仕事に行きたくない

@kacyu

最悪の日常

2025年1月5日僕の心は限界だった。


なぜかって?

僕はとにかく仕事に行きたくないのである。


奇跡の9連休と呼ばれた長期連休も遂に最終日を迎えた。

それが何を意味するのか、

明日から仕事のある日常がまた始まってしまうということだ。


そう聞くと、どんなに過酷な仕事をしているのかと思われるかもしれないが

別にそういうわけではない。


僕が今している仕事は、2024年8月1日から始めたもので世間からはエンジニアと呼ばれるような仕事である。


そう  パソコンの目の前に座りプログラミングをしたりそのための設計書を書いたりする仕事である。


一応、会社はグループ会社も合わせれば数千人規模の従業員がいる大きな会社で、そのせいかコンプライアンスに厳しく残業することなく定時に帰れるため環境としてはむしろ良い方かもしれない。

週に1回はリモートのため、実質週に4回の出社である。


なぜ、そこまで仕事に行きたくないのか疑問に思われるだろう。


ただ、とにかく仕事に行きたくないのである。


理由を挙げればきりがない気もするが、いくつか例を挙げると


まずは外に出ることが嫌いだ。

休日は専らインドア派で布団でゴロゴロしてるのが好きな性格だ。


また、人と接することがとても苦手で仕事で人とコミュニケーションを取る必要があると毎回強いストレスを感じる。


通勤は自転車と電車を使っているが、電車は1時間20分ほど乗っており朝の満員電車は人が苦手な僕にとっては地獄そのもので、よくお腹が痛くなることがある。


満員電車に乗っていると四角い箱にぎゅうぎゅうに詰め込まれた僕たち会社員は、

もしかしたら世界で一番かわいそうな存在なんじゃないかと思う。


そんな悲しい現実から目を背けるようにいつも僕は目を閉じて電車の中をやり過ごす。


仕事が終わり、家まで自転車を漕いでるときによく思うことがある。


「今、車に轢かれ大怪我をして意識があったとしても、これで死ねるラッキーって思って救急車に電話しないかもな」


とにもかくにも、それほど仕事のある日常というのは僕にとってはストレスだらけの日々で毎日仕事に行っているだけでとてもすごいことなのだ。


しかし、そうは言っても明日には仕事が来てしまう。

こういう時、僕は現実逃避のためにすることがある。


「夕飯も食べたし、お風呂に入る前に筋トレでもするか」


ん?  


なぜ筋トレ?


そう思われた方がたくさんいることだろう。

筋トレをしていると、筋トレ自体がきついので仕事に行きたくないという負の感情を相対的に薄めることができるのだ。


毎回、筋トレをした後はさっきまでの重かった心が少し軽くなったような気がする。


ちなみに8月1日に今の仕事を始めてから筋トレをするようになったのだが、仕事のある平日に筋トレを休んだことは一度もない。



そんなこんなで筋トレも終わり、お風呂にも入り終えたので、憂鬱な気持ちを抱えながら暖かい布団に包まって寝ることにした。


次の日の朝、目覚めると日時は2025年1月6日午前7時10分だった。


連休中は常に昼頃に起きる生活を送っていたため、冬の朝の乾燥した空気と凍えるような寒さが僕の心の中の仕事に行きたくない気持ちを膨らませた。


それでも仕事にはいかなければいけないのだ。


僕は自分の心を押し潰して家を出た。


いつものように電車に乗り、周囲のサラリーマンの様子を見ると、もしかしたらここまで仕事に行きたくないという気持ちを持っている人間は自分だけなんじゃないかと思った。


そもそもこの世界が僕みたいな人間ばかりだとしたら、電車の中がこんなにぎゅうぎゅうに人であふれてるのはおかしいはずだ。


「僕はなんて生きずらい人間なんだ」


「きっととても変わった人間なんだろう」


そんな気持ちを抱えながら会社に着き、やるべき仕事を淡々と機械のようにこなしていった。


その日の仕事を終え、パソコンの画面を丁寧に閉じ、椅子の背もたれに深く背中を付けながらスマートフォンのニュース記事に目を向けた。


するとそこには



「退職代行の依頼が昨年比5倍以上で過去最多」



という文字が書かれていた。



僕はなんだか少しだけ誇らしい気持ちになれた。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仕事に行きたくない @kacyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