第14話 熱い九月

 9月に入っても日本列島の暑さは変わらず、雨も降らなかったが、鴨川高校は全校あげて動き出していた。日頃、自由でそれぞれが自分のことをやっている鴨高生も、こういう新しいものを創りだすということにかけては、どこまでも行動的だ。

 生徒会で、みんなの「願い」を短冊に集めようとなると、すぐに何人もが集まり、京都中の学校や幼稚園へ飛んで行った。そして、「大人の願いだって必要だ」と駅前で街ゆく人に書いてもらい、ついにはネットでの募集を呼びかけた。次々とみんなのアイデアを持ち寄り、自分たちで飛び出して行く。鴨高の古い石造りの校舎は、生徒たちの熱気に溢れかえっていた。

 各クラスに任された行列の出し物は、それぞれのクラスで工夫を凝らし競い合う形で、どの教室でも遅くまで残る生徒が多かった。

 1年1組は、伊山の強烈な推しで、宝塚風歌劇、「小野小町の雨乞い伝説」をやることになった。小野小町がこの神泉苑でやった雨乞いを、短いミュージカルにしたのだ。もちろん脚本、監督、主演は、伊山だった。そのため、伊山はもっぱらクラスを主戦場にしている。

 放課後、俺は伊山に劇の脚本ができたので見てくれと言われ、教室で伊山、天見と話をしていた。そこへ、南條がやってくる。

「ねえ、聞いた? この『雨乞い』対決、テレビ放送が決まったって」

「なかなか盛り上がってきたよな。この間も、ニュースでうちらの話、出てたしさ」

 伊山が、そう言うと、南條が小道具の扇子であおぎながら、

「相当大人の思惑というのが絡んでいるよね。それがないとこの世は動かないっていうのは、私でもわかるけど、そう言うことなんだなあって、改めて納得するわ。この際、それ、思いっきり利用させてもらわなきゃ、なんだけどね」

「朱莉は大人だねえ。でも、あの池田って副会頭、さすがだな。これだけ大きなイベントにしてしまうんだから。それとさ、池田さん、西寺再興の会の代表もやってるって言っただろ。だからさ、西寺再興の会も全面的にバックアップするって話らしいよ。歴史的リベンジをやれって、相当お金かけてるって聞いた」

「そんなプレッシャーかけられて、甲子社の人たちも大変だろうな」

と天見が、ぼそりと言う。

「大丈夫よ、これはもう真剣勝負、私たちだって、パワー全開なんだから。なんたって、お金かければいいってもんじゃないんだから、アイデアで勝負よ」

 南條が力強く言う。南條は、すでに企画のリーダーだった。

「じゃあ、葉山先生、そろそろ神泉苑へお願いします。ソラも行くわよ。今日もやることいっぱいあるんだから」

「そうだな、じゃあ、会場の下見に行くか」

「じゃあ美紅、クラスのこと頼んだよ」天見が明るく手を振ると、伊山は歌舞伎の大見えを真似て「おう、任せなせい〜」と、椅子に足をのせ、見得を切って見せた。

 作業をしていたクラスのみんなから掛け声がかかり、さらに調子に乗って演技を始めてしまった伊山に、俺たちは笑いながら手を振って神泉苑に向かった。


 神泉苑で挨拶を済ませ、お寺の人と会場の使用説明の確認が終わると、南條が細かい図面を元にしてもう少し段取りを聞きたいというので、俺と天見はその間に境内を見て回って、「雨乞いの儀式」をどうするかを考えることにした。もちろん、天見の手には、小町さんのスケッチブックがある。実際にどういう儀式を行えばいいのか、「雨乞い」を本当の意味で成功させるための具体的な方法については、まだ手探りの状態だった。

