恋人日記 番外編

KMT

第1話「こんな『恋人日記』は嫌だ」



優樹「こんな『恋人日記』は嫌だ、始まるよ~」


志乃「何それ……」


優樹「知らないの!? 作者さんの長編小説の番外編で結構書いてるこのシリーズ!」


志乃「知らない」


優樹「そうかぁ……まぁ、作者さんも番外編は本編と比べて超テキトーに書いてるみたいだからね。よし、じゃあ一緒に見ていこう!」


志乃「えぇ」


※注意


・ほぼ全文台詞だけなので、誰がどの台詞を言っているのかわかりやすくするために、カギカッコの前にキャラクターの名前を置いてます。


・ネタとネタの間に優樹と志乃(もしくはその他本編登場キャラ)のコメントが入ります。


・感動とか一切無しのネタ集です。


・本編を読んでいないと何が何だか訳がわかりません。




   * * * * * * *




 何でもいい。彼女と友好的な関係を築くことができたら、新たな世界を知ることができるような気がした。僕は実に抽象的な思考で、「友達100人作るぞ」みたいなノリで、彼女と仲良くなろうと考えた。


「志乃さん!」


 そして、一歩を踏み出した。


「ずっと前から志乃さんのことが好きでした! 僕と付き合ってください!」

「無理」


 翌日、優樹は遺体となって発見された。




『優樹が呪いの最初の犠牲者』




優樹「第一話で主人公が死ぬって……」


志乃「でも、下手したらこうなってたかもしれないわよね」


優樹「ま、まぁね……///」




   * * * * * * *


※呪いの存在を優樹に打ち明ける志乃


 先程の志乃の言動から、呪いの力は彼女が意識的に発動させているわけではないようだ。彼女に恋心を抱いた時点で呪いの対象となり、自動的に命を狩り取られてしまうらしい。


「だから、私なんかと関わろうとしない方がいい。命が惜しかったらね」

「ひっ、わ、分かりました……」


 それが、優樹が志乃と交わした最後の会話だった。それ以来、二人が口を聞くことはなく、平穏な日常が続いていった。




『優樹、本当に命が惜しくなる』




優樹「何これ! こんなの僕じゃないよ!」


志乃「まぁ、恋心を抱くと死ぬ呪いなんて知ったら、普通こうなるわね……」


優樹「志乃さんと関わらない日常なんて平穏なもんか!」


志乃「優樹君……」




   * * * * * * *



「まぁ、何で悩んでるのか詳しくは聞かないけど……」

「お待たせしました。ごゆっくりとお楽しみください」


 目の前に天丼の器が置かれた。カラッと揚がった大きな海老が、金塊を思わせるような艶やかな衣を纏って乗っている。周りに添えられたナスやサツマイモ、大葉やレンコンなどの野菜が彩りを与え、ボリューミーな天丼が完成していた。


「私がど~っんと奢ってあげるから、元気出しなさいよ! 美味しいものを食べれば、大抵の悩みなんてなくなるんだから♪ ほら、たくさん食べて! 辛いことなんて吹き飛ばせ~! あ、デザートも奢ってあげようか? お姉ちゃんが何でも買ってあげる! とにかく頑張れ優樹! 負けるな優樹! お姉ちゃんが付いてるぞ~!」

「姉さん……」




『ブラコン優里』




優里「何これ気持ち悪……私で遊ばないでよ……」


優樹「姉さんもこれだけ明るかったら、今よりもっとモテモテだったかもしれないのにね~」


優里「あ?」


優樹「ひいっ、な、何でもないです……」




   * * * * * * *




「これから一週間、僕は日記を書き続ける。大丈夫、君を恋愛的な意味で好きになることはないから。僕はあくまで友達だから。そしたら死ぬこともないでしょ?」


 自分が死なずに生き残ることで、仲良くなりたかった。そこで、志乃と共にしたことや起きた出来事を日記にしたため、呪いで殺されることなく生き抜いた証拠として残すという。


