第5話計画と友達
月曜日がいつもの月曜日とは、違った感じがしている。
校門の前には、治、利香さん、栞さん、一花さんが待っていた。僕の隣には、笑梨がいる。
「笑梨ー!。久しぶり元気だった?」
「栞、苦しい…」
「元気そうで何よりだな、笑梨も龍太郎も」
「龍太郎君、笑梨と仲直りできたみたいでよかったよ」
「栞さん!笑梨ちゃん倒れちゃいますよ?!」
いつものみんなが戻ってきたみたいだ。騒いでる栞さんを利香さんが大人しくさせて、それを見て治が笑って、笑梨と一花さんが話題を出している。いつものみんなが揃って自分の目の前にいる。
面白すぎる日常が帰って来た、そう思った。
「そうだ龍太郎、今日『あれ』やるんだよな?」
「うん、みんなこの前メッセージで送ったのお願いできるかな?」
「「「「もちろん!」」」」
純兄さんが考えた、翼先輩に勝つための最善の策を今日決行する。決行するのは、昼休みだったので午前中は、普通に授業を受け昼休みに、一花さんと裏庭に来た。前回同様に、ベンチに座り話してる風にする。
「龍太郎君、本当に生徒会長は来るんですか?」
「さっき笑梨が、生徒会室に先輩と仕事をするって呼び出したからここを絶対に通るはずだよ」
翼先輩なら、絶対に僕たちが二人でいるとこをを見逃さず接触してくるはずだ。
僕は、その時思った。今回の作戦は、確かに先輩に勝つためのものだけど失敗したときの一番の被害者は、一花さんなんじゃないだろうか。いつもの僕なら、ここで一度作戦を中止していただろうけど今回は、一花さんをみんなを信用してそのまま実行した。そのとき校舎のドアが開いた。
「おやおや?。この前ひどい目にあったのにまたイチャついているのかい?。やっぱり四条君と笑梨は、もう仲が戻らないようだね。僕は、笑梨に呼ばれてるから急がないといけないが笑梨に何か伝えとこうか?」
会って早々この調子で人をバカにできるんだから逆に天才だ。でも今回は、僕が勝たせてもらう。
「じゃあまず先輩に質問です。笑梨に会ってどうするつもりですか?」
「そうだねぇ。まず四条君と横の女の子がまたイチャついているって報告をしなきゃね」
条件の一つ目は、クリアしているようだ。先輩は、まだ僕たちが仲が悪いと思っているようだし。
「勝手にすればいいんじゃないですか?」
「とうとう開き直ったね。じゃあちゃんと報告させてもらうよ」
罠にかかってるとも知らずに勝ち誇った顔でこっちを見ている先輩が、バカに見えて仕方がない。
「それじゃあ僕は、もう行くね」
最後に僕たちの写真を撮りながら生徒会室に向かっていった先輩を追いかけることにした 。
「久しぶり笑梨。待たせちゃったかな?」
先輩は、さっきと違って明るく笑梨に話しかけている。そこまでして笑梨にいい顔をしたいのだろうか。
「遅かったですね」
笑梨は、先輩と打って変わって落ちいて少し冷たく返している。先輩は、それを気にしないようにニコニコとしている。
「さっき四条君と彼女さんがイチャイチャしてるのを見て、少し説教してきたんだよ。ほら写真」
さっき撮った写真を証拠としてみせているようだけど笑梨に効果はない。何なら、逆効果になりかねない。
先輩は、僕のことをいろいろと悪く話し始めたけど聞いている笑梨の目が段々と怖くなってきたのに、なぜそれを気づかないのか。笑梨をみた一花さんの方が恐れているぐらいなのに。
でもここから今回の作戦がちゃんと始まる。
「えぇまたリュウ君と一花ちゃんですか…。なんかほんと二人とも嫌いになってきそう」
「ほんと笑梨がかわいそうだよ。でも僕は、ずっと笑梨が好きだけどね」
ウインクをしながらのセリフが、キモ過ぎて何とも言えなくなってきた。
「ほんとですよね私は、前からリュウ君のこと好きなの気づいてほしかったのになー!」
なんか先輩と話してるっていうより僕に言われてる気がしてきた。正直いって笑梨からの好意には、もう気づいている。
「僕なら、笑梨を悲しませたりなんかしないよ?」
そんな言い方をする男って現代社会にまだ生きていたなんて、絶滅危惧種か何かなのだろうか。
「ほんとですかー?。先輩なら私のために何してくれるんですか?」
「そうだな…。笑梨に近寄るめんどくさい男をなくしてあげるよ」
それを聞いた僕は、こう思ってしまった。いつもやっているようにだろうかって。
