超お人良しな過疎ダンジョン配信者、偶然にも超大人気インフルエンサーのダンジョン配信者を救ってしまったら一気に伝説の冒険者へと駆け上がった話。

榊原イオリ

第一章:最推し配信者との出会い編

プロローグ:お婆ちゃんとの約束

 これは今から十年近く前。まだ僕が幼稚園生だった頃の思い出だ。


『ねぇ、お婆ちゃん。お婆ちゃんはどうしてお爺ちゃんと結婚したのー?』


 その日、僕はお婆ちゃんの膝の上にちょこんと座りながら、お婆ちゃんに向かってそんな事を尋ねていった。


『それはもちろんお爺さんの事が世界で一番大好きだったからだよ。お婆ちゃんはね、子供の頃はいつもすぐに泣いちゃう子だったのよ。だけどそんないつも泣いてるお婆ちゃんの事をお爺さんがいつも助けてくれたのよ。だからお婆ちゃんにとってお爺さんは白馬に乗った素敵な王子様だったのよ』

『へぇ、そうなんだ! お爺ちゃんって子供の頃からすっごく優しいお爺ちゃんだったんだね!』

『ふふ、そうなのよ。お爺さんは子供の頃からすっごく優しくて素敵な人だったのよ。もちろん優しいだけじゃなくて他にもお爺さんの素敵な所は色々とあるんだけどね』

『えっ、そうなんだ!? お爺ちゃんの素敵な所をもっと聞きたい聞きたい! 教えてよお婆ちゃん!』

『うん、もちろん良いわよ。ふふ、それじゃあ例えばね……』


 僕がそう言うとお婆ちゃんは柔和な笑みを浮かべながら、お爺ちゃんの素敵な所をどんどんと僕に語ってきてくれた。


 実はお爺ちゃんは僕が生まれて少し経ってから事故で亡くなってしまったんだ。だから僕はお爺ちゃんとの思い出はあまり持っていないんだ……。


 それでもお爺ちゃんは僕のオムツを代えてくれたり、離乳食を作ってくれたり、散歩に連れて行ってくれたりと、本当に色々と僕の世話をしてくれていたという話は家族からよく聞いていた。


 だから僕はそんなお爺ちゃんの昔話を聞かせて貰えるのが本当に嬉しくて、僕は目をキラキラと輝かせながらお婆ちゃんにお爺ちゃんの昔話を聞かせて貰った。


『……という事があったのよ。ふふ、本当に懐かしいわね』

『へぇ、お爺ちゃんって子供の頃からそんなに素敵な人だったんだね! 凄いなー! それにお爺ちゃんは子供の頃からずっとお婆ちゃんの事を大事にしてたなんて本当に王子様みたいな人だったんだね!』

『うん、そうなのよ。だからね、ユウ君も将来はお爺さんのように優しくて素敵な大人に育っていくのよ?』

『うーん、僕もお爺ちゃんみたいな立派な大人になんてなれるのかなぁ……』

『うん、大丈夫よ。だってユウ君にも優しいお爺さんの血が入っているんだもの。だからユウ君もお爺さんのような優しくて立派な大人になれるわよ』

『あ、そっか! 僕にもお爺ちゃんの血が流れてるんだもんね! うん、わかったよ! それじゃあこれからは頑張って困ってる人がいたら全員助けてあげる優しくて立派な大人になるよ!』

『ふふ、偉いわね。それじゃあユウ君の頑張りをお婆ちゃんも応援してるわね』

『うん、ありがとー、お婆ちゃん! それじゃあ頑張って優しい大人になって……それでお婆ちゃんみたいな優しくて素敵な女の子と結婚するよー!』

『あらま、そんな嬉しい事を言ってくれるなんて……ふふ、ユウ君は本当に良い子ね。それじゃあこれから優しい大人を目指して頑張っていくのよ』

『うん! って、あ……』


―― ぽんぽん……


 そう言ってお婆ちゃんは笑みを浮かべながら僕の頭を優しく撫でてきてくれた。すると何だか僕はとってもポカポカとする気持ちになっていった。


『えへへ。僕、お婆ちゃんに頭を撫でて貰うの大好きなんだー! だからもっと撫で撫でしてー!」

『ふふ、ユウ君はいつまで経っても甘えん坊さんね?』

『うん! だって僕はお婆ちゃんの事が大好きなんだもん! だからこれからも一生僕の頭を優しく撫でてねー!』

『うーん、そう言ってくれるのは嬉しいけど……でもお婆ちゃんが一生ユウ君の頭を撫でてあげるのはちょっと難しいかもしれないわねぇ……』

『えっ? ど、どうして? お婆ちゃんは僕の事が嫌いなの……?』

『そんなわけないでしょ。お婆ちゃんだってユウ君の事は大好きよ。でもね、お婆ちゃんもいつかはお爺さんの元に……って、ううん。ユウ君の頭を一生撫でてあげられる権利はお婆ちゃんにじゃなくてユウ君が将来結婚する女の子にあるのよ。だからそんな未来のユウ君のお嫁さんのためにもお婆ちゃんは身を引かせて貰うわよ』

『あ、なるほど、そう言う事かー。うーん、でもそんな未来のお嫁さんがいつ来るかなんて僕にはわからないしなぁ……』

『ふふ、そうね。だからいつかユウ君に大切なお嫁さんが来るまでは……それまではお婆ちゃんが代わりにユウ君の頭をずっと優しく撫でてあげるわ。だからそれまではいつでもお婆ちゃんに甘えて良いからね?』

『えっ、本当に!? やったー! ありがとうお婆ちゃん! それじゃあ早速僕の頭撫でてー!』

『ふふ、全くもう。ユウは本当に甘えん坊さんね。よしよし……』


 そう言って僕は大好きなお婆ちゃんに頭を優しく撫でて貰いながら一日を過ごしていった。それは本当に心安らぐ凄く幸せなひと時だった。


 それから十年近い年月が経った。僕はあの日のお婆ちゃんとの約束をずっと守っている。誰よりも優しく立派な大人を目指して日々頑張っている。


 そしてこれはそんなお婆ちゃんとの約束を守って日々優しくあろうと頑張ってる僕と……病気の弟を助けるために毎日頑張ってる心優しい女の子の物語だ。

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