第41話 □ 青衣亡き後:赤坂散りゆく

□ 青衣亡き後:赤坂散りゆく


 


「青衣の敵は私が打つ‼」


 赤坂が霧咲の場所に向かう時、夜魅が壁となって立ちふさがる。


 金の矢を霧咲に向け放とうと強く弓矢の元を大きく引いているときだった。


 夜魅が口を開く。


「フフッ・・・フッ・・・青衣が一瞬で消滅するとは、面白いわね・・・」


「嘘でしょ……もしかして……あんた……記憶があるの⁉」


「あなたには言っておいても良さそうね。どうせ消滅するのだからね・・・フフッ」


「記憶をなくしたフリをして、何が目的??」


「あなたに教えるほど、お人好しじゃないわよ・・・青衣と同じように消滅させてあげる」


「そんなに簡単にやられるつもりなんかないは!」


 そう言葉にすると、先程の矢の先を夜魅に向け屋を放つ。


 金の矢は、はじめから、超加速して、夜魅の心臓をめがけて飛んでいく。


「始めから、あんたのことは信用していなかったのよ! 先にあなたから消してあげる!」


 そう言うと赤坂は、続けて銀の矢を放つ。


「実戦経験が少ない生まれたての子は、人間もデータでも、使えないわね」


夜魅は背中から、黒い翼を大きく広げ飛び立つと、金の矢と銀の矢を交わした。


夜魅は、黒い翼で進む方向がわからないように複雑な動線で赤坂に接近。


その動きはまるで蝶の様に華麗……。進む方向ははっきりしないような飛び方。


その複雑な飛び方のせいで、赤坂の追尾の機能が使えない。理由は赤坂の目で追える相手に金の矢を追尾させているのである。


つまり、先が読めない相手には無効だということだ。


それを戦いの中で学習した夜魅は見事、赤坂の能力を1つ無効化した。


その後との戦いは夜魅が優先的に事を運び複数回ランダムな方向から、刀で切り刻み、最後に赤坂の頭部を切り刻んだ。


 霧咲同様に、スピードが格段と上がり、矢を軽々交わせるスピードが合った。


「きゃー‼」


「フフフ・・・やっぱり弱すぎるわね。こんなおもちゃ作って面白いのかしら……」


その姿はまさに悪魔のように口渇で、禍々しい瞳を夜闇に浮き上がる。


「青衣くん……私は……私は……」


 赤坂は左目から斜め左を刻まれて青白い粒子が放出しており、その吹き出している粒子を右手で抑え込んでいた。


 そのボロボロの赤坂は左手になにか持っている。


 その左手にあるものと青衣のちって言った粒子に触れさせていた。


 あまりにも無意味に思えるその姿を哀れんだのか夜魅も霧咲も見ている。


 後少しで消滅する者として静かにその最後の別れの時間を与えているのだろう。


 だが、その時の赤坂の目は薬学の狂ったような表示に何処か似ている。


「青衣くん……私と一緒に戦いましょう……ね」


その時だった。


視界が一瞬見えなくなる。


赤坂が持っているなにかが、光が放たれ目の前が見えなくなる。


フラッシュアウトだ。


その視界が目に馴染むまで、数秒……。


なにか赤いラインが夜魅の視界に入ってきた。


とっさに赤いラインを避ける夜魅。


気づくと夜魅はバランスを崩して、落下していた。


なんと銀の矢でもなく金の矢でもなく、赤の矢が夜魅の右翼を貫いていた。


一瞬の出来事だった。


「⁉」


「どういうことかしら……あなた……確実に……」


 夜魅は、左翼をだけで飛ぶことができず、くるくると落下しながら赤い矢が飛んできた方向を確認した。


 夜魅の目に写ったのは半分赤い髪と半分白い紙になった赤坂の姿……。