「もし僕が一週間生き延びたら、僕らは友達。どう?」

「……好きにすれば」

「やったー!」


 この日記が優樹と志乃の心と体を近付けた最大の鍵であったことを、この時の二人は知るよしもなかった。




 そして一週間後、優樹は遺体となって発見された。




『友達にすらなれない』




優樹「こんなの嫌すぎるだろ!」


志乃「この時もよくしぶとく生き残ったものね」


優樹「しぶとくって……」


志乃「……まぁ、嬉しかったけど」


優樹「えっ……///」




   * * * * * * *


※志乃との思い出を凛奈に話す優樹


「それでね、明日一緒に映画を見に行くことになったんだ」

「は? 映画!? 優樹、あなた17でしょ? まだ高校生のガキの分際で調子乗ってんの? いつもいつも遊び呆けて……このろくでなしの穀潰しが! そんなに遊んでる暇があるんだったら、少しは勉強しなさいよ! この間のテストも散々だったし、あなたからはやる気ってものが感じられないわ! これから外出禁止、テレビもゲームも全部禁止! もちろん明日映画に行くのも禁止! いい加減まともな成績取って、少しは我が家に貢献しなさい!!!」


「は、はい……」

「聞こえない!!! 返事はもっと大きな声で!!!」

「はっ、はい!!!」




『凛奈がスパルタすぎる』




凛奈「ひぃぃ……こんなの私じゃないよ~。安心してゆうちゃん! ママ、ゆうちゃんをいじめたりしないから!」

優樹「う、うん……(正直、これくらいはいかないとしても、もっと厳しくするべきだと思うんだよな……自分で言うのも何だけど)」


   * * * * * * *


※鳳山で優樹にカレーを振る舞う志乃


「はい、できた」

「ありがとう! いただきます!」


 志乃さんがよそってくれた皿を手に取り、僕は思い切り頬張った。家庭で作るより少し甘めに味付けられていて、疲れた体に一気に染み渡る。小さなクッカーで作られていながら、野菜やお肉がしっかり煮込まれていて、柔らかい食感が毛布をかけてくれるように味わい深い。


「美味しい! けど……なんかこのお肉、少しほろ苦いような……」

「……ごめんね、優樹君」




『呪いを押し付けようとする志乃』




優樹「本編のあのシーンを知ってるから、意味がよく分かって嫌すぎる……」


志乃「作者さんも、おふざけにも程があるってのを理解してほしいわね」




   * * * * * * *


※辰夫に宇累家に連れてってもらう優樹と志乃


「泉様、先程ご連絡申し上げたお二方をお連れ致しました」

「ありがとう、神野さん」

「え、片桐……佳代子さん……?」

「あら、その名前、知ってるのね」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 なんと、泉さんの顔を見てみると、先日雑誌で見かけたあの片桐佳代子さんとそっくりだった。いや、そっくりではない。正真正銘本人だ。


「佳代子さん! 俺、あなたの大ファンです!!! どうか俺と結婚してください!!!」

「照也君!? なんでここにいるの!?」




『照也がガチ恋勢』




照也「何だよこれ……」


星羅「せやせや! 何やこれ! 照也と結婚すんのは私やで!」


照也「……は?///」


星羅「あっ……///」


泉「あらあら♪」




   * * * * * * *


※期末テスト後に苺スイーツ専門的に集まる優樹、志乃、星羅、照也


「なぁなぁ、夏休みにこのメンバーでどっか旅行行かへん?」

「お、いいね~」


 期末テストを終え、約二週間ほどの授業を乗り越えたら、僕ら学生が渇望する夏休みが待っている。甘いものパワーでテンションが上がった星羅さんが、なかなか面白いことを提案してきた。


「旅行……ダルい……」

「は? 相変わらずノリ悪いなぁ……。ええで、人んこと散々見下して罵倒しとる道徳心皆無のクソビッチは一緒に来んでも」




『星羅と志乃がいつまでもギスギスしてる』




星羅「私こんなこと言うキャラやないやろ!」


志乃「分かってるわ。あんたが本当は凄く優しい子だってこと」


星羅「志乃……」




   * * * * * * *


※熱海旅行中に雄三と会う優樹と志乃


「今日は志乃ちゃんに伝えたいことがあるんだ」

「はい……」

「君を好きになった男はみんな死んでしまう。だが、僕は不老不死の厄を抱えていて、絶対に死ぬことはない」

「ちょっ、雄三さん……まさか……」




「志乃ちゃん、君のことが好きだ。僕と付き合ってくれ」




『被恋慕死別の呪縛、ついに敗れる?』




雄三「ははっ、僕と志乃ちゃんだと、131歳差恋愛になっちゃうね~」


優樹「だっ、ダメです! いくら雄三さんでも、志乃さんは絶対に渡しません! 志乃さんは僕が絶対に幸せにするんだから!///」


志乃「優樹君、大きな声で言わないでよ……///」


雄三「安心しな。志乃ちゃんを幸せにできるのは、優樹君だけだから」




   * * * * * * *


※居合対決をする優樹と泰士


「よーい……」


 いよいよ勝負が始まる。静まり返る公園内に、一陣の風が横切る。一層緊張感を漂わせ、僕の頬をつたう汗を押し流す。肝心の志乃さんは、心配そうに僕らを見つめる。そんな彼女の不安な心を、他の誰でもない僕が守ってやりたい。泰士君に奪われるわけにはいかない。


 絶対に……負けたくない。


「始め!!!」


 ダッ!