 神泉苑は、平安京を造営した際に付属の庭園として造られたものだ。それも今は、かつての十分の一の規模、元のような大きな池ではない。

 池には小さな島があって、そこには、かつてこの地に空海が呼び寄せ、雨を降らせたという善女龍王が祀られており、更に池の周囲に幾つもの社殿がある。

 俺たちは、まず橋を渡って池の小島にある善女龍王社へ向かう。橋は二つあって、赤い法成橋の方は、静御前が雨乞いの舞を舞ったと言われる橋で、ここを渡る時に願えば願いが一つ叶うといわれる。

 俺がその話をすると、天見はトビのことと雨乞いのことどっちを願えばいいのか、と唸って、立ち止まってしまう。

「雨乞いの成功がトビを助けることにもつながるんじゃないのか」と言うと、やっと「どうか雨乞いが成功しますように」と呟きながら橋を渡った。

 善女龍王社の前で天見が小町の絵を出した。

「ねえ、小町さん、ここ、何か感じる?」

「いや、やはり善女龍王様は居られないな。まあ、居られるのなら、こうした事態にはなっていないのだが。とにかく龍王様をこの池にお呼びすることが、雨乞いの成否の鍵になるはず。かつて、空海様がされたようにね」

「ということは、龍王のことをもう少しちゃんと調べないといけなってことだな」

「私の力で呼び出せるものがあれば、何かわかるかも」

 善女龍王社で手を合わせた後、俺たちはあたりを見て、絵に呼び出せるものがないか探した。

 まず、社の前を守る狛犬、社殿の中には、よく見ると龍の絵、天女の絵がある。

「どれか呼び出せそうなのはあるか?」

 俺の言葉に、天見は、まず、狛犬を描いてみるがだめなようで、命を感じないという。

 次に、天女と今回の目的である全女竜王を順に描いてみる。でも絵はいくら待っても動く気配は起きず、天見は首を振った。それを見て小町さんが言った。

「『使い』には格がある。我が出てきたのは特別よ。我が猛烈に現世に出たかったのと、我とあなたの相性がピッタリだったから。残念だけど、まだあなたには、天女や龍王様までは難しいわね」

 仕方ない、他にないか探してみよう。

 俺たちは、池の周りを調べていく。

 池には大きな鯉やアヒルたちが泳いでいた。まずアヒルを描いて呼び出す。天見は、前に平重衡を呼び出してから、動物程度なら呼び出せる確率が格段に上がったという。

 彼女は腰を下ろして、少しの集中の後、サラサラと鉛筆を動かした。

 現れた一匹のアヒルは、彼女の声かけに、すぐに応えて動き出す。

 これだけは何度見ても、ぞくりと鳥肌が立つ瞬間だ。

 スケッチされたアヒルは、この池のアヒル家族の母さんだった。天見がこの池の龍王様について聞く。

「うーん、龍王様のことは、昔の話ってことぐらいしかねえ。あ、そうだ、池の主様なら、何か知ってるかもしれないわね。この池にはね、ずっと昔から住んでいる、主様がいるんだよ」

「ねえ、その主様に会えないかな。この『雨乞い』を成功させないと、大変なことになるの。助けて」

 アヒル母さんは、主様を探して伝えると約束して、池へ戻っていった。

 池でアヒルたちが、急にガアガアと騒ぎ出し、四方へ散っていった。

 そのまましばらく待っていると、目の前の特大の金色の鯉が現れ、水面にぬっと顔を出す。悠然と尾鰭を揺らすその鯉は、体全体が金色で所々黒く苔むしている。

 一体いつからこの池にいるんだ。こんな大きな鯉は見たことがなかった。この鯉が池の主なのか。天見は早速、その鯉をスケッチブックに描き出した。

 描かれた鯉は、スケッチブックの中で、ゆらりと体を揺らすと喋り出した。

「驚いた、『使い』を使えるものに出会うとはな。お前たち、龍王様のことを聞いてるようだな?」

「龍王様のことで、知ってることがあれば、何でも教えてください、主様」

「わしもかれこれ二百年以上ここにいるがな、龍王様が遠く昔に、ここに住めなくなって離れられたとしか知らんのよ。何でも、応仁の乱の頃だとも、二条城ができた頃とも言われとる。まあ、ここが狭くなったと言うのもあるだろうが、人のせいで龍王様が住めぬようになったと聞いたな」

