?の視点 1
【作者】これから5話毎に?視点の話が入ります。ご了承下さい。
☆☆☆☆☆
「せ、成功したぞ‼︎正に神の御技!我らが主神アルテミス様に深く感謝を!」
視界が急に光ったと思ったら目の前で大号泣する人達。
誰も彼もがアルテミス様アルテミス様と天に向かい手を組み口々に騒ぎ立てる。
周りは先ほどまで授業中だった教室とは打って変わった景色。
天から降り注ぐ陽光に巨大なステンドガラス。
巨大な女性の像に円状の柱に燭台、それを囲む白いロープを着た集団。
壁の前で規則正しく並び立ち鎧のようなものを着て腰に剣を帯剣した集団。
僕は見たことがないけれど近頃噂になっていたアニメの景色に似ているらしく隣の級友2人がコソコソと喋っている。
そんな不可思議な光景に呆気に取られていると目の前にとても綺麗な女性が現れる。
その女性がこの状況について説明し始める。
その結果この世界は元々僕たちが居た世界とは異なる異世界というもので人類と敵対する魔人を滅ぼすために僕ら勇者は召喚されたらしい。
そう、勇者なのである。
僕も可愛らしいスライムが出てくる例のクエストなるゲームが好きだったので勇者という単語には惹かれる。
けれど実際に戦うなんて怖い。
文字通り命のやり取りをするなんてゲームとは違う。
痛いのは嫌だし死ぬのなんてもっと嫌だ。
それにはもちろんクラスのみんなも反対する。
「ふざけるなよ!勝手に召喚だかなんだかして戦えなんて!俺らをなんだと思っているんだ!」
「そうよ!なんで私たちが戦わなきゃならないの!?そこの壁に突っ立ってるやつらにやらせなさいよ!剣なんて持ってるんだし!」
「僕たちが戦うなんて出来るわけないじゃないか!早く元の世界に返せよクソ!」
口々に騒ぎ立てるクラスメイトたち。
罵詈雑言も含まれたそれは怒気を超えて殺意を含むものも混ざっている。
けれどそんな中僕は逆に冷静になっている。
クラスのみんなが必死になってるのを見て
逆に冷静になってしまった。
そもそも僕らは過程はどうあれこの世界、異世界に呼び出されてしまった。
帰る手段を僕らが持ってる訳もなく、彼らが持っていたとしてもわざわざ呼び出してすぐ返す訳もない。
僕らには主導権はなく、生殺与奪の権は向こうが持っている。
壁一列に並び立つやつらがそれを示す証拠だろう。
僕らは丸腰で戦いなんて経験したことのないど素人。
向こうはおそらく戦闘のプロ、しかも剣に鎧。
勝ち目なんて万に一つも無い。
そして遂にクラスの中でも不良として目立つ石崎が物凄い形相で女性の前に立つ。
その瞬間クラスメイトたちの期待の視線が向く。
普段は忌み嫌われているのにこういう場面では手のひらを返すのは人間の悪癖だなと場違いながら思う。
「おぃ女ァァ、痛い思いしたくなきゃさっさと返せよクソがっ‼︎あーあーやってらんねぇなぁ!?犯すぞっ!?あぁ!?」
そう言って未だ無表情を貫いている女性に手を伸ばす。
これには流石に顔を顰めるクラスメイトたちもいたが次の瞬間には全員固まってしまう。
その手が後数センチで届くというところで石崎の手首から先が突如なくなり血が勢いよく噴き出したからだ。
数瞬後石崎の手だと思われるものが壁に思い切り叩きつけられ音を立てながら地面に落ちる。
「…はっ?あ?え?へ?う、うぎゃあぁああぁぁっ!?お、俺の手が!?俺の手が!なんでっ!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィィィィィィィ!うがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そう叫び憤怒の形相で女性を睨め付ける石崎。
痛みで蹲り普通なら動けないだろう場面でそれが出来るだけ立派なのかもしれない。
しかしそれも次の瞬間には声が途絶える。
首から上が綺麗になくなり首無しの体が地面に倒れる。
その隣にはどこから現れたのか片手に石崎の顔を持った爽やかなイケメンの姿。
長い金髪を後ろで結びニコニコとした笑顔を貼り付けている。
体と髪に返り血を浴びながらも笑っているその様は今起きた出来事が幻のように感じられるが、それも手にぶら下がって生気を感じさせない石崎の顔を見て思い直す。
「姫様が分かりやすく説明しているのにあーだこーだ言うだなんてちょっと酷いっすよ?それに加えて数々の罵詈雑言、おまけに今こいつがしたみたいに手を出そうとするなんて。
おたくら自分らの立場わかってるっすか?