「ほんとですか?!。でもどうやって?」
「今までもやってたけど悪い噂を流すんだよ。僕は、いろんな女の子からモテるからちょっと話したらすぐに情報が広がるからね」
ホントにバカなのだろうか、何でそんなことを普通に話してしまうのかあきれるばかりだ先 。輩は、自分が今までにやってきたことを正義であるかのように笑梨に話し始めた。
「笑梨は、もてるからね僕以外の悪い虫がつかないようにいろんな手を使ったんだけど四条君だけが排除できなくて、少し細工させてもらったんだ。今は、知らないけど前回の写真は、角度を変えて撮ったフェイク写真なんだ。四条君とあの女の子が、笑梨に近づけないようにしたんだ」
「そうなんですね…。だってさリュウ君、一花ちゃん」
「は?」
笑梨からの声がかかったので、ドアの隙間から話を聞いていた僕たちは、生徒会室に入ることにした。
中に入ると先輩は、想定外の出来事だったのだろう口を開けて固まっている。でもこれが僕たちの狙いじゃない。
「どういうことだよ…。何で四条君がここに、いつから聞いてたんだよ」
「一番最初からですよ。先輩が笑梨を口説こうとしてるところから」
先輩の耳が赤くなってきた。人は、怒るとき特有の感じが出るが先輩は、耳が赤くなるみたいだ。
「笑梨知ってたの?」
先輩は、目を丸くして笑梨に聞いた。
「もちろんです。先輩よりリュウ君たちの方が信用度高いんで」
本当に面白い、一番信用していた人に裏切られて人って生き物は、ここまで表情出るもんなんだなと思い知らされた。
先輩の顔は、信じられないほど絶望に近い顔になっていた。僕は、笑いをこらえるのに必死だった。
一花さんは、ヤバいことになりそうだと顔が引きつっているが。
「お前ら組んでたのかよ!。人のことバカにしやがって、俺の計画が台無しじゃねぇか!」
いきなりの怒りモード見たことがなかったものが目の前に現れると、よく観察してしまう。怒ると人って一人称も変わってしまうんだな。
「計画って何ですか?」
「決まってんだろうが!笑梨は、どの年代からもモテるんだぞ?。そんな女と付き合ったら、俺の鼻が高くできるじゃないか。でもずっとお前がついてるから、やっと離れたと思ったのに俺をはめやがって!」
やっぱりそんな理由だったか、そっちのほうが人をバカにしてるじゃないか。しかも僕は、ただ幼馴染と仲良くしてるだけで巻き込まれてるんだから被害者は、こっちだろ。
僕の考えてることが顔に出ていたのだろうか。先輩は、僕の胸倉を掴みかかってきて拳を振り上げた。僕を殴る気だろうか。
その時だった、ドアが開いて一人の男子が先輩の腕を掴んだ。
「俺の親友になにすんだよ」
「少し遅いんじゃない?。治…」
治は、いざとなった時に助けて欲しいと待機してもらっていた。でも一度怒ると手に負えない治がまだ理性を保ってるからセーフだろうか。
「なんだよ、四条君…。君こそ卑怯じゃないか?。友達を使って自分は、何もしない君こそ逃げているんじゃないか…」
確かにそうかもしれないと思った。やっていることは、先輩と比べたらレベルは低くても先輩より卑怯かもしれない。
「それは違うんじゃないのか?。龍太郎は、笑梨のために一花のためにやっているんだから私は、卑怯でもいいと思うぜ」
「私も異論はないかな。龍太郎君があそこまで落ち込むのも見たことなかったからびっくりしたし。逆に言えば私は、栞や治の頼もしさを再認識したかな」
治に便乗するように、先輩の言葉を否定してくれた栞さんに利香さん。二人も治と同じように僕の計画に協力してくれた。利香さんは、スマホをこっちに向けながら話している。
「今の録画してたんだけどクラスのラインに送っていいですか?。生徒会長さん。」
そう利香さんは、今までの会話を録画していてくれた。先輩が自分のしてきたことを暴
露してそれを録画することが今回の目標だったから。
この録画をクラスに送るか送らないかは、先輩の発言で変わってくる。
「はぁ、自業自得といえばいいのかな。今わかったよ何が僕に足りなかったのか」
先輩の一人称が僕に戻った。怒りが収まって、何なら優しいと言っていいようなオーラをまとっている。
「僕に足りなかったのは、信用できる友達だったな…。友達がいればちゃんと恋愛ができたのかもな」
確かに先輩が女子といるのは、よく見るけど男友達といるのを見たことがない。
