第2話 強化合成-まもののいけにえ-
この世界において魔物を強化する方法はいくつかある。
一つは単純に生物として成長させる方法。
戦闘経験を摘ませたり、いいエサを与えたり。単にペットとして飼いならすだけならこの方法でいいだろう。
もう一つは、同系統の魔物を『合成』する方法。競技シーンに出す魔物にはほぼ必須のアプローチとなる。
合成素材になった魔物はもちろん、消滅する。
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世間一般のお兄ちゃんというのは、妹と仲がどれくらいいいのだろうか。
たまにインスタとかで美人兄妹がショッピングモールを練り歩いている様を見ると吐き気がしたんだよね。これは極端な例としても、俺ほどお兄ちゃんとして未熟だった例はそうないのではなかろうか。すっかりクズ扱いで、兄と呼ばれたこともないのだから。
今世では、お兄ちゃん……じゃない、お姉ちゃんと読んでもらえるだろうか。
そんなことを想いながらうつらうつらしていた。悪い夢を見るのは珍しいことではない。
妙だな、と思ったのは寝返りを打とうにも体が動かなかった時。そして、なんとなく立ち込める鉄の匂い。決め手に絹を裂くような悲鳴がして、目を覚ました。獣の断末魔のような、体の奥底から絞り出したような唸り声。
そこに目を向けて……
「う わ あ あ あ あ あ あ あ」
見えたのは、血と惨劇。その構成要素を私は何度も瞬きして飲み込んだ。鈍い輝きを放つ刃が、苦労を知らない白く軟な肌に食い込んでいる。血が鼓動の調子で吹き出し、下手人たる看守はにやついてそれを見つめている。
「一体、なにを」我ながら間抜けなセリフだと思った。
脇から腰までを切り開かれているのに、その子はまだ生きていた。繋がれた手足をジタバタと動かして、一心に『おかあさん』に向けて叫んでいる。
「いだいいいい"い"!!!た、たすけてえええええ!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!」
必死の叫び。にもかかわらず、『おかあさん』は鉄面皮のままだった。天井から吊るされた大量の動物のミイラを弄んでいる。
聞いているだけで心がざわつき、居ても立ってもいられなくなるような悲鳴。それを向けられていながら平然としている二人は、もはや尋常ではない。鬼。悪魔。そういう類いだ。
「我慢してって。生きてなきゃスキルドレインはできないんだから。」
「お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!」
「ごめんね、だから助けられないんだよ。私は母親役。文句があるならモンスターマスターのサド看守様に言ってね。」
逃げなければ/助けなければ。
二通りの思考があったが、どちらも実行には移せない。私の四肢も縛られていたからだ。
周囲を見渡しても、ランタンが一つついているだけの薄暗い部屋に逃げ場は見当たらない。むしろ、壁にこびり付いた血と脂が厚く重なってドス黒い層を形成しており、救いの無さが実感できた。
「あ、他の子も目覚め始めた。さっさとやっちゃうよ、看守様。」
「ちっ、しょうがねーなー。もっと悲鳴を聞きてぇのによぉ……。」
サド看守はキセルを置くと、魚のように開かれた横腹にごつい黒人の手を入れる。
「ここかい?ここかい?……お、あった。」
何かを探るたびに、てんかんのように大きく痙攣する。
ほどなくして、サド看守の腕が何かを掴み、引き抜く。
(もうやめて……)涙が出てきた。ブチブチブチ、という音の正体はもう聞きたいとも思わなかった。
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name ナユタ
spices アクアティターニア(S)
筋力 E
敏捷 A
耐久 C
魔力 SS+
とくせい 水神の加護:SSS+1 エナジードレイン:A ■■の獣:B 速度強化:S 身体操作(触手):S ■■:B 不屈の闘志:D
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「ケケケ、全然上がらねぇなぁ。」
次は、私の番なのか?
高らかに笑うスタッフ……いや看守を見て、恐怖よりも先行したものがあった。疑問だ。
「なんで?」
「……あん?」
「なんで、こんなことができるんだ?その子は、さっきまで生きていたのに。」
動かなくなったフェアリーには見覚えがある。元気いっぱいで、狭い部屋の中を飛び回ってはあちこち怪我していた。あの子が飛ぶ姿はもう見れない。
生きてるものを、殺す。そんな至極当然の禁忌がここでは機能していない。
「そりゃ〜〜〜〜おめぇ、ここは保護施設なんかじゃねぇ。牧場だ。オレのモンスターを育成するための魔物牧場なんだ。お前らは、ナユタに食い殺されるためにこれまで育てられてきたんだよぉ?」
「そういうことじゃない!功徳心、良心はどこへ行った!?」
私の問いに『おかあさん』は聞き飽きたという風に首を振り、看守はさらに高らかに笑った。
「興味深い問いだぁ………じゃ、次は染色体の数を間違ずに生まれてから聞いてみてくれよ。まあ強化素材になる順序が代わるだけだがな。」
看守はリズムに合わせて、私の浮き出た肋骨を刃でなぞる。
「ど・こ・か・ら……切り裂かれると思う?」
喉が詰まって、反論もままならない。
けれど、悲鳴はよく響いた。
ぎ ゃ あ" あ" あ" あ" あ あ あ あ
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