輝艦 改

エトーのねこ

第1話:示すも君の大御稜威・前話

 今は無き西暦に直して1943年9月11日。ラバウル島近郊にて国際会議が行われた。戦後の処遇を決めるための国際会議である。先々月の停戦項目を以て戦争自体は枢軸国の勝利で終結したものの、未だ蔓延る悪の連合をどう処断するか、ということをはじめとして、今はメキシコに返還された、当時ニューメキシコ州と仇名されていたある地において行われた宣言の中でもとりわけ強烈なもの、所謂連合国への無条件降伏要求である、が現実味を帯びてきたので検討が行われ始めた。俗に言うラバウル会談である。

 そして、首魁であるルーズベルト、チャーチル、ジュガシヴィッリの処刑内容の吟味をはじめ、翌年の紀元節を開始目標とした占領政策が検討された結果、連合国が軍政下に置かれたのは当初の予定より若干出遅れた1944年3月16日、現在の暦に直して2604年2月4日のことであった。立春の日は疾うに過ぎていたが、旧暦と日付が近かったこともあって、進駐軍は通称「桃太郎部隊」とされ、帝国軍の中でも志願者のみで選ばれたエリート中のエリートであった。

 とはいえ、合衆国全土の占領政策は困難を極め、多くの抵抗が待っていた。戦争こそ発生しなかったものの、今なお歴史の授業で習うことの多い「ライフル協会の乱」である。だが一方で大日本帝国による進駐軍を歓迎していた団体も存在していた。戦国時代に倣って「黒人衆」と称されたアフリカ大陸より当時のヨーロッパ人によって拉致された奴隷の子孫や、先住民族、その他アメリカ合衆国によって「有色人種」と見なされ迫害ないしは虐殺され続けていた諸民族である。

 そして、今なおアメリカ合衆国だった地域は非常に多くの国家によって分割されることとなったが、皮肉なことにそれによって彼等の経済は活性化され、戦後も成長が行われているようだった。とはいえ、北アメリカ全土をすべて合わせても大日本帝国はもちろんのこと、ドイツ第三帝国にも遙か及ばない程度の国力しか存在しなかったが。(あるいは、意図的にそれを仕組んだ、とも陰謀論者はささやいているが、それは定かでは無い。)

 さて、栄光の歴史を記す前に、その栄光の道程を記すべき、という声もあるだろう。次項以降より、いよいよその遙かなる道程を記したいと思う。吾等が先祖は、いかなる忠勇を以て大東亜戦争を勝ち抜いて、シロアリを駆除し得るに至ったのか。

 おおよそ約100年は前の、地球本土で行われた戦争の記録を語ることにしたいと思う……。

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