第7話 こんな姿を妹に説明できますか!?
「というわけで、朝目が覚めたらこんな体になっていた」
俺はリビングの椅子にちょこんと座り、朝食をつつきながら妹の聖にこの不可思議な現状を説明する。
いや──正確には「座っている」といっても、足が短すぎて床に届かずぶらぶら浮いているのだ。
寝起きとはいえ、このギャップはどうにも慣れない。
見た感じは小学生の高学年くらい。
もともと妹の聖と少し似ていた顔が、いまや姉妹かと見紛うほど女の子っぽくなってしまった。
しかも銀髪で、どこからどう見ても今までの「俺」じゃない……。
「え、本当にお兄ちゃんなの?」
聖が朝食のトーストを片手に、じーっと俺を見つめる。
そりゃそうだろう。
自分の兄が銀髪幼女になっているなんて、普通に考えたら信じられない。
「じゃあ、ホントにお兄ちゃんなら私のこと詳しく知ってるよね?」
「おお任せろ!」
聖について語らせたら、俺の右に出る者はいないと自負している。
妹知識だけは膨大に蓄えてきたからな。
「じゃあ、名前は早乙女聖、15歳。血液型はA型で誕生日は3月3日。好きなものはぬいぐるみとか可愛い系グッズ。あ、身長159センチで体重は――」
「ストップ!! 体重はやめて!!」
勢いで個人情報を並べたら、聖が慌てて止める。
ほんのり頬を染めていて、うん、かわいい……いや、変なこと考えるな、俺。
「そういうんじゃなくて、もっと二人しかわからないことあるでしょ!」
「あ、なるほど。じゃあ……アレね。」
二人だけの秘密といえば、やっぱりあの事件しかない。
「5歳のとき、聖が俺に“結婚して”って泣きそうな顔で頼んできたこととか?」
ガタッ!
聖が椅子を勢いよく引いて立ち上がる。
「あ、あれは……もう! やっぱりお兄ちゃんだ!!」
頬を真っ赤に染め、バンバン机を叩きそうな勢いで声をあげる。
どうやらようやく、俺が兄であることを信じてくれたようだ。ほっとひと安心……。
「よし……じゃあ次はこれ見てくれ。俺のライセンスなんだけどさ」
俺はポケットからライセンスカードを取り出し、聖に手渡す。
ジョブ欄を見た聖は、あからさまに驚きの表情になった。
「【ジョブ:魔法少女】……!? お兄ちゃん、まさかの“魔法少女”って何!?」
「うん、俺もよくわかんない。でも昨日、山吹さんが言ってたろ。“見た目が変わるのは1段階目が多い”って。俺の場合、それ以上にレアなケースっぽいんだよ」
今日からダンジョンに行くつもりだったのに、こんな幼女の姿で初ダンジョンとは……。しかも「魔法少女」とは。男だったはずの俺に一体何が起きてるんだ?
「こんな見た目じゃダンジョン入るの厳しそうだけど……どうすんの?」
「そこは協会の個人認証に期待。アーティファクト使ってるって講義で言ってたじゃん。あの資料にも書いてあった気がするし。見た目が大幅に変化しても、一応身分証明はできるんじゃない?」
そう言いながら、聖は準備していたカバンを探って、昨日の講義資料を取り出してくれる。
たしかに、スキルやジョブ情報をアーティファクトで管理しているなら、外見に惑わされず本人確認はできるかもしれない。
まぁ、ジョブの段階が進むと見た目が変わることもあるみたいだし、そりゃそうか。
「なるほど。じゃあ一回、協会行って相談しよう。今日は探索者として初日だし」
男から女に変わるだけでなく、年齢まで下がったっぽいから頭がパンクしそうだ。誰かにアドバイスもらわないとどうにもならない。
「ちょっと待って、お兄ちゃん。その格好で外に行くわけ?」
「え? さすがに小学生くらいになってるし、Tシャツ着ときゃ問題ないでしょ?」
寝巻き代わりのジャージをたくし上げながら、自分を見下ろす。
小学生女子×Tシャツ×ジャージというラフすぎる姿。
もしかしたら変な目で見られる可能性もあるけど、まぁ少なくとも動きやすいし……と楽観的に考えていたら、聖は即座に否定してきた。
「ダメダメ! そんな無防備な格好じゃ危ないよ。肩だって今チラ見えしてるし! 私、これから近くのショッピングモール行って服買ってくるから、お兄ちゃんは大人しく待ってて!」
そう言うが早いか、聖は早々に朝食の片付けを放棄してしまう勢いでパッと玄関へ。
恐ろしいほど素早い……。
「は、はや……!? 何も言えなかった」
気づけばリビングには俺ひとり取り残されている。
時計を見ると、まだ朝の9時。
モールまでバスで20分なら、戻ってくるのは10時半か11時あたりか……。
【ジョブ:魔法少女】ってなんなんだろうな、本当に。
俺はソファにドサッと腰を下ろす。ネットや資料で“魔法少女ジョブ”についていろいろ探ってみるか。
思えば、昨日の講義資料にはライセンスとスキルがどう連動するかが書いてあったし。
(……とはいえ、昨日までは普通の男子高校生だったのに、今朝は妹そっくりの銀髪幼女?)
あまりに突拍子もなさすぎて、頭が追いつかない。
とりあえず、あまり放置しても皿がカピカピになるし、簡単に食器を洗ってから調べ物をしよう。
“なにがどうしてこうなったのか”――まずはそこから解明しないと、俺の探索者ライフは始まらなそうだ……。
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