あの時の骨

菜の花のおしたし

第1話 長生きしすぎて

私は長生きをし過ぎたと思う。

まさか、80過ぎても生きてるなんて。

夫は先に逝ってしまったし。

最近は動くのも一苦労だし、耳も目も悪くなってきた。

何より怖いのは、あの子の事を忘れてしまうこと。まだ頭がしっかりしてるうちに何とかしなくては、、。


私の家には小さな庭がある。

信楽のたぬきの置き物が主のように鎮座している。

「ねぇ、お母さん、あの古いたぬきをいつまでも置いて置くつもりなの?

耳は割れてるし、あちこち焦げてるし、、。お母さん、新しいたぬきを買ってあげるから、もう、捨てない?」と娘は何度も私に言った。

その度に、適当な返事をして誤魔化してきた。

でも、そろそろちゃんとしなきゃね。


軍手とスコップを持って「よっこいしょーー。」と立ち上がった。

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