先輩は、掴まれていた腕を降ろしてしゃがんだ。
「はぁ、笑梨と付き合いたかったのも友達が欲しかったのかもな。笑梨と付き合えば、男子が話しかけてくれるような気がしてたんだ。そんな考えも他からすれば迷惑でバカだったな」
落ち込んだように自分の言いたいことを吐き捨てる先輩は、いつもと違う。いやこれが本当の先輩なのかもしれない。
僕は、みんなと目を合わせることしかできなかった。みんなも一緒のようだったけど治だけが違った。
「生徒会長よぉ友達が欲しいなら、普通にすりゃあいいじゃん」
治が話しかけると先輩は、上を向いて不思議そうに治の顔を見ている。
「普通にしてりゃあってそれができないから、友達がいないんだろうがよ。僕は、元々の性格が悪いんだらか仕方ないだろ」
「だからぁ俺が友達になってやんよ。性格が悪いのは、みんな一緒なんだよ。話しかけてくるのが友達じゃねぇよ、自分が本気で喧嘩できる奴が友達ってもんなんだよ。俺だって龍太郎と殴りあってから仲良くなって今では、親友なんだ」
懐かしい、高校一年生のころ僕と治が初めて会った時喧嘩をした。何が理由だったかは、もう思い出せないけど小さなことだった。でもマジで喧嘩になって殴り合いになったのを覚えている。
もちろん僕が負けたけど治は、初めて本気で殴り合えたって笑って手を貸してくれたんだった。それから治と治は、親友同士になった。
「そうだぜ。友達ってのは、性別や年齢で決まんねぇよ。本気で分かち合うことができるのも友達ってもんだ。私だってな本屋に漫画を買いに行ったら、龍太郎も同じ漫画を買ってて話したことねぇのにマイナーな話で盛り上がったもんな。それからは、よく漫画の話をするオタク友達だ」
確かにそうだったな。レジに並んでたら、いきなり肩を掴まれてカツアゲかと思ったらファミレスに連れてかれて永遠と漫画の話をした。栞さんは、その漫画しか興味なさそうだったけど教えたらすぐに読んで、感想を教えてきた。今では、栞さんも漫画オタクの友達だ。
「そうだねぇ友達と言ったら、学力勝負で最終的に哲学に入って逆に『これ何?』って聞いてくる面白い人かな(笑)」
どう考えても僕のことだ。一年生のころ利香さんの隣りの席になって、学活の時間問題出し合おうよと言われて問題を出し合っていたら、案外どっちも頭良くて続きすぎて最終的に哲学になったので何言ってるか分からなくなって、出題者の僕が疑問になって「これ何?」てなった時の話だろうな。あの時からよく話すようになった。
「わ、私の友達ってのは、どんだけ話すのが苦手な自分でも安心して話せる人だと思います。例えるなら龍太郎君みたいな」
とうとう指名されるとは。でも初めて一花さんに話しかけた日のことを思い出した。
学校に課題を忘れたから、早く学校に行って一番かと思ったら端の席に女の子が一人小説を読んでいるのを見かけて、何の本を読んでるか見てみたら僕が読んで見たかった本でつい話しかけてしまった。
それからいろいろあって、友達になってもらえたんだろうな。
「私の友達ってのは、大好きな人を守ってくれて、信用できて私のことも大好きで私も大好きな人のことかな。例えるなら、治君と利香と栞と一花ちゃんかな」
僕が入ってないってことは、そういうことなのだろう。でも今ので、この場先輩以外は、友達だあることがわかって安心した。
「先輩…。僕の思う友達は、本気で殴り合えて、本気で漫画の話で語り合えて、問題の出し合いを永遠に続けれて、小説の話を楽しくしてくれる人たちです。そして今からは、その中に自分と本気で恋の戦いをできる人も友達です」
あえて笑梨に当てはまるものを友達として言わなかった。これの意味が笑梨に伝わればいいのだが…。先輩は、少し考えて僕の顔を見た。
「初めての友達がまさかの四条君になるなんてね…」
僕がしゃがんでる先輩に手を出すと先輩は、僕の手掴み握手と同時に立ち上がった。
「龍太郎だけじゃないな。俺の親友が信用して友達になった人は、俺の友達でもあるんだからさ」
「私の姉ちゃん生徒会長の同級生らしいんだけどよ、生徒会長の兄ちゃんから聞いたぜ漫画好きなんだってな。漫画好きは、友達だ!」
「生徒会長さん頭いいらしいし今度問題出し合いましょうよ。でも哲学は、だめですけどね」
