第30話 震える彼女
簡単に現状を伝えると。
特に犯人捜しをしていないのに、犯人が自ら名乗り出てきた――と、いうところである。
「えっと。どういうことなのか――あと、この机と椅子――」
アホネズミと言い合っていると。教室内に机と椅子を運んできた女子生徒。
ちなみにこの生徒はクラスメイトである。
ちょくちょく俺に違和感を与えて来ていた女子生徒。
そうそう。俺が掃除中にトイレでずぶ濡れになった時。掃除の場所を俺に教えてくれたオロオロしていた女子生徒である。
そしてそんな女子生徒が今俺の前で頭を下げて震えている。
それはそれは90度を綺麗に超える形で頭を下げている。
少し前までいろいろあたりに語ってくれたアホネズミもさすがに状況が分からないらしく固まっている。
まあ俺もわかっていないが。
「――マジか。
「そんな事するようには見えないけど――」
「でも人は見かけによらず――だろ」
すると外野がまず騒がしくなってきた。
そして騒がしくなると同時に教室を出て行く生徒もいたり――。
とにかく、どうやら今俺の前で頭を下げているのは
何だろう。俺この人と話したことがある気がする――気のせいな気もするが。今の声も――なんか聞いたことある――?
そりゃまあ飛鳥さんの身体に入ってるんだから。飛鳥さんの記憶が何か干渉?することがあって、彼女の声を聞いた気がする――と、思っただけかもしれないが。って、そうだよ。そもそもクラスメイトなら声くらい知っているだろうし。飛鳥さんの記憶にあってもおかしくないよな。
って、この状況をどうにかしないとか。
いろいろ考えたいことはあったが。まず俺は頭を下げ続ける彼女に声をかけた。
「その――とりあえず頭上げて――」
「――ごめんなさい――ごめんなさい……」
しかし彼女。西宮さんは頭を下げたまま――仕方ないので、軽く肩に手を当てると一瞬びくりと身体がしていたが。軽く俺が身体を起こすように促すと西宮さんは顔を上げた。
よく見るとかわいい――って、うん?この顔どこかで――って、めっちゃ目がウルウルである。まるで俺が泣かせたような状況――とか思っていると。空気を読まないのか。アホネズミが口を挟んできた。
「つまりなんだ――えっと君が飛鳥さんへの嫌がらせをしていたと。その机は飛鳥さんの?」
「は、はい――」
「ネズミ」
「えっ?」
「――」
勝手に取り調べを始めようとしたアホに対して俺は口を挟んだ。
するとまた教室に残っていた生徒の笑い声が聞こえて来たが俺はそれに関しては再度無視し。
「ネズミは邪魔」
「えっ?」
「――」
俺の発言にアホネズミはその名のお通りアホのように口を開き固まる。
西宮さんの方はどう反応したら良いのかわからないような状況だったので俺がそのまま話した。
「――とりあえず場所変えよう」
俺はまさかの犯人登場だったが。どうも引っかかる感じがあったので、このままネズミとの話すだけなら周りを気にしなかったが1人増えてしまったため場所を変えることにした。
西宮さんが持ってきてくれた机はまあ多分俺のだろうということで、俺の席に動かすとそのまま『自分の荷物持ってきて』と、西宮さんに伝えた。
西宮さんは少し戸惑いつつも小走りで荷物を取りに自分の席へ。
そして周りからのコソコソ話を耳にしつつ――すぐにこちらへとカバンを持ってやって来た。
西宮さんが戻ってくると俺はすぐに教室を後にする。
西宮さんは黙って付いてきた。
なんかアホも付いてきている気がしたが無視し。そのまま多分人が少ない気がした4階へと向かうと――予想通り生徒がおらず静かな階だったので、階段から少し離れたところの廊下の窓際に移動した。
「――で、誰に頼まれたの?」
「――へっ?」
静かに付いてきていた西宮さんに声をかけると突然だったからだろう。西宮さんがあっけにとられた表情をした後――。
「――あ、えっと――その……私」
「じゃないのはわかってる」
「ちょちょ、飛鳥さん。彼女は認め――」
あくまでもやったのは自分。と西宮さんが言おうとしたので俺が口を挟んだが。さらに口を挟んだストーカーが居た。
「お前黙ってろ」
ということで、西宮さんの後ろを付いてきた何とか橋を睨む。
「……飛鳥さん。キャラ変わってない?」