 これは、本当に先程の赤坂なのかと疑問に思うくらい髪色もそうだが雰囲気が変わっていた。


 そう、青衣のような冷静さを感じるのだ。


「……まさか……」


 霧咲が静かに呟く。


「気づいたわね……そうよ……今の私は青衣を吸収したのよ……」


「まさかそんな事ができるとは……」


「こんな自体が起きた時私と青衣くんが一つになれるようにこの人工シナプスの欠片を薬学様からもらっていたのよ」


 落下している夜魅は苦笑いをして言葉を放つ。


「ホント……とてつもない執念ね……フフッ……」


 あの夜魅が苦笑いするほどだ。


 薬学の次にこの世界で頭がおかしいのは赤坂かもしれない。


それを感じさせたのは今の赤坂の外見。


先程まで、青い粒子をドバドバ出してた片目が綺麗に治っており、青衣の瞳になっており髪色も真っ白。


 もう片方の片目と髪色は元の色の赤色。


 つまり、半分赤坂であり、半分青衣の力を宿した状態。


 霧咲が呟く。


「もしかして……青衣の力も受け継いでいるとしたら……」


 赤坂は弓を構え夜魅の再び矢を放つ。


「次はこれでどうかな」


 冷静に狙いを定めて、矢を打ち放った。


 その矢の色は青色。


 霧咲は夜魅を守ろうと屋を弾くため、刀を振り下ろした。


 とっさに矢を弾くため、刀を大きく振りかざしたため、祇那は空中で一回転した。


(おかしい……弾いた感覚がない……)


 霧咲は目を大きく開きながら、夜魅を確認した。


「がぁぁあ!」


 青の矢がよる身の太ももに刺さっていた。


「まさか! 青衣の時間停止能力を使えるの⁉」


 霧咲は驚きと同時にいま対峙している相手が青衣のときよりも赤坂単体の時よりも手強くなったことを自覚した。


(もしや……あの赤い矢は赤坂の力の矢だった場合は……)


 夜魅は感づいた。


 落下しながらも、左翼を巧みに使い背後に飛んでいった矢が戻ってくる矢……。


 つまり、金の矢の能力があるとしたら、と思い警戒する。


 予想は当たりだ。


 あの赤い矢が夜魅に再度飛んできていた。


 だが、まだ距離がある。


 このまま落下した後に着地して、そのまま刀で弾くなり、ガードするなりすれば、間に合う。


 そんな距離だった。


「気づいて良かったわね……でも、1つだけ不正解……」


 青いの力を得た赤坂が不敵に笑う。


「⁉?」


 夜魅が着地の体制で刀を地面に指した時だった。


 赤い矢が急激にスピードを上げたのだ。


 とっさに、残っている右翼でガード。


「ぐぁあああ‼」


 夜魅の肩に矢が刺さった。


 そう、つまり、赤の矢は金の矢の追尾能力を保有しており、更に、銀の矢の時間調整能力&貫通能力が備わったという事だ。


 すなわち、赤坂の能力が赤の矢で青衣の能力が青の矢に付与されているといった状態になっている。


 夜魅と霧咲はとっさに今の赤坂がどれだけ危険な相手かが判断がつく。


「これで夜魅の邪魔が入らないわ……敵を打たせてもらう……祇那……」


 そう言うと赤の矢と青の矢を2本放つ。


 赤の矢を放たれた瞬間から速度が加速し、青の矢よりも先行する。


 その赤の矢のスピードに合わせて霧咲は刀を振り切っる。


 が、案の定赤の矢はスピードを落とし、刀の触れる直前で減速し、振りかざした瞬間に加速した。


 それを予感していた霧咲は鞘をもう片方の手に持ち赤の矢を弾いた。


 その後青の矢を探したが、見つからない……。


(―――痛い……)


