異世界転生の導入で遊ぶ
龍田乃々介
第1話 転生させてくれる女神が「神」だったら
「あれ……ここは?学校では根暗な陰キャとして通っていてクラスの陽キャにたまにパシリに使われるけど女子からはさりげない優しさが密かに好評を博している僕はたしか、下校中にトラックに轢かれそうだった女の子を助けて、それから……」
「汝、上木カズキ。在り得べからざる夭死せり」
「だ、誰……!?」
声のした方を振り向くと、真っ白な空間に階段と玉座みたいなものが置かれており、そこに白い布の服を着た女神さまっぽい人が座っていた。
「哀れにも命絶やせし者。優渥なる慈悲と慈愛の女神ディータ・イドカが汝に発言を許す」
「ほんとに女神だった。あのー、ここってどこ?僕死んだんだよね、これからどうなるの?」
女神は組んでいた足を組み替えると、ふんぞり返って僕を見る目を細めて答える。
「不遜にも我を敬わぬ者。寛大なる慈悲と慈愛の女神ディータ・イドカが汝の無礼を許す。汝、上木カズキは煩瑣極まる運命の綾が成した数奇な絡まりにより、慈悲たる我に哀憐を誘った。神の約束は汝に75の春、75の夏、75の秋と74の冬があることを祝福したが、既済すること能わず。故に、此度の謁見許されり。我は汝に趣異なる世界における新生と繁栄を齎す者である」
「難しい言葉が多くてわかりづらいけど……もしかして、神様の手違いで早く死んだ僕を、異世界転生させてくれるってこと!?」
「不敬ながら理知に長ける者。神聖なる慈悲と慈愛の女神ディータ・イドカが汝の理解に慶びを……」「それって、チート能力とか貰えるやつ!?やったぁっ!!」
興奮のあまり、女神さんがなにか言っているのを遮って叫んでしまった。
だって仕方ない。これはつまり、夢にまで見た異世界転生だ!きっと僕はこれから最強の魔法のスキルを授かったり、最強の剣のスキルを授かったり、最強の錬金スキルを授かったりして、厄介な冒険者や魔物に困らされたりしつつも露出の多い美少女にチヤホヤされて領主様とか王様とかお姫様とかに愛されてゆくゆくは領地をもらったり結婚を迫られたり
「愚蒙にも我を軽んじる者。絶対なる慈悲と慈愛の女神ディータ・イドカが汝の妄りなる空想を
「えっ……?」
…………あれ、なに考えてたんだっけ?
「上木カズキ。清らなる心持て哀しき死受けし者よ。問おう」
それまで玉座でふん反りかえっていた女神さんは、立ち上がって階段のすぐ手前まで歩いて来て、下にいる僕を見下ろしながら言う。
「二生あらば何事をや成さん。至高たる慈愛と慈悲の女神ディータ・イドカの祝福を以て、いかなる神事をや成さんとする」
「それって……つまり、チート能力を貰って異世界転生したらどんなことをしたいかってこと……だよね?」
うーん、悩むな……。チート能力で無双はしたいけど、あんまりやりすぎると貴族の政争に巻き込まれたり戦争の道具にされたり、教会から吊り上げられたりって展開はよく見るものだし……。そう考えるとあまり表だって使えないのか。
ということは……。
「やっぱり、田舎でゆっくり静かにスローライフとかがいいかなあ。チートスキルで楽楽開拓して快適な暮らしを作って、いずれは困ってる女の子を助けて自分の家でくつろいでもらったり、それで、仲良くなったり……あ、でも偶には人と魔王の勢力争いとかに巻き込まれてもいいかもね?最後には突っぱねちゃうと思うけど。へへ」
「……神威を己が欲に終始させんとする者。厳酷なる慈悲と慈愛の女神ディータ・イドカが、汝への慈愛を禁む。
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