作者様は、大変今作を卑下していらっしゃるように見受けられますが、そんなことありません。
私は「気迫」を感じました。
屋上から見る空、空気感、風、柵をつかむ手の冷たさ、それからキャラクターの心の傷…
映像と五感に伝わる小説だと思います。
ああ、これが大きな賞で最終選考まで残った作品なのだと手に取るようにわかります。
なんというか「違う」のです。
そして、この作品を機に大きく作者様は飛躍されるのであろうと確信しています。
いくつかの作品を読ませていただいていますが「何かあった? 何か修行でもした?」と聞きたいくらい、以前の作品と異なっています。
(もちろん、以前の作品も大好きです。というか、前からすごかったw)
特筆すべきは、構成でしょうか。
私も教わりたいと思うほど、ここ最近の淀川作品は構成がちがいます。
是非、多くの人に読んでもらいたい作品だとおもいます。
ミステリーはファンタジーでいい。
私は常々、そう思っております。
読む側の人間が求めているのは、警察のリアルではないのです。
もちろん、ノンフィクションみたいな警察モノ(企業モノ、政治モノなど)も世の中にはあって、それはそれでリアリティの中の面白さを追う面白さがあるのでしょう。
でもミステリーは、
「そんなトリックあるか??」
「警察にそんな組織ないよね」
などという野暮はいらないのです。
心がワクワクする。
読んでいて、面白い。
そう。ファンタジーでもいいじゃないか。
個人的感想ではありますが、私はそう思っています。
そしてこのお話は、とても面白かったです。
かなり「リアル寄り」で、しっかりしたお話。
最終選考まで行ったのも納得だし、審査員のコメントはアレとして、私は好きですよ。
是非、皆さんにも読んでいただきたい!