 霧咲の腕から激痛が走る。


 赤の矢を弾いた振動で腕から感覚が無くなっていたと感じていた鞘の方を持っている腕を見ると、そこには腕と肩を貫いて居る青の矢があった。


「やってくれたわね……痛いじゃないの……はぁ……はぁ……」


「決まってるでしょう! 白夜くんの能力で時間を停止して埋め込んだのよ……まぁ能力の限界はあるけど、もう痛みで戦えないんじゃないの?」


その言葉どおり、霧咲はうめき声を上げていた。


「グッ……アァァ‼!」


「傷跡が痛むようね・・・」


 赤黒い粒子が方貫かれた方と腕の傷から放出している。


「そして、弾いた赤の矢はまだ追尾できるの……」


「⁉」


「これで消滅させてあげるは‼ ハハハ‼ ざまあみろ‼ 白夜くんの興味を奪い、命までも奪ったあんたには報いを受けてもらうわ‼ 死ね‼!」


「これぐらいで私がやられるとでも……本気で思っているのか?……女……」


「⁉?」


 先程までの雰囲気が一変している。


「まさか、もうひとりの人格・・・目覚めたのね……」


「そういう事だ……悪いが肩をつけさせてもらう……」


 そう言っている間にもみるみるうちに髪色がピンク色に染まっている霧咲。


 髪色が変化し終える前に、赤坂の視界から、霧咲が消えた……。


「どこ⁉?」


「上だよ!」


 赤坂は上を見ると先程矢が刺さっていた腕で刀を売りおろしていた。


「させない‼」


 それを確認した赤坂は持っていた弓でガードを固めた。


「⁉」


 すると、先程売りかかっていた霧咲が切りのように消えていく。


「まさか‼」


 そう、霧咲は痛みに夜魅を狙っていた時に霧の技を使っていたのだ。


 それに気づいた時にはもう遅い……。


 下から、赤坂を切り上げた。


「キャァァ‼!」


 赤坂の片目に傷跡が残り、片目からは粒子が飛び散る。


 切り裂かれた片目からは青白い粒子ではなく、青い粒子が放出。


 後ろから、様子を見ていたよる身が飛びかかって来た。


 その気配に気づいた赤坂は夜魅の攻撃を交わす。


「あっ! まずい……」


 そう、赤坂は攻撃を交わした瞬間気づいてしまった。


 これが、先程と同じ罠だということを……。


「ズバッ!」


「キャァァ―――‼!」


 今度は攻撃を避けた背後に本物の夜魅が待ち構えていて、その攻撃を交わすために、正面を向いた時だった。


 赤坂の残っていた瞳を一瞬で切られてしまった。


「また、私の顔面を……あんた達……」


 もはや、目を開けられない状態の赤坂は両目を抑えて泣き叫ぶ。


「私が弱いから青衣くんを守れなかった‼ 私が弱いから負けてしまう……もう、最後の手段よ……」


 赤坂は肉体的にも精神的にも弱っている状態だった。


 切られた後は赤坂の視界が真っ暗になる。


 痛みにこらえながら、両手で瞳を抑え込んでいる。


 もはや戦闘不可能といった状態だろう。


 そんな赤坂の片目からは青い粒子が出ており、もう片方の目からは赤い粒子がダラダラと放出されていた。


「もう、あんた達を……道連れに……してやるわよ!」


 そう、いうと赤坂は自分の目を覆っていた手を顔から外し、手についた赤い粒子と青い粒子を前に出し、叫ぶ。


「私の命を燃やす‼」


「夜魅なにか、やばいわよ‼」


「これは・・・」


 霧咲と夜魅の目に写ったのは赤と青の粒子で構成された架空の動物のシルエット。


 赤い粒子は鳳凰のシルエットとして、青い粒子はユニコーンとして粒子が特定の架空の形に構成されていた。


 こういった事ができるのも仮想世界ならではであり、気持ちの強さが力になるしょうめいにもなっている。


 だが、こんな事ができるのはデータで構成されたものに霊が宿った者だけに許される力には違いない。


 そして、その目から流れ出た粒子の鳳凰とユニコーンは赤坂の両手に反応して動いている。


「青衣のいない世界に私が生き残る未来はいらない‼」


その鳳凰のシルエットをよく見ると赤い粒子で構成された無数の矢。


同じく、ユニコーンのシルエットは無数の青い粒子で構成された無数の矢。


 その鳳凰は羽ばたく夜に霧咲に飛んでいき、ユニコーンの粒子の矢は夜魅に走るように襲いかかってくる。


「これはまずいわね……」


 夜魅はここで初めて真剣な表情に変わる。


 凄まじい位のどのオーラが赤坂の体から感じられる。


 粒子で構成された赤と青の矢が2人に襲いかかる。


「夜魅! 単体で戦ってもいいけど、ここは一ついい考えがあるの。試しましょう!」


 そおゆうと夜魅に何かを伝えた。


「なるほど、やってみましょう! 霧咲さん!」


 話がついた2人はおもむろに逆方向に走り出した。


 走っている最中に夜魅は幼い姿に変身し、霧咲は走りながら、腕についた端末をいじっていた。


「目が使えなくなってもあなた達の足音と息遣いである程度把握できるわ! 逃さない!」


 赤坂は大量の粒子を両サイドに放出。


最後の力を赤と青の矢に力を込め、夜魅と霧咲を追尾している。


 赤い矢は赤坂の能力を使い加速したり、減速したりして鳳凰の翼が羽ばたいているように見え、追尾能力で方向を夜魅に定めている。


 青い矢では、ユニコーンの走るようなシルエットで高速で霧咲に突進するが、ギリギリの所で霧咲が交わし、かわされたユニコーンは姿を消し、一瞬で姿を表した時にはまた霧咲の方向に向いている。


