第11話

「どこのどいつだ。連絡先はわかるか」

「はい、スマホに」


 怜也は立ち上がり、亜都に手を差しだす。

 手をとって立った亜都はすぐにバスローブを掻き寄せて胸元を隠し、こんなときでも彼は優しい、と頬を赤くした。


「そいつの連絡先を出して」

 亜都はスマホを出して清良の番号を示す。

「あいつか!」

 示された名前に、怜也は声を上げる。


「偽名を使いもせず、よくもまあ」

 怜也はしかめっつらで額に手を当てる。

 笑いを我慢しているわけじゃないことはすぐにわかった。


「借りるぞ」

 怜也は亜都からスマホを奪い、清良にかける。

 数度のコールのあと、はい、と清良が電話に出た。怜也はスピーカーにしてテーブルに置く。


「お前、なにしてくれてるんだ!」

「あらお兄さま、バレました?」

 くすくすと笑う声が響き、亜都は呆然と怜也を見た。


 お兄さま? 夫婦じゃなくて兄妹?


「琴峰さんは失敗しましたのね。残念ですわ」

「お前の杜撰な計画で成功するわけないだろう!」


「キューピッドになって差し上げましたのに」

「余計なお世話だ! 余命宣告なんて嘘までついて!」


「そうでもしないと進みませんでしょう?」

「お前のせいで彼女の服がないんだ、さっさと買ってこい!」

 怒鳴り付け、通話を切ってスマホを亜都に返す。


「うちの妹が迷惑をかけて申し訳ない」

「妹さん、ですか」


「俺と君をくっつけようとしたらしい。妹はまったくの健康体だよ」

「そうですか」

 それで納得がいった。秘密の妻なんておかしいと思った。他言されたらバレるから秘密だと言ったのだろう。

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