「せ、生徒会長さんが図書室で読んでた小説まだ読んでないんですけど感想教えて欲しいです」
治、利香さん、栞さん、一花さんも先輩のことを友達として認めたみたいだった。先輩は、余程嬉しかったのか涙目になりそっぽを向いてしまった。
「いいのか、僕なんかを友達にして。僕は、いつ君たちを傷つけるかわからないよ」
「はぁ、いつまでたっても頑固ですね。それを考慮してうえで友達ってものが成り立つんですよ?。まあリュウ君にしたことは、許しませんけど」
笑梨もなかなか頑固な気がするけど、先輩をみんなが認めた。先輩を友達として一人の人間として。
それから先輩は、僕と一花さんに誤ってくれて僕たちの誤解は、先輩本人が責任を取ってどうにかするらしい。その言葉を信じて僕たちは、録画を消した。
あれから数週間後僕たちの誤解は、あまり聞かなくなったものの不信に思うものは、少しいた。
「あんたさ、翼先輩に何で脅したの?」
「脅したりしてないけど」
キック女から、先輩を脅してもみ消そうとしてると疑われているらしい。疑うにもほどがあるだろ、ていうか僕の話聞けよ。
キック女は、キックの構えに入るので僕も構える。
「おやおやよくないなぁ暴力は、しかも僕の友達に」
「翼先輩!。暴力なんて違いますよー、って友達?!」
先輩を見るなり声を変えやがって。でもまさか僕のことを、友達というなんて考えもしていなかったキック女は、地声が出っていた。
「何かおかしいことを言ったかな。龍太郎君は、僕の友達だよ?」
キック女は、舌打ちをしながらどこかに走っていった。
「大丈夫か龍太郎君。ほら手貸すぞ」
「はい、ありがとうございます」
あの日から先輩は、僕たちの前でだけ素の自分で話せるようになったらしい。そして他人行儀の四条君から龍太郎君に変わったのも友達としての違いらしい。
「まだあんなことをしていたなんてね、生徒会でも新たな問題だ」
先輩は、生徒会の仕事を分担するようになって、極端に笑梨に任せることがなくなったと笑梨からこの前話された。
治たちも先輩と仲良くやっているようで、前まで人を見下しているような先輩の目も普通の目になった気がする。 そしてあれから僕と笑梨の関係も少し変わった。
「リュウ君さぁホント鈍感だよね」
「そ、そだね」
僕たちは、まだ付き合っていない。笑梨からのアピールは、あるのだが僕が踏み切れなくて告白できていない。
それを見ていた治、利香、栞、一花の心の中
「笑梨結構ガツガツ行くなー。龍太郎頑張れよ(笑)!」
「はぁ、龍太郎君も結構奥手だけど、笑梨から告白すればいいのに」
「二人とも仲いいなー」
「なんでこの二人まだ付き合わないんだろう。お似合いなのに」
「ねね、リュウ君夏休み二人で…いやみんなで出かけようよ」
何で言い直してみんなで行くことにしたのだろうか。
「そっちの方がいいよね利香?」
何だろう笑梨がニヤニヤしながら利香さんのことを見て何かを訴えている。
「そうだねぇ」
「いいな!行くか」
何気に治が乗り気になっている。あれ、利香さんが治を見て顔が赤く…。
「あっ、なるほどそういうことね。みんなで出かけようか」
さすがの僕でも理解ができた利香さんは、治のことが好きらしい。確かに前から二人の仲は、良かったのでお似合いだろうな。しかも、美男美女だし治の彼女が利香さんなら、僕も嬉しい。
「あのぉ。翼先輩も誘いませんか?」
これは、僕だけが知っていることだが一花さんは、翼先輩のことが好きになったらしい。でも何で利香さんや笑梨ではなく僕に話したのかは、教えてくれなかった。
みんなで出かけるなら、好きな人がいた方がいいのは、みんな同じようだ。
「どこに行こうか。やっぱりみんなで行くなら、みんなで楽しめるところだしなー。夏休みってのもあるし夏に関係あるところ…」
「やっぱり海じゃね。まあ私も利香も泳げないけどな」
まさかの栞さん泳ぐの苦手だったとは。いつも運動系は、簡単にクリアするので泳ぎも得意なんだと思ってた。
「でも海いいね。じゃあ夏休みみんなで海に行こうか」
「異論はないかな」
僕の周りには、いっつも面白い人がいる。大人数ではないけど本当に僕を信用してくれて僕も信用している友達が。これからも友達でいたい人たちが。
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