それを数回繰り返し、どちらも一歩も譲らない戦いが繰り広げられていた。


 やがて、夜魅と霧咲は左右逆方向に移動し終えると、再びお互いに合流するかのように中央に足っていく。


「霧雨!」


「シャドーボール!」


 夜魅と霧咲が同時に攻撃を繰り出す。


「そんな見え透いた技! 私にはもう通用しないわよ!」


 赤坂はそう言うと素早く赤と青の矢で止めを指して、本体を探す。


 案の定、夜魅と霧咲はお取りの偽物で、矢が打ち込まれた部分から消滅していく。


 その瞬間赤坂の背後から、凄まじいスピードで、夜魅と霧咲が刀で切りかかってきた。


「そこよ!」


 先程の鳳凰とユニコーンのシルエットを解除して、ものすごいスピードで2人を矢で貫いた。


「⁉」


 だが、夜魅と霧咲はまたもやお取りで消滅した後、その後ろから、夜魅の幼い姿が、切りかかってきた。


 そして、後ろから、夜魅が飛びかかってくるのと同時に前から、裏の霧咲が襲いかかる。


「甘くみすぎよ!」


 赤坂が自分の手のひらに付いていた粒子を矢に変化させ2人を撃ち抜く。


 まさかのこれも偽物だった。


 最後に変身前の夜魅と変身後の夜魅が真上から切りかかって来た。


 それと同時に先程のフェイクの死体で身を隠し、表の霧咲と裏の霧咲が下からスライドして切り上げてきた。


(やばい……体制を立て直せない……4人を確実に倒すのはもはや不可能……どうする……)


その時赤坂はみていたのは、走って変身する夜魅の姿を、そして、走って裏の霧咲のままで逃げていたオーラを覚えているのだ。


「つまり、本物は小さい夜魅と小さい霧咲だ!」


 そう、赤坂は目が見えない代わりに強さのオーラを感じて敵を判別していたのだ。


 つまり、生命エネルギーが強い方が本物と判断したのだった。


「グサッ……!」


 赤坂を真ん中にして、霧咲が上空と、夜魅が地面に立ち一瞬だけスローモーションになる。


 屋が打たれて押していく霧咲。


 地面にたった夜魅もその場で倒れ込む。


 赤黒い粒子と、青黒い粒子が放出する。


 そして、……。


 青白い粒子が赤坂の腹部から放出されていた……。


「ど・・・どういうことなの……」


 まさかのオーラが薄い方が、本物だったようで、夜魅と霧咲に腹を刺されていた赤坂。


「私達の作戦勝ちよ……」


 実は、変身した夜魅はすでに偽物。更にいうと端末をいじっていた霧咲も偽物で、初めに分身していた時に本体は隠れており、力を分身に多く移し、本体は普通に力を使わずに接近していたのだ。


 そのため、オーラが強いと本体と錯覚させたというわけだ。


つまり、話し合っていたのはふりで、目を潰した後にすでに入れ替わっていたことになる。


話し合ったふりをしたのもかの事を気づかせないカモフラージュのようなものだ。


「あ~……やられたわ……ごめん……青衣くん……敵は取れなかったみたい……悔しい……なぁ……」


 そう言いながら、赤坂は力尽きてその場でひだを付き後ろに倒れる。


 倒れる瞬間に瞳の傷跡からは水滴が流れ、青と赤の粒子が上空へ登っていき、腹から、みるみるうちに青白い粒子に変化して消滅していった。


「敵だったけど……この執念……すごいわね」


「……」


 霧咲が悲しい表情を浮かべている横で、夜魅の口元は引き上がっているように感じた。


周囲には赤坂の粒子が待っており、無残にも怪しく夜の空に溶けてゆく。


(さて、あともう少し演技を続けましょうか……)


 夜魅は、緩んだ頬を吹きしめ、記憶がないが、純真な眼差しを作り上げた。


その後、霧咲と夜魅は、№Ⅴを倒しに周囲を見渡すが、№Ⅴの姿はどこにも見当たらない。


そんな世界の暗い空に赤と青の粒子が舞い上がり、遠くの空で混じり合い静かに消えていった。




……これが、神夜立ちに追いつくまでの事の顛末だった。




ここで、現在軸の霧咲と夜魅に戻る。




  ◇◇◇

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