偵察?
暗黒秘境の最下層を統治したバグスは、ストリゴイと鎌の部隊長に、更に奥に進む戦略的な意見を聞いた。
ストリゴイは
「敵の戦力と生息域が不明ですので、まずは偵察をして、しっかりと情報を得て、被害の少ない様に進むのがよろしいかと思われますな。」
鎌の部隊長は
「…我は勝手に探して、狩れそうなら狩ってこよう。ストリゴイはゆっくりと我の後ろを歩いて来るといい。我は雑であるからな。整理整頓の好きなストリゴイにはうってつけであろう。」
とクックックっと笑って話す。
「これはこれは。知っておいででしょうが、本来、鎌の用途は雑草刈りでしてな。雑草の刈れない鎌は使い物にならない道具。ですので、鎌を冠する部隊長は雑草を刈る方が適任と思われますな。私が先に進み雑草を刈りやすい様に固めて置きますので、本来の鎌の才力を遺憾無く振って頂きたい。」
と笑顔で話す。
「…蝙蝠は刈った雑草から飛び立つ虫を食すのが仕事であろう。己の力の領分を越える行動は失敗し、恥を掻くだけだぞ。」
お互いが笑いながら話してたが、見えない何かがバチバチとぶつかり合っていた。
危険を感じたバグスはなんとか場を変えようと
「進め方は自由なんだから、二人の進め方をどっちもやってみてから、どっちがいいか決めようよ?」
二人の目付きが変わった。
軽く火が付いてただけなのに盛大に油を注いで燃え盛るやる気の炎に変えてしまった。
「私は準備があるので失礼をします。」
「…面白い」
と二人共が立ち去った。
「えっ?なんで?話し合いは?先にどっちをやるとか決めないの?あれ?」
バグスは自らが盛大に炎上させた事に気づく事なく、一人残されて、自分が何を間違ったか悩んだ。
ストリゴイは、悪魔達をスリーマンセル(3人1組)で組み、27組の部隊を放つ。
見つけ次第、発見の合図を出す命令のみ。
バグスはストリゴイから偵察して、地形など調べて、更に敵を探す偵察要員とだけ聞いていた。
鎌の部隊長は何処に行ったのか分からず、探すのを諦めた。
ストリゴイから偵察が終わったら報告すると聞き、それまでは残った悪魔と鍛錬する様に言われて頷くしかなかった。
偵察を開始して、2時間位過ぎた位だった。
偵察していた一組の悪魔達が山の木の影で下に見える集落を見ながら話をしていた。
「オーク達が集落らしき場所で、鎧を着て武装しているな。」
「完全な集落だな。親がいるな。」
「当たりだ。報告する。」
上空に魔力の玉を放つ。
すぐにストリゴイが歩いて来た。
「ふむ、鎧を着た豚ですか。少し様子を見てみましょう。」
歩みを止めず、そのまま敵の集落へ向かって行った。
「えっ…ストリゴイ様…」
悪魔達の声は届かなかったのか、集落の門から堂々と入り、歩きながら両手を横に広げてそのまま歩く。
鎧を着たオーク達が吠え、近づいていくも、足元から黒いスライム状の口が出てきてオーク達を呑み込み、咀嚼する。目がキョロキョロ動き、すぐに近場に居るオークに呑み込む様に飛び掛かる。蜂の巣を突いた様にオーク達の怒号と悲鳴が響き渡る、頭に羽の飾りを付けて人間が着用する豪華なローブを着飾ったオークが様子を見ようと外に出て来る。その着飾ったオークがまず耳にしたのはボリボリと鳴らす咀嚼音。横を見ると、黒いスライムが大きな目を開き、ジッと此方を見ており何かを咀嚼していた。その目と目が合う。オークキングが戦闘体制に入ろうとした時、目のある黒いスライムは大小の鋭利な牙がビッシリ生えた口を開いて呑み込むように飛び掛かっていた。
生きてる者が居なくなり静寂な集落の中、ストリゴイは
「ここの偵察は終わりました。次を探しますよ。」
と悪魔達に言い消えた。
「偵察?」
「おい、やめろ。」
「偵察を続けるぞ。」
そう一人の悪魔は小突かれるも、顔を切り替え悪魔達はすぐに移動を開始した。
他の一組の悪魔達も森の中の何かに汚染された様な沼で何かを見つけた。
