【詩】後悔
森本ヴィオラ
後悔
10代の頃から、全力で走ってきた。
何のためかはわからなかった。
とにかく一番になりたかった。
20代になっても、全力で走り続けた。
でも息つぎが必要になった。
私に酸素を与えてくれるのは誰?
未熟で短絡的な私は考えた。
恋人しかいないと。
でも、子供っぽい人は嫌。
もっと大きな存在に、引っ張りあげられたい。
そうしないと、自分の価値はない気がした。
魂の結びつきを感じるような、そんな人と、
心身ともに交わって、その奥のぬくもりに触れたい。
心からそう願った。
私は「魂の結びつき」を勘違いしていた。
求められることに、これ以上ない喜びを感じた。
抱きしめられたとき、自分にも熱い血が流れ、生きているんだと実感した。
若い私は愚かであった。
私は、これ以上ない喜びを感じるとともに、深く傷ついてもいた。
生きている実感を得た代わりに、死んだ日々をも過ごした。
30代、私は走るのをやめた。
走らなくても、誰かに認められなくても、才能が花開かなくても、自分の価値は変わらないと知った。
そして過去の清算をした。
私を抱きしめた人は、すっかりそのことを忘れ、口だけの謝罪をした。
割り切れない気持ちはまだある。
でも、以前より風が少し心地よく感じられる。
【詩】後悔 森本ヴィオラ @morimoto_viola
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