沈黙の行間で広がる、物語という宇宙

 物語とは、誰のものなのか。

――木山喬鳥様の『物語分解図』は、そんな根源的な問いに、論理と想像の両輪で丁寧に光を当てていく思索のエッセイです。文字の意味は書き手だけで完結するものではなく、読み手の記憶や文化的背景によって“再生”される――その視点に、私は深く頷かされました。

 ごく短い一文が、ときに私たちの心を強く揺さぶる理由。情報が欠けているからこそ、そこに想像が生まれ、個人の内面と深く響き合う「物語」が生まれていく不思議。それはまさに、読むという営みの奇跡です。

 物語を愛するすべての方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。ページをめくるたび、自分自身の読みのあり方がそっと揺さぶられ、気づけば、内なる世界が少しずつ広がっている――そんなやわらかで豊かな読書体験が、ここにはあります。

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