影猫物語
粋狂
スーパーぬっこ!
第1話 始まり
溶けていく。
お風呂に入ったときのような、温かく、心地よく、動くのが
自分と水の境目が無くなったような感覚。
グラスからこぼれた水のように、どこかへと広がっていく。
深い暗闇に何かが映っている。
色も、形もあいまいだけど、戦っていることだけは分かった。
そこに淡い光が見えた。
今にも消えそうな光。
何となく、その光が消えて欲しく無くて、何故か体が動いた。
意識を失う寸前「にゃー」気の抜けた猫の声が聞こえた気がした。
☆★☆★☆
名前はクローク。
自分がもしそうなったら言いたい言葉ナンバー1桁台に行くだろうフレーズを言えるようになった。
正直言って状況としては理解不能であり、何がなんだか分からないが不安も不満も無い。
何故なら飼い主が可愛いからだ!!!!
目が覚めたら一緒に居た飼い主の
年は恐らく高校生か大学生かと言ったところ。
大きなおめめに透き通るような白い肌。何よりいいのはその庇護欲をそそるような小動物のような雰囲気!
前世ではお近づきになれなかったほどの美のつく少女。
そんな人が自分のお世話をしているんだから不満なんてありはしない。
生まれたばかりだったのか、意識を取り戻した後に鏡を見た時は真っ黒の毛並みをした可愛らしい子猫だった。
自分で見ても可愛いその姿に飼い主はメロメロで、何をするにしても監視がついていたのが一週間ほど前。
元人間であるクロークに死角はない!
一週間の間にどれほど賢いのかを見せつけたのだ。
まずはトイレを覚えることから始め、ドアを開けるのも当たり前の様にこなし、外出時に御主人の忘れ物を咥えて玄関に持っていくところまで。
イケてる執事猫として出来ることは全て覚えた!
そのたびに「かわいいねー」「うちのクロークちゃんは賢いねー」と話しかけられるのがどれだけ嬉しいか。デレデレとした美少女の笑顔が自分に向けられているということが何よりも至上なのだ。
何をするにしても飼い主に付いていき、役に立つ執事猫としてアピールを続けた。
なにやら買い物に向かう飼い主のバッグに忍び込み、スーパーの中でバレてしまい怒られることがあった。
とても反省したクロークは隠れることを覚えた。
次に友達とのお食事に向かうルンルン気分の飼い主。その後を付けていると、飼い主を見失い迷子になることもあった。
とても反省したクロークは散歩をいっぱいして道を覚えた。
GPS機能付きの首輪を付けられたクロークは、飼い主がついにペットを入れる専用のあのかごを買ったので合法的に外へ一緒に出れるようになった。
行き先が病院だったことからクロークは激怒した。必ず、かの
そして今日。
病院の経験から、かごを徹底的に拒否をして隠れて飼い主に付いていくこと五回ほど。
とうとう飼い主はケージを購入し、クロークを閉じ込めた。
「ごめんね、今日は絶対ついてきちゃダメなの」
「シャア!」
「そんなに鳴いてもダメなものはだめ」
「にゃーん」
「可愛くおねだりしてもダメ!」
子猫の必殺技である、腹見せ上目遣いの必殺コンボも効かず、飼い主はどこかへ行ってしまった。
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