青年とサンタクロース

 

第1話

 クリスマスイブにアパートで一人ファミチキを食べてると、突然チャイムが鳴った。ドアを開けると、そこにはサンタクロースが立っていた。


「すげー、サンタさんだ。トリック・オア・トリート!」


 俺がそう言うと、「それを言うならメリークリスマスじゃよ。青年」とサンタクロースはツッコミを入れた。そして袋からプレゼントを取り出すと、俺に手渡した。


「はい、クリスマスプレゼント」


 緑色の包み紙を貪るように破り、箱を開けると、そこにはロレックスの時計が入っていた。


「俺が欲しいと思ってた時計だ。なんでわかったんですか?」


「なんでって、そりゃ君がわしの書いた手紙に返信をくれたからじゃよ」


 思い返すと、12月の始めに変な英字で書かれた手紙が郵便受けに入っていた。筆記体で何が書かれているかはわからなかったが、手紙に書いてあったQRコードを読み取ると、Googleフォームが開き、クリスマスプレゼントについての質問に返信をしたことを思い出した。


「それじゃあ、わしはこのあとも仕事があるから失礼するぞ」


「ありがとうございました。今から、トナカイで空を飛んで世界中にプレゼントを配る感じっすか?」


「そんなことしてたら今日中に間に合わんよ。ちなみに、わしの管轄は板橋二丁目じゃ」


 サンタクロースはそう言うと、原付に跨った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青年とサンタクロース   @hanashiro_himeka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