「お座り」
効果はあまりないようだが。再度睨む。
「えっと……お座りって――」
「あ、ネズミは言葉わからないか。チーズ持ってないけど――あれ?ハリネズミもチーズ食べるの?なんか虫食べてなかった?とりあえず、土でも掘ってきたら?」
「急に飛鳥さんのキャラがおかしくなったんだけど!?」
アホネズミがうるさい。誰か何とかしてくれ。
「とりあえず黙ってて」
「いや、今飛鳥さんがいろいろ――」
「ストーカー」
「いや、違う」
「――ふふっ」
「?」
「あ、ご、ごめんなさい」
すると、俺と千鳥橋のやり取りがおかしかったのか。いやおかしい要素はなかった気がするが。でも西宮さんが何故か笑い出したので俺が西宮さんの方を見ると。一瞬なかなかかわいい笑顔――からの、西宮さんは慌ててまた頭を下げたが――。
「いいよ。それより――誰を庇ってるの?」
「――そ、そんなこと――」
俺が聞くとまた表情が一気に曇った。
「多分やるように言われただけでしょ。掃除のときも今回の机も――下駄箱も?」
「げ、下駄箱は――あ」
「下駄箱は――ってことはまあ掃除と机をやったのはえっと――西宮さん?」
「――」
返事はしなかったが。沈黙的に掃除のときは言ってくるように言われ。机も運ぶように言われたで間違いないだろう。
下駄箱は――面白半分で新犯人たちが居れたか。まあ下駄箱だけは鍵とかないし誰でもやりやすいか。
「飛鳥さんなんで彼女をそこまで――」
「ネズミ」
「いや、だから言い方」
「そもそもなんで付いてきてるの?呼んでない」
「いや、俺は心配で――」
「心配と言ったら今は西宮さんの方が心配」
「「――?」」
俺がそう告げると。何故かポカンとする西宮さんとアホネズミ。
当たってほしくないことだが――俺の経験上多分アホネズミは別にいいのだが――。
「あの馬鹿たちがもし。理由なく楽しんでいるだけだとターゲットが西宮さんに変わる気がする」
「――え?」
「飛鳥さんどういう――」
その後のことを言うとまず俺は西宮さんから机、椅子を隠した事の謝罪は受け入れた。
そして今までのことももう全部許すと伝えた。
まあ西宮さん黒幕は誰かは最後まで言わなかったが。
そうそう。もちろんアホネズミが何か言いたげだったが黙らせた。
そして話が一段落したところで俺は西宮さんに声をかけた。
「西宮さん。西宮さんが言いたくないのを無理にはもう聞かないけど。気を付けた方が良いと思う。トカゲのしっぽ切りになる気がするから」
「――トカゲのしっぽ切り?」
「うん」
俺の勝手な予想だが。多分しばらくこれで俺に対して、飛鳥さんに対して何かが起こるのが止まると。ターゲットが変わる気がした。
本当は俺。気にしてなかったからから、ターゲットが変わるようなことはなくても良かったのだが――でもこうなってしまったからには仕方ない。
とりあえず起こってほしくはないが注意だけ促した。
そうそうアホネズミは一応居たがその後特に相手はしていない。
「なんか疲れた――」
ということで、やっぱり今日もいろいろあったが。やっと部屋へと帰って来た俺。
どうして俺の予想とは違う方向に事が進んでしまうのか――などと一瞬考えたが。疲れていたので、食堂でご飯を食べ。シャワーを浴びると俺はそのままベッドに倒れこんだ。
もちろん飛鳥さんに関して何か知らべるとかいう気力は全くなかった。
マジで疲れた。というか何やら飛鳥さんの交友関係というべきか。輪が広がっている気がしたが――これは良いのだろうか?と一瞬考えたくらいで俺は夢の中に落ちた。
余談だが。西宮さんとは仲良くしたいかも――なんとなく良い子そう。とかとか薬水柚希の気持ちが出ていたり――いや、だって、今まで俺に普通に話しかけてくる女子とかいなかった――って、そんな事も今はいいや。
いろいろありすぎて眠い。
特にアホの丸焦げにしたいネズミの行動から始まったことで振り回される俺。明日こそ――とか思いつつ夢に落ちる俺だった。
まあ本当はそんなことを思いつつも、明日今日以上に嫌な予感がする――とか思う心もあったのだが。
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