今はこいつだけで勘弁しますけど次また同じようなことがあったら許さないっすよ?」
「ユーリーン団長、もういいですよ。私は大丈夫です。下がりなさい。」
「分かりましたっすー。」
そう言って首を投げ捨ててから列の中に戻るユーリーン団長という男。
それらのやり取りを見てクラスメイトたちも危機感を感じたのか大人しくなる。
それを見て改めて満足そうに頷く姫と言われた女性。
「ではみなさん、よろしくお願いしますね?」
僕たちはそれに対して頷くしかなかった。
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「ひゃっー!あのイケメンすごかったよな鳴海!流石の俺でも見えなかったわ!凄すぎね?」
「はー、相変わらずだね優吾。そんなに?」
「もちもち!ありゃ多分この世界でも相当強い部類だと俺は見るね、勘だけど。」
「まぁそこは疑わないけどさ。それよりもこの後スキル発現の儀があるのか、緊張するなぁ。」
「まぁどんなスキルもらっても俺は俺だし、お前はお前だ。一緒に頑張ってこうぜ。」
こいつは僕の親友の優吾。
剣道、薙刀、総合格闘技、その他にも武とつくものの天才。
昔からの剣術道場の時期当主で先祖が有名な侍らしく物心ついた時から剣と一緒にあったらしい。
あまりにも強いもんだからテレビに出てしまってその企画で優吾vsクマ、ライオン、ゴリラと木剣で戦って無傷で勝ったことでも有名。
そんな化け物高校生が僕の親友なのはちょっとした自慢でもある。
本当は槍が一番得意らしいんだけど剣の方が好きっぽいんだよね、変わってるかも?
とまぁそれは置いといてこの後スキル鑑定があるんだ。
なんでもこの世界の人たちはスキルという力がありそれを使って魔人や魔物と戦うみたい。
魔法もあるらしいからそれが一番の楽しみでもある。
こんな殺伐とした世界に来てしまったけれど魔法に罪はない。
敵を前にして「我が眼前の敵を薙ぎ払え!イオ⚪︎ズン!」とかやってみたい。
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「それではこれよりスキル発現の儀を始める。」
白いロープを着た偉そうなおじさんが喋る。
スキル鑑定は皆がいる場でやるんじゃなくて個別でやっていくらしい。
スキルには当たり外れが多いらしくそれが原因で勇者同士で争いになることがないようにという配慮らしい。
後天的にスキルが手に入ることもあるらしいけどそれはとても大変らしい。
例えば剣を魔物相手に振り続けたらいつかは剣術のスキルが手に入る、けれどものすごく確率が低いということだ。
だから並の騎士が魔物相手に戦い続けても一生で良くて1.2個、悪くて何も貰えないらしい。
もちろん素振りを続けたりとかでも剣術スキルが手に入るとかはあるらしい。
ただそれでも授かれると言われれば分からない。
だからこそスキル発現の儀で貰えるスキルが重要なのだと熱く語られる。
勇者はその点強いスキルを授かりやすいらしく安心してもいいのだとか。
やっぱりちょっと不安だったところがあるからそれを聞いた時は安心した。
「お互い良いスキルが貰えるといいな!鳴海!んじゃちょっくら行ってくるわ!お先に!」
「うん、頑張って良いスキル貰えるといいね優吾。」
そう言って隣にいた優吾を送り出す。
まぁ優吾のことだからあまり心配はしていない。
戦いに関しては文字通り化け物なんだから、それに直結するスキルも豪運で引き寄せるに違いない。
しばらく待つと部屋から優吾が出て来た。
それに気づいて声をかけるととても興奮したテンションで返してくる。
「おう鳴海!やべーよやべーよ!俺神スキル貰っちまった!どーよこの俺の豪運!がはははは!」
「えぇ!?それは凄いね!どんなの貰ったの!?」
「聞いて驚けよ?なんとびっくり!身体強化(神)だ!」
それを聞いて目を見開く。
既に技術が高い優吾が身体強化の最上級ランクである神を授かったならもう敵なしなんじゃないだろうか?
むしろ可哀想にまでなるかもしれない。
この世界の魔人は人よりもステータスが高くなるらしく地力が魔人の方が高いらしい。
それでも優吾の方が圧倒するだろう。
戦うのが好きな優吾なら素のステータスでもレベル上げでいつかはどんな魔人よりも高くなるに違いない。
しかし優吾は単純に良いスキルが貰えたことを喜んでいたのでそこまで深く考えていないかもしれない。
そして次はいよいよ僕の番。
神は貰えないだろうけど、せめて極は欲しい。
優吾に戦闘で横に立つことは出来なくてもせめてサポート出来るぐらいの力は欲しい。
そうして僕は興奮で昂る気持ちを胸に秘め、堂々と部屋に向かい歩いていく。
ドアノブを捻りいざ入ろうとしたところで優吾に声をかけられる。
「鳴海ー!頑張って神スキル貰えよー!俺がついてる!この俺がな!がっはっはー!」
その大声で周囲の注目を集めるが気にせずに手を振る親友。
先ほどまで気を張っていたのが馬鹿馬鹿しくなる。
けれど優吾らしいその行動を見て肩の荷が降りる。
きっと優吾ならどんなスキルを授かっても僕と一緒に歩いてくれる。
そう思うとひどく安心する。
それに対して僕も苦笑しながら手を振りかえし部屋に入る。
それが絶望への一歩だと気づかないまま。
☆☆☆☆☆
溢れ出るアイデア!次から次へと溢れて止まらねえ!ついてこい俺の語彙力!学生の時もっとしっかり勉強してればよかった!
3話一部変更しました。物語には変化ありませんが一応。
それとハンスのとこのナルミ副団長ですが名前が被っているためスルガに変更しています。
すまんなスルガ(ナルミ)、お前の席はねぇ。
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