文字というメディア(媒体)について考える

本論考は「物語分解図」と題されていますが、まことに勝手ながら評者は本論考を物語について語ったとは見ていません。

カクヨムに投稿される作品群が等しく自身の土台にするもの、文字というメディア(媒体)について述べたものだと見ています。

人間には物語を語る媒体として、文字以外のものは扱いがたく、文字に頼らざるを得ません。しかし画像や映像や音声と異なり情報量が少ないことは否めません。

昔ならいざ知らず、コンピュータという「他の情報と区別するために必要な情報量が掛け値無しで露わになってしまう機械」が登場したことで、文字は画像や映像や音声より小さなデータで届けられることがバレてしまいました。カクヨムは動画配信サイトより「軽い」のですから、気づかないうちに恩恵にあずかっている(スマホからお読みの皆様にとって通信制限に優しい)のですし。本レビューもデータが増えないように話を進めないと……

データが少ないはずの文字の連なりだけで、どうして皆が興奮し感動する物語を伝えることができるのか。その手品のタネを明かす試みが本作で進みます。

どんな内容かって? それは御本人による解説、つまり本文をどうぞ。

まず書き手を目指すなら目を通すべきです。たとえ批判して持論を構築するにしても、一度読まなければ始まりません。また読み専にとっても批評眼の助けになると見込まれます。それほど内容が濃い論考です。

手品は、騙されるだけでも面白いですが、タネを知ってから見るのも興味深いものです。ひと味違う、小説の鑑賞法を得られます。

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