十年以上エタっていた私が十万字超の長編を完成できた理由

キヤ

カクヨムに出会ったからです

 タイトルを読んだ方の中には、私がスランプに陥っていたと思われたかもしれません。

 ここ十年以上、小説を書いては途中で投げ出すということを繰り返していました。

 最後に長編小説を書き上げたのは高校時代です。当時の作品は一文字すら見たくありませんし、自分が小説と呼べるようなものを書けていたのかよく分かりません。

 「書ける人」が「書けなくなる」ことがスランプであり、「書けるかどうか分からない人」が「書けなくなった」ところで、それはただ努力や気力、才能のないせいだと思っていました。


 自分にそう言い聞かせてました。


 私がカクヨムに出会ったのは去年(2024年)の5月です。

 読みたい小説を見つけて没頭するのに、そう時間はかかりませんでした。読んでいたら小説を書きたくなりました。


 なんとしても長編小説を完成させたい。


 もう途中で投げ出して自分にがっかりするのは嫌でした。

 どうすれば私にも小説が書けるか、過去の書き方を見直して別の方法を試してみました。


 今までよりも楽しく書け、夢中で書き続けました。


 カクヨムは作品とユーザー、ユーザー間の距離がとても近いと思います。

 今までの読書経験は書籍が中心でした。書籍化作家というと、「自分にはない才能を持った一握りの方」という考えが頭の奥底に小さくこびりついています。

 ですがカクヨムで読むようになり、作者の方が身近に感じられるようになりました。いろいろな方が、いろいろな理由でプロ・アマ関係なしに書いています。


 応援ボタンを押したくて、7月にユーザー登録をしました。8月には長編の手を止め、短編を完成させました(長編小説を完成させられるか不安になったためです)。

 9月に短編(とエッセイ)を投稿しました。まったく知らない方からも応援していただけて、とてもうれしかったです。


 今思えば、短編を投稿したことで居場所を見つけた気分だったのでしょう。


 「カクヨムに投稿する!」と気持ちを新たに、長編執筆を再開しました。




 思うように書けませんでした。




 想像してみてください。

 人肌の温度をしたコンニャクがあります。それを前頭葉の前に詰めてみてください(グロかったらごめんなさい)。

 あなたが考えた文は、そのコンニャクに邪魔されて出てきません。気力でぐっと押さえつけ、ようやくできた隙間から文を引っ張り出します。無理に引っ張ると、文はバラバラになってしまいます。バラバラになった文の破片をあなたは組み立てなければなりません。

 もちろん、隙間を無傷で通り抜ける文もいます。時には文章となってやってきます。ですが少し押さえつける力が弱まると、途端に出てこなくなります。


 そんな感じで書いていました。去年の11月中旬まで。


 進捗が本当に遅いです。執筆方法を変えて、確かに多少は書けるようになりました。ですが、時間をかけて書いて、一日で800文字しか書けない時は笑うしかありません。


 何で書けないのか、自分の人生を振り返って考えていました。そもそも「書ける」と思っているのが間違いじゃないのか?


 でも書きたい。


 「私にも小説が書ける」「私でも小説が書ける方法がある」と信じてきたのは、単に書きたかったからです。自分が考えた物語を形にしたかったのです。形にする方法として小説がいちばん性に合っている、と思っていました。


 どうしても書きたい。


 カクヨムで創作論を読み漁りました(基本的に星もハートもつける方針ですが、創作論は例外にしました。精神衛生のためです)。

 毎日書くのがいいそうです。毎日書きました。

 書ける日もあり、書けない日もあります。

 毎日執筆を続けたことで、書ける日の共通点が判明しました。


 アレルギーの薬を飲み忘れたことです(誰の参考にもならず、すみません)。


 書けない最大の原因はこれでした。アレルギーの薬。副作用に「車の運転や機械の操作にはお気をつけください」と書かれているタイプの薬です。これを毎日服用していました(十年以上)。

 日中寝てしまうということはありませんでしたが、ぼんやりしていました。

 毎朝、スマホのアラームがなぜ鳴るのか分からないぐらい寝起きも悪かったです。

 スマホを買い替え、アラームの仕様が変更されていた時は、意味が理解できませんでした。左にスワイプするとスヌーズで右がストップです。なんという無茶な要求でしょうか。

 「寝起きの人間に左右が分かるはずないでしょう!」と新しいスマホに文句を言いました。よく悪夢も見ていました。


 アレルギーの薬を変更しました。


 集中力が断然違います。

 以前は、気力と情熱と目標を糧にして、とにかく書き続けていました。集中力のなさを熱中することで補うため、楽しんで書くことを最優先していました。


 寝起きも断然違います。

 アラームが必要ありません。起床時刻が1~2時間ほど早くなりました。寝起きでも左右は分かるようです。悪夢は今日までに一度見たぐらいです。


 何より寝起きで小説が書けます!


 映画『天使にラブ・ソングを2』で出てきた本を思い出します。「もし朝、あなたが目が覚めて、あなたが物語を書くことしか考えられないなら、あなたはすでに作家だ」というやつです。

 起きてすぐに小説のことを考えたことなんてありませんでした。「眠い」と「なんで」ぐらいしか思い浮かばなかったです。

 それが今では、寝る前に悩んでいたシーンを自然と考え始めていました。


 私も作家だ!


 テレビで芸能人の方が「健康な人が病気になると健康のありがたみが分かるのと逆で、病気の人が健康になると病気の異常さが分かる」という趣旨のことを言っていました。

 まさに、それです。異常が正常だと思い込んでいると気づかないのです。


 当時の状態を振り返り「なんで早く別の薬にしなかったんだろう?」と不思議でなりません(花粉の時期は怖いですが……)。


 今は書くことに困りません。どう書くか、どういう流れで書くか、には悩みますが、「書けない」という状態には悩みません。

 進捗も大幅に改善しました。何日もかけていた一話が、一日で(別のシーンに寄り道もなく)書けた時には、こう思えます。


 私もやればできるじゃないか!


 楽しいです。

 さらに楽しいです。

 まじで楽しいです。


 書ける、って最高の気分です。


 結果、十二万字の長編小説を完成させることができました。


 ほかの方から見れば、たかが十二万字、たかが長編小説一作かもしれません。ですが私にとっては大きなことであり、また書けることが、書く楽しさを思い出せたことがとてもうれしいのです。


 十数年エタっていた私が十万字超の長編を完成できた理由は、カクヨムに出会ったからです。


 ここまでこれたのは、カクヨムでいろいろな作品と人に出会えたからです。


 皆様の頑張りを見て(読んで)、「私も頑張ろう」と思えました。


 皆様の文章に助けられました。


 何より「私も書いていいんだ」と思い続けることができました。




 本当にありがとうございます。




 感謝の意をたくさんの方に伝えたくて、常設エッセイとは別に単発で投稿させていただきました。

 もちろん長編一作だけで満足する気はありません。これからは「書き続ける」を目標に頑張りたいと思います。


 最後になりましたが、私はキヤと申すものです(自己紹介を忘れていました)。

 以後お見知りおきを……しなくてよいので、皆様良いカクヨムライフをお過ごしください。

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十年以上エタっていた私が十万字超の長編を完成できた理由 キヤ @diltale

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