第3話 たぬき
「寝てるの?起きて、ほら、おっぱいよ。どうしたの?ねぇ、ねぇ、、。」
ほっぺを叩いても体を揺らしてもガクンガクンするだけ。
必死になってる私を見かねて、どこかの叔母さんが話しかけてきた。
「かわいそうだけどね、この子は死んでいるんですよ。たぶん、あの火の中で息が出来なくなったんでしょう。
ほら、周りをみてごらんさない。貴方と同じようなお母さん達がいるでしょう。」
小さな子供を抱いて泣いてる、泣いてる女の人がいっぱい。
そんな酷いことって、、。私達は子供を守りたくってあの火の渦の中から逃げてきたのに。
空襲も終わり、火の手かおさまったけど、お母さんともお父さんともおばあちゃんもと出会えなかった。
焼け野原になって、まだブスブスと燃えかすが音を立てている。家はどこだったんだろう、、。
そうだ、お父さんが空襲で焼け出されたら目印がいるなぁって信楽焼のたぬきの置き物を東西南北に置いてあったんだ。
瓦礫を退けていったら、割れてしまったたぬきがあった。
四つあったたぬきはみんな粉々になってたけど、たった一つだけは耳は割れて焼け焦げてたけどドシンと座っていた。
それを見たら、気が抜けて私は赤ちゃんを抱きしめて泣いた。
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