村人少年 バグス

名前の知らぬ世界の小さな村に子供が産まれた。

暗黒秘境と呼ばれる大きな森の近くで猟師で生計を立てる村であり、人数も少ない。

そんな村で産まれたのだが、猟師では無い両親で村人は皆、無関心だった。

もちろん、そんな両親の元に産まれたバグスもイジメの対象になるのは必然的であった。

そんな状況下であり、バグスは家に引き篭もる事が多く、冷遇された幼少期を過ごしていた。

バグスが8歳を迎えた時、村のしきたりにより、狩猟の荷物持ちで同伴する事になった。


「イヤだぁぁぁぁ、行きたくないぃぃぃ」

「諦めなさい。行かないと村には居れなくなるわ。」

「あの人らの中に行くのがまず無理なのに、更にズッと一緒に居るなんて無理ぃぃぃ」

「村のしきたりなんだから、守らないと更に酷い事になるわよ。お肉を全く交換して貰えなくなるわ。」

母から説得される事、半日。渋々と行く事になった。


狩猟同行日、待ち合わせ場所の村の出入り口となる門へ重い足取りで向かう。

バグス一人だ。

父オルグは朝早くから、近くへ山菜など取りに行っており、帰って来るのは日が暮れてからだ。

母シャルノアは父の取って帰った山菜などを切ったり、殻を剥いたりするので忙しい。

なので、一人で行く事になった。

早くに家を出されて、待ち合わせ時間よりかなり早く着く事になったが、もうほぼ人が集まっており、皆が談笑をしていた。

「なんだ?弱き者の息子が来たか? よく来たな。」

「弱き者、俺の荷物に触るな。穢れるからな。」

二人の入れ墨の入った大柄な男性が二人そう声をかけて来たが、バグスはその威圧感に声が出なかった。

「弱き者は言葉が喋れないか? 身体が弱いと頭も弱い。」

「放っておけ。相手にするだけでコッチが疲れる。」

と大笑いを始めた。

そうしていると、最後の人がやって来た。

「狼牙のダヒル、来たか。皆の衆、狩の開始じゃ!」

そうして、ゾロゾロと皆が森の中へ入って行くので、バグスも焦って走って着いて行った。


森の中を歩く事、1時間。

いつもならすぐ出る野生の動物が全くおらず、村の猟師達はイライラが募っていた。

「何故、今回はこんなに動物が居ない?おかしくないか?」

「もしかすると、弱き者の臭いと息づかいで警戒して逃げられてるのかも知れない。」

そう誰かが言うと、皆の視線が小さな子供に一気に集まる。

確かにバグスは付いて行くのが精一杯で、肩で息をしながら、大量に汗をかいていた。

「…ふぅ… 誰か、弱き者を土風呂へ、つけてやれ。」

そう言うと、何人かが足元の黒土を耕し始めたので、何をしてるんだろうか?と分からず、バグスは眺めてたら、不意に襟首を掴まれ、耕した小さな穴の中に投げ込まれた。

訳も分からず投げ飛ばされ、バグスは混乱したが、更なる仕打ちに絶望した。

土を足で蹴つってかけてるだが、その2回に1回はバクスの胴や腕、頭などに入っていたのだ。

(なんでこんな事に。逃げたい。逃げたい。)

恐怖と痛みで全く動けなくなり、身体を丸めさせて、恐怖と痛みに耐えた。

「そこまででいいだろう。時間が惜しい。今回は致し方ない。魔の領域へ入るぞ。」

「魔の領域へ行くのか?襲われる事もあるぞ?」

「村の戦士達が何を恐れる。我らのスキルを使えば、魔の領域の浅い所までなら安全だ。」

「では、皆の者!行くぞ!」

そして、ゾロゾロと更に森の奥へ向かう。

が、一人言葉を発した。

「そう言えば、弱き者が居たよな?」

が、皆から、なんの話をしてる?みたいな顔をされので、その男も頭から忘れて皆に着いて行った。

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