最終話:思わぬアクシデント。
「
バーチャリアイドル「サキノ・コトネ」がネットのホコロビから現実世界へと
やってきた。
漫画や小説の中だとこう言うパターンは、もうよくある話かもしれない。
でも実際にはそんなことが起こるはずないし起きたなんて話も聞いたことがない。
あまりに非現実的、あまりに非科学的・・・こんなバカなことが起こることに
なんの根拠もない。
ただの相対性理論に他ならない。
だけど正平の家にはコトネが確かにいて、なにくわぬ顔で人間の女の子として
暮らしている・・・正平の彼女として・・・。
だけどコトネが家でブラブラしてると、コトネが正平の同級生だと思ってる両親に
学校にもいなないで変だって思われる。
そこで正平は、コトネに制服を着せて一緒に学校に通いはじめた。
たいがい一人や二人の生徒は学校を休んでるからコトネの席は確保できた。
休んでるやつの席に座らせてればいい。
朝の挨拶の時、先生は点呼を取るがコトネは存在しないことになってるから
コトネの名前が呼ばれることはない。
ちょっとやっかいだったのはコトネがバーチャルアイドルなんじゃないかって
疑ったヤツがいたことだったけど実際に現実世界にバーチャアイドルなんかいる
わけないから、全面否定したら、そりゃそうだよなって納得するのか誰もそれ以上突っ込んで来るヤツもなくスルーされた。
コトネはつまんない授業が嫌でずっと寝ていた。
AI搭載してるんだから、高校の授業なんかレベルが低すぎて退屈に違いない。
休みの時だけ正平の席に来て、ひっつき虫みたいにへばりついていた。
まあ、そんなだからすぐにクラスの噂になるわけで・・・。
正平とコトネはデキてるって・・・デキてるんだけどね。
あまり大きな噂になったら、いずれ先生にも知れるし学校中にも知れ渡ること
になる。
そうなると面白半分に隠し撮りした正平とコトネのツーショットをSNSになんか
投稿するバカが出てくる。
そうなるとコトネのことが世間にも知れ渡ることになる。
それはマズい・・・コトネと静かにラブラブで過ごしていたかった正平には迷惑
極まりない話だ。
「あのさ・・・僕が学校へ行ってる間のことだけど、コトネを家に置いておくと
親に変だって思われると困るし、かと言ってコトネがこのまま学校にいたら揉め事
のもとになりそうだし、コトネを作った企画会社の人にだってコトネが現実社会にいるって知ったら・・・まあ、そんな話は信じないとは思うけど・・・でも万が一コトネのことを確かめにでもやって来ないとも限らないだろ?」
「せっかく正平ちゃんと仲良く暮らしてるのに私、会社に連れ戻されなくないよ〜」
「分かってるって・・・だからそうならないようにさ・・・そこでね・・・」
コトネのことを内緒にしておきたかった正平はコトネにネットのホコロビから
一時的にネットの世界に帰っててくれるよう彼女に言って聞かせた。
素直なコトネは正平の言うことを聞いてネットの世界に帰って、正平が休みの時だけ、やって来て大原家で正平とラブラブするってパターンを繰り返してした。
正平もこれがベストな選択だと安心していたら・・・だ・・・。
ネットの世界も定期的に構築されれ行くわけで、コトネがネットの世界で徘徊してる
間にホコロビが綺麗に修復されてしまった。
なもんだから、ウハウハで正平に会いに行こうと思ってたコトネはネットから出られなくなってしまった。
ホコロビができるまで何年待たないといけないか予想がつかなくなったコトネ。
正平とはもう会えない・・・コトネは落ち込んだ。
ネットのホコロビからいつまで経っても出てこないコトネ。
一週間経っても二週間経ってもコトネは現れない。
だから正平はコトネに何か良からぬことが発生したのかと心配した。
なら、以前みたいにパソコンでコトネと話せないかコトネを呼び出してみた。
そしたら思った通りコトネはバーャルイアドルに戻っていて、ホコロビが修復
されていて正平のところには戻れないことを聞かされた。
ふたりにとっては思わぬアクシデントだった。
こればかりはいくら正平が頑張っても頑張りようのないことだった。
正平がネットの世界に行ってコトネを連れて帰って来ることができない以上
どうしようもない・
思い返せば正平にはコトネが現実世界にやって来たことがまるで夢の中の出来事
だったような気がした。
そう言う訳で、正平はコトネがいつか自分の元に戻って来ることを信じて、毎日
パソコンの前でコトネとディスプレー越しに擬似恋愛をしていた。
ネットの中のホコロビがまた出来るまで・・・。
おしまい。
ポンコツVIO「サキノ・コトネ 」 猫の尻尾 @amanotenshi
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