 合図と共に、僕と泰士君は駆け出した。


 ガッ!!!




 その後、優樹は遺体となって発見された。




『殺っちゃった』




泰士「俺を殺人者にしないでくれ」


優樹「そうだよ! 泰士君は強くてカッコ良くて、優しくて思いやりのある凄くいい人なんだから!」


泰士「……」


 志乃が自分ではなく優樹を選んだ理由を、何となく察した泰士だった。


   * * * * * * *


※優樹達の高校を襲撃した上條


「うひひひ……」


 しかし、上條は僕に銃口を向ける。まずい……気付かれるのが早すぎた。この位置は余裕で射程距離に入っている。高速で飛んでくる銃弾を回避するなど不可能だ。


 ヤバい……死ぬ……殺される……


 待って……まだ……志乃さんに……


 ドンッ!!!




 その後、優樹は遺体となって発見された。




『優樹、どう足掻いても死す』




優樹「ちょっと、何回死んでるんだよ!」


志乃「極めて何か生命に対する侮辱を感じるわ」




   * * * * * * *


※退院パーティーの夜、志乃の部屋に向かう優樹


「えっと、入るよ?」


 怖いくらいに静かだ。部屋の電気が点いていない。微かに住宅街の街灯の光がカーテン越しに届いているだけだ。本当に寝ているのかな。志乃さんは大丈夫だろうか。僕はゆっくりとドアを開けた。


 志乃さん……?




「んん……あぁ、ごめんなさい……ちょっと疲れて寝てたわ」

「あ、起こしちゃってごめんね。みんな下で待ってるよ」

「ええ……」




『あったかもしれない未来』




優樹「これのどこが嫌なんだよ!? 作中屈指のトラウマシーンだよ!? 本編より絶対こっちの方がいいでしょ!」


志乃「確かに、この展開は結構批判食らってたわね」




   * * * * * * *




「浅野優樹さん、あなたは宮脇志乃さんを妻とし、健やかなる時も病める時も、生涯愛し合い、共に助け合って生きていくことを誓いますか?」

「はい、誓います!」


 あれから10年の時が流れた。僕や悟さん、他のみんなは研究に研究を重ね、遂に被恋慕死別の呪縛が解かれた。僕は死を恐れることなく、堂々と愛を誓うことができるようになった。志乃さんも呪いから解放され、人々を死の運命に巻き込む心配がなくなった。


 そんな彼女は今、綺麗なウエディングドレスに身を包み、僕の隣に立っている。


「宮脇志乃さん、あなたは浅野優樹さんを夫とし、健やかなる時も病める時も、生涯愛し合い、共に助け合って生きていくことを誓いますか?」

「はい、誓います」


 ここまで長い道のりだった。もう僕らを邪魔する脅威は何もない。


「優樹君、私と結婚してくれてありがとう。大好きよ……」

「僕も、いつまでも愛してるよ……志乃さん」


 僕は志乃さんのウェディングベールを上げ、彼女の柔らかい唇に自分の唇を重ねた。




『あったかもしれない未来2』




優樹「うぅぅ……だから……これのどこが……うぐっ……嫌なん……だよ……」


志乃「優樹君、鼻水と涙が凄いわよ……」


悟「ほんと……なんでこうならなかった……」


志乃「お父さんまで!?」




   * * * * * * *




優樹「もう終わりかぁ……もう少し見ていたかったのになぁ~」


志乃「振り返ってみると、私達のお話って結構いろんなことがあったのね」


優樹「ほんと、色々あって楽しかったよね!」


志乃「まぁ、優樹君と一緒だと退屈しないわね」


優樹「えへっ、これから新しい作品がどんどん公開されて、僕らのお話が古くなっちゃっても、読者のみんなに忘れられないように頑張ろうね! 志乃さん!」


志乃「ええ、こちらこそよろしく、優樹君」




優樹「それじゃあ……」


志乃「これからも『恋心日記』を……」




優樹&志乃『よろしくお願いします!!!』


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