「青白い肌で人間みたいだが、アンデッドの臭いがするな。」
「動きが動物的過ぎるな。知性は無い模様。奥に居るのは使役者みたいだな。」
「あれは親だな。確定だ。報告するぞ。」
上空に魔力の玉を放つ。ストリゴイが何処からか出てくるも、青白い肌のアンデッドが何体か魔力の玉に気が付き、四つん這いで駆けて襲ってきたが、
「グールですか。珍しい。あのローブはリッチですかな。…思い過ごしでしたか。下位のダークサマナーの様ですな。」
手をかざし、黒い光線を出すとグールを貫きつつ、ダークサマナーを貫いた。ダークサマナーは消滅した後、グール達は黒い霧となり消滅していった。ダークサマナーの居た所から、黒い球が現れて地面に落ちた。黒い珠を拾ったストリゴイは、興味深そうに手に持った黒い珠を見る
「何かエンチャントされてますな。後で調べましょう。さて、ここの偵察は終わりました。次を探して下さい。」
と言い消えてった。
偵察をしていた一組の悪魔達が突然、襲撃に遭い戦闘域から脱出した。
「敵が見えない。一方的な攻撃だ。」
「俺には飛び込んで来た球に意思がある様に見えたが他に見た者はいるか。」
「球が地面に潜っていったのは見た。潜った場所とは違う所から地面から攻撃を受けたのも見た。」
「あの球が敵本体なのか。分からないままだが、応援を呼ぶしかないな。」
上空に魔力の玉を放つ。
ストリゴイが現れる。悪魔達は状況を説明する。話を聞きストリゴイは
「よく分かりませんね。その球を調べてみるとしましょう。」
とスタスタと歩いて行く。ある程度進むと、地面が爆ぜ、黒い球が飛び出してくる。
ストリゴイはなんのことなく球を掴み、ほぅと呟く。その球をバキッと握り潰し、悪魔達に放り投げる。
「球自体が虫の魔物ですね。では、こうしましょう。」
投げられた物を見てみると、ダンゴムシを大きくし、外装は鉄の様に硬く、内側は如何にも多足の昆虫の様子が伺える。腹の付け根部分に噴射口みたいな物ありそこからあの爆発的なスピードで飛び出せる様だった。
ストリゴイは黒いスライム状を呼び出し、進ませる。
色々な場所の地面が爆ぜ、黒いスライムの体を深く凹ませて歪めさせる。が、球は落ちる事なく、ズブズブとスライムの中に沈んでいった。
黒くタール状の中からバキバキと音が鳴る。
何事もなく、スライムが進み始めた。まるで銃弾飛び交う戦場の様に至る所の地面が爆ぜ、スライムに猛攻を仕掛けるも、スライムは我は関せずの様に進み、球もそのまま、スライムの中に沈み込んでいく。奥に進めば進む程、攻撃は苛烈になっていく。大きく開けた木が全く無い広場に出る。その広場の中央に無数に穴の空いた蟻塚の様な物がポツンと建っていた。
スライムはそのまま、蟻塚らしき物に近付いていく。地面から飛び出す虫も更に増え外敵を寄せ付けない様に攻撃を仕掛ける。が、スライムは何事も無い様に進む。
蟻塚らしい物まで後5m。突然、蟻塚が盛り上がった。蟻塚の下から大きなダンゴムシが這い出てきた。蟻塚とダンゴムシは繋がっており、蟻塚に似た物は虫の卵管であった。卵管からダンゴムシがボロボロ出てきて、地面に落ちる。落ちたダンゴムシは丸くなり、弾丸の様に撃ち出され襲い掛かる。
が、黒いスライムは気に掛ける事なく近付き、大きく口を開き、捕食した。大型の虫の卵管から体下半分を食い千切られ、残った上半身を引き摺りながら、逃げるように前進し、距離を取ろうとするが、スライムの続けての二口目で全て呑み込まれた。
スライムの後を追うように歩いて来たストリゴイが、
「ここは中層圏になるのでしょうか。中々に戦い難い魔物が出て来ましたね。ここの偵察は終わりました。慎重に周囲の偵察をよろしくお願いします。」
と言って消えて行った。
悪魔達は行動スピードを抑え、慎重に動く事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます