第7話
私と彼女が会わなくなったのは、完全に一方的に私の事情だった。――他でもない私自身が、彼女同様に不登校になってしまったからだ。彼女の弟を経由して私は彼女と出会ったという話を読者は覚えているであろうが、その仲立ちとなった友人と疎遠になったのも大きな理由だったが……何にせよ、合わす顔がないというのが当時の私の感覚だった。それに、私が彼女の家に遊びに行った時、彼女の母親が言った
「二人きりでは遊ばせられないから」
という言葉の後味の悪さについても、私は未だに強く覚えている。私は身体が大きいし、それが理由で学内で様々な指導をされた過去もあり、自分自身の加害性。誰かを無意識で傷つけてしまうのだろう、という感覚を、先の言葉はさらに強めたものだった。
私にとって彼女はとても大事な存在だった。
だからこそ……などと言ってみたところで、結局どのように言を弄してみても、それは全て言い訳にしかならないだろう。
私に人を愛する権利はないと思っていた。――それはつまり、愛する覚悟がなかったということではないのか。
私は加害的だ。――結局のところ、お前は傷つけたくないと話すことで、傷それ自体の価値を過大評価して、相手を傷つけたくないという以上に、自分が傷つきたくないというお前自身の本性を覆い隠すため、その言い訳として自分自身の加害性を持ち出しているに過ぎないのではないか。
私は後悔している。――それが本音だろう。けれどもそれも結局、逃した魚は大きいというだけの話を、さも美しい思い出のように、吟遊詩人を気取って語ることで美化しようという、一種の強迫観念が齎す作用ではないのだろうか。
当時の私とある種の対話をすれば、このようになる。相互に一方通行で言を発することが出来るから、このように相互に会話のようなものを構築することが可能となるが、きっと当時の私と今の私が出会ったならば、それはもう類を見ないほどの大喧嘩になるであろうということは想像に容易い。それぐらい、当時の私と今の私は違った存在となっていた。それが誇らしいことであるか否かは定かではないけれども、そうした変化と時間の蓄積がなければ、今書いているような一連の、小説かどうかも分からない独白じみた文章を書き連ねるような"覚悟"を持つことはできなかったであろう、と思う。……
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