このエッセイは〝できないこと〟のある方の日々を描きます。
同時に〝それでもやっていく〟という靭やかさを述べているように感じました。
不安障害という、他の方からは見えづらい苦しみを言葉にする。
まずそれは、とても勇気ある行為だと思いました。
そして、本質的には自分の心の中で起きること。誰にも守れないという現実。
自分で自身の心身を守るしかなかった作者の行動の足跡が伝わってきます。
大上段に構えるわけでもありません。
ホラーで安心するというくだりなど、ともすれば矛盾と捉えられる自分の心の動きを言及して苦笑する姿。
その人間らしさが微笑ましいのです。
読む方も自分の恐怖をユーモアを交えて語れる語り口に、書き手の客観視の確かさと芯の強さを感じられることでしょう。
後半で述べられる
〝だからこそ自分には物語がある〟
その転換も素晴らしいです。
現実では行けない場所。
でも物語のなかなら行ける場所の語り。
逃避なのかも知れません。
自己防衛というだけかも知れません、
それでも大人になって〝できない〟が増えたとしても自分には物語がある。
〝読める〟ことと〝書ける〟ことがある。
この言葉が胸を打ちます。
そして、正しいと思いました。
〝ここではない何処かの場所へ連れて行くこと〟
それは物語の本義だからです。
本作は、同じ病を抱える方だけでなく、
生きづらいと感じたことのある方。
〝普通にやらなくては〟と気を張る方。
そんな人たちを弱いと決めつける方。
たぶんすべての人に、寄り添ってくれる。
そんな優しいエッセイです。