第2話「落陽 -1-」
パトロールに向かう前に、学校の荷物を下ろし、専用の身支度をするべく所属先であり家である神社へと足を運ぶ久火と結丸。
「只今帰りました」「ただいまァ〜」
「おう、おかえり」
そう返すのは2人の面倒を見ている神主、御堂 司(みどう つかさ)。短髪で筋骨隆々という言葉の似合う男だ。
しかし、何やらもう一つ気配がある。それを訝しんだ結丸が言葉を発する前に、それを説明せんとばかりに御堂が続ける。
「お前らにお客さんだ、学校の友達だってよ」
しかし久火も結丸も心当たりが無い。なんせ学校では浮きに浮いている。ちなみに隣のクラスの、祓霊官になると豪語する爽やかイケメン田代君は普通にモテている。一体何の差が……。
それはさておき、「お邪魔してます」と発したのは、確かに2人の知っている人物ではあった。
「「あ、新津紀(あらつき)さん(サン)……」」
その人物は2人と同じクラスの、新津紀 輝蘭(きらん)だった。とは言っても、運動部エースで一軍女子グループの中にいて元気ハツラツな、2人とは縁遠い存在だった。しかし、妙にシュンとしてる上、頭にタオルを被っている。何か様子がおかしい。そういえば今日は確か病欠だったのでは……。などと慣れない女子に固まりながら思考を巡らす2人を他所に、御堂は「オッサンが話聞いてんのも悪ぃから頼んだぞ」と去っていった。
「……で、多分何か用だと思うんスけど、一体……なんせ心当たりがないモンでして」
おずおずと尋ねる結丸。それにもまして酷く怯えた様子の輝蘭が口を開く。
「あの……2人って術師だと思うんだけど、それで相談があって……」
「……はい……まあ概ねそうですね……」
「んー……まァそう、そうだな」
「……でね、」
駆け込み寺(寺ではない)だと思われてるらしいことは分かったが一体どんな内容か、と身構える2人。そんなことを気にする余裕もない様子の輝蘭は、一瞬躊躇った後、思い切った様子で、静かにタオルを外す。
「……コレってどうにかなるかな……?」
そういう彼女の頭上に、兎耳のような形で、名月を思わせる色の光の塊が浮かぶ。
それを受けて顔を見合わせる2人。とは言っても、内訳は「す、推理担当は君ですよお願いします」という顔の久火と「分ァったから顔に出すな」という顔の結丸だったのだが。
「ンまあ、ソレの、思い当たる理由はあるし、多分どうにかはなるっスね」
「良かった……!」
輝蘭の安堵の声に結丸が続ける。
「一時的には、ソレを消す術を新津紀サンに掛れば多分収まる」
「「一時的には?」」
「まァ根本的には、新津紀サン自身がソレを制御する必要があるンじゃないかと」
キョトンとする聴衆を脇に結丸は説明を始めた。
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