「やっぱり、ここにはもう居られないんだ。でも、今、もう一度龍王様の力を貸してもらわないと大変なことになるの」

「龍王様ゆかりの物は、あのお社のお姿を描いた絵ぐらいしか、もうこの辺りには残っていないだろう。なんせ昔のことじゃからな。すまんな、力になってやれなくて」

 そういうと、池の主は池へ戻り、そのまま底へ消えていった。

「龍王様が住めなくなったって、何でだろ?」

「この状況を見れば大体想像もつくけどな」

 俺は、都会の真ん中に、小さくなってしまった池を見渡す。

「もう少し池を回ってみましょう」

 小町さんの言葉に従って、俺たちは池の周りを丁寧に見て回った。それほどの時間はかからず、正面に戻ってくる。

「やっぱり、この広さじゃ、龍王様を呼ぶなんて無理なのかな」

「そうだな、ここに竜神に住んでもらうっていうのは、ちょっと想像難しいな」

「龍王様は天のもの、次元が違う世界の存在よ。現世での実体はないから、広さ自体が決定的な理由とはならないと思うわ。ただ場は神聖な場所として整える必要はあるわね。我もここで歌を詠んだけれど、この池は、もっと澄んだ清いものだったわ。それが今は澱んであたりの陰の気まで集めてしまっているもの。まずは、この水を何とかしないと始まらないわね」

「だったら、とりあえずは掃除だね」

「そうなのだけれど、それだけでも足りないかな。この神泉苑、元は清い泉が常に湧き出していたの。それが名の由来にもなったのよ」

「水質ということは、まず水の沸き口の確認が必要だな」

 そんな話を俺たちがしていると、不意に小町さんの姿がふっと消えてしまう。同時に向こうの社務所から南條が出てきた。

 天見は、早速南條に提案した。

「ねえ、朱莉、ここ使わせてもらうならさ、まずみんなでこの池の大掃除をしない? だって『雨乞い』って神聖な儀式でしょ。それに相応しく綺麗にしないと『雨乞い』も成功しないよ」

「うん、それは思ってたの、神聖な場所にふさわしい準備をどうするか。よし、帰ったら全校でやるよう、話してみよう」

 後日、話は甲子社側にもいき、両校で一日かけて大掃除を行うことになった。同時に、天見は、アヒル母さんと池の主様に頼んで、池の中を徹底的に調べてもらった。するとやはり池の底にはゴミもあって、水の流れそのものも悪くなっており、水の湧き口が、ゴミや泥でほとんど塞がっていることがわかった。

 池の大掃除の日、掃除はボランティアを募る形だったが、多くの生徒が参加してくれた。日曜の朝から両校の生徒が集まり、みんなで徹底して綺麗にした。何人もが、池の中の掃除もやってくれて、天見は、鯉の主様に聞いた情報を元に、池のどこを綺麗にすればいいかを指示して回った。誠吾たち元気な男子は水着になって藻を取り除き、ゴミさらいまでしてくれて、ありがたかった。

 翌日、天見が仕上げをするというので、神泉苑まで行くと、天見の指示で、アヒルたちや鯉たちが、池の底を綺麗にするよう動いていた。特に役立ったのは鯉たちが集団で泳ぐ、池の洗濯だ。神泉苑の鯉は大きいことで有名だ。あの戦時中、食糧難の時でさえ、京の人たちは絶対手を出さなかったというから、主様をはじめ、年を重ねた超巨漢ぞろいだ。そんな鯉たちが、集団でぐるぐると泳いで洗濯機のように、池に水の流れを作り出し、底に溜まっていた泥を巻き上げて流した。一番大事な泉の湧き口も、同じようにして、泥を綺麗に飛ばしてもらうと、水の湧き口から、きれいな清水がこんこんと湧き出てくるのが見ていてもわかるようになった。これなら時間がたてば池の水も、すっかり入れ替わるだろう。

