えているかつての目印を見に行った。目印はうっすらとしか見えず、それだけ時が経ったのだといわれている気がして再び複雑な心情になった。


 でも、これだけは分かる。


 かつての私の居場所はもう無くなっている。だって、かつてがもう無いのだから。


 すこし寂しく感じたけれど、それはきっと当たり前のことで、過去に執着することが時間の無駄なんて言わないが、きっと覚えていない人の方が多い。


 そこで改めて町を見ると、自分が昔思っていたよりもずっと狭かった。私は大きくなった。それはきっと、大人と呼ばれるくらいには大きくなった。


 風が私の髪をコームでなでるように過ぎて行く、この風もあの頃にはなかったように思う。


 私は色々な意味で大人になったのだと、そう思う。


 寂しく、そしてすがすがしく、私は帰ることに決めた。再び夏に取り残されに


 私に居場所はもうそこしか残っていない、だって今もそこが居場所なのだから。でも今は、その居場所が少しだけ恋しくなった。


 帰ろう、私の居場所に。


 私はかつてを取り残し、そして歩む。私の居場所は私が新しく生まれるまで、そこが私の居場所なんだと…

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居場所を求めて… asuga @tarandoran2114

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