西洋の三国志、英雄たちの誇りと戦い
- ★★★ Excellent!!!
ローマ帝国が分裂し、覇権を争う壮大な戦記が幕を開けます。史実に基づきながらも、戦術や駆け引きに緻密な描写が加えられた本作は、単なる歴史小説にとどまらず、英雄たちの生きた姿を浮き彫りにしています。
主人公のアウレリアヌスは、冷徹な判断と卓越した軍略を持つ皇帝。彼の前に立ちはだかるのは、東のゼノビア、西のウィクトリアという二人の女帝です。ゼノビアの騎兵戦術、ウィクトリアの巧妙な政治力、それぞれの戦い方が対照的に描かれ、アウレリアヌスとの衝突がより一層際立ちます。
戦場の描写は圧巻で、伏兵を用いた戦術やカタフラクト隊との攻防など、細かな軍略まで緻密に再現されています。戦闘だけでなく、ローマ元老院の陰謀や、各地の反乱も絡み合い、ただの武力だけではなく知略が試される展開が魅力的です。
文体は重厚でありながらテンポが良く、戦場の緊迫感や英雄たちの心理が伝わってきます。英雄たちの誇りがぶつかり合い、歴史の奔流の中で翻弄される彼らの姿が、まるで壮大な叙事詩のように胸に刻まれる物語です。