 最後に主様が、俺と天見のところに来て、口にくわえていた何かを吐き出すと、ザブンと跳ねて潜っていた。

 転がっていたのは朽ちかけた小さな木の板だった。

「おい、これって」

「人を呪うためのお札ね」小町が眉を曇らせて言う。

「これのせいで龍王様がいなくなったのかな?」

「これだけのせいではないだろうが、こういう人の陰の祈りが多くあったのは確かね」

「そういう人のドロドロした心が、この池を澱ませていったのか……」

 俺は、この京に積もった千年を超える黒い人の澱みを思い、やるせなくなった。

 だが、今、生徒たちや池の生き物たちの力を集め、池は少しずつ澄んでいっている。

 なんとかまだ間に合う、そう思いたかった。


◇◇◇◇◇

 翌朝、小町さんが、最後の仕上げに清めのまじないをしておこうというので、ソラは朝早くに家を出て、神泉苑の池に来ていた。

 誰もいない神泉苑は、朝日が眩しく水面を照らし、池の水も澄んできて清々しかった。

 池に近づこうとしたソラは、足を止めた。池の向こう岸に誰かいる。白装束が一人、岸辺で何やら怪しげな動きをしているのだ。

 何だろ、とソラはそっと近づいてみる。白装束の人物は、池に向かって、何か祈っているように見えた。

 ──あ、何か池に投げた。せっかく綺麗にした池なのに。

 ソラが、抗議しに行こうとすると、小町さんが止めた。

「あれは、清めのまじないよ。どうやら、我がするまでもないわね。ここは任せて置きましょう」

「え、そうなの」

「ああ、あれは本格的なまじないだ。密法だな。大丈夫だ。今、行くとかえってじゃまになる」

 小町さんがそういうので、ソラは、そっと池を後にした。

 ――あんなことするのって、誰だったんだろ。

 最後に振り返ると、白い装束が、池の向こう側、木立の向こうへ去っていくところだった。

 木々に囲まれた池は、朝陽に輝き、どこまでも深く見えた。


『雨乞い』まで日が迫った9月の終わり、ソラは、小町と池に来ていた。

「やっぱり、あの拝殿にあった龍の絵に聞くしかないわね」

と小町さんは、難しい顔をしている。

 ソラはそれまで考えていたアイデアを話してみる。

「ねえ小町さん、いつもやってる、トビのまじないのお札を作る時みたいにさ、小町さんと私の力合わせたら、呼び出すことできないかな」

「確かにまじないにも集団で行うものもある。それと同じようにできれば……、我とソラの同調性を考えると、声に力が増すから、……」

「うん、挑戦よ。私、できることはまずやると決めたの」ソラは力強く言った。

「よし、やってみましょう。できるだけ絵に近づくのよ」

 ソラは、池の小島にある善女龍王社へ向かう。

 拝殿の前には柵がある。誰もいないことを確かめると、ソラは靴を脱ぎ、さっと柵を越えて拝殿の中へ上がった。龍王様の絵は拝殿の欄間にかけられており、ソラはその真下で、スケッチブックを広げた。

 こうしている間にも誰か来るかもしれない。時間との勝負、人が来ればおしまいだ。

「小町さん、お願い」

 ソラは、小町の絵を広げると、次の白いページに向かって心を静めた。

 やがて小町の力だろうか、胸に温かいものが流れるのを感じ出した。それが右手に流れ、右手の甲の痣がチリリと熱くなっていく。その熱さが火傷をするぐらいになった時、ソラの手が動き出した。

 どのくらい集中していたのだろう。ソラには一瞬にも永遠にも感じられたが、スケッチブックに、龍がその姿を現していた。神々しい光を放っている。いつの間にかソラは、汗びっしょりになっていた。

 息を呑んで見つめていると、龍はその体をゆるりと動かし、とぐろを巻くと首を上げてソラを見た。

「ほお、人と話すのはいつ以来か。そなたが呼んだのