第50話 □ 現実世界:新たな火種

□ 現実世界:新たな火種




現実世界の人々からすれば、祇那は数日だけ現実世界に存在していないことになっている。


その間は、データワールドに転送されているのだ。


神夜の場合は数時間で帰還できたのだが、祇那に関しては、数日間いなくなっていることになるため、その間研究所の異変に気づくものがいるはずだ。


そう、現実世界では、祇那と薬学は行方不明者として、研究所は厳重な警備が敷かれるだろう。だが、その事実が広まるよりも先に新たな事件が起きる。




    ◇




 ―――祇那賀帰還する前日―――。


 数日海外の研究所に粒子分解研究を見に行っていた新人研究員が海外から帰還。


研究所が黒焦げで、あれ立てた姿を目にした新人研修員はすぐさま警察に通報。


そんな時だ。


「バ―――――――――ン‼」


大規模な爆発が起きた。


爆発発生元は東京にあるWD研究所だ。


「⁉」


 ―――大規模な爆発とともにこれから、未来を切り開いていく若き才能の灯火が一瞬で消滅した―――。


新人研究員の通報により、到着した警官が現場を包囲し、原因を調査し始めた。


「何だ⁉ 大爆発が起きたのか? 通報してきた男性とは連絡が取れなくなりました……」


「爆発に巻き込まれたか……運が悪かったな・・・」


 その後、消防車や救急車が到着。


火を消す作業が始まり、ようやく火を消火した頃には、辺りが明るくなっていた。


 そう、日を消す作業は、夜の時間帯もひたすら消しにかかり、やっと日日が昇る時間帯の頃に消化活動が終了したのだ。


 それだけ大きな火災だったと見て取れる。


「嫌な時代になったもんだ」


 そう言葉を発すると、警官の男がタバコを懐から取り出し、一本取ると口に加えライターを片手に、火をつけようとした。


 それを横で見ていた女の警官が走り口調で男に向けて言葉を発した。


「不謹慎です。タバコはこの現場から離れてから吸ってください」


 男は不満げな子男で、女の顔付近を凝視すると、言葉を返した。


「お前さんは良いのかよ⁉」


「私は、良いんですよ! 飴ちゃんですから」


 女性の口元には、タバコのように加えられた棒付きの飴を口に含み言葉を返していた。


「飴ちゃんも不謹慎じゃないか・・・?」


 そうゆう男と女が会話を続けている間にも、多くの警官や救急担任が黒焦げの現場で、生存者や瓦礫の撤去などの作業を進めていた。


 


    ◇◇◇




 霧咲は、事件のこともあってか、仮想精神医療病院に治療として入院していた。


再び元の生活に戻るリハビリをしていたのだ。


実は、さほど問題ないのだが、医者いわく精神的な影響で、現実世界に馴染めない事例があるらしい。


そういったリスクを少なくするため、一時入院という形で精神治療という名目だが、至って普通に暮らしているだけだ。




    ◇




全国放送で流れているテレビニュース。


「速報のニュースが入ってきました。東京の都内の研究所が何らかの理由で爆発し、少なくても、空いて死者は50人以上とことです。大規模な研究を行っているや《DW研究所》が燃えており、昨晩の朝やっと火を消し止められたそうです。繰り返します……」


そのニュースをたまたま見ていた祇那は、すぐさま、家から飛び出し、研究所に向かった。


そう、この研究所こそ薬学がデータワールド開発として使っていた研究所だ。


現場はすでに警備が厳重に配置され、通れないようになっており、関係者以外は立ち入れることは出来ない体制を整えていた。


テレビでの状態を見る限り、現場に行かないとわからないことだらけだった。


母親と姉の遺体がどうなっているのかを確認するため、自分な足で見に行くことを決めた霧咲。


「これじゃどうなっているかわからないわね・・・大爆発した原因は一体・・・現場に行かないとわからない・・・」


 


病院のテレビで事件を知る霧咲。


仮想精神病院から飛び出し、研究所に向かう。


慌てていた霧咲は、銀の懐中時計を交差点で落としてしまった。


霧咲の大切なものを拾ってくれ女性がいた。


祇那の視線が固まった。


 祇那の目に映るのは、若くなった母親の姿。


そう、霧咲祇那の母親である霧咲紗友の姿だ。


日が眩しそうに太陽を影から見る瞳が祇那の記憶の母と重なる。


 


―――彼ら、彼女らの物語は終りを迎え、再び景色が変わり動き出す―――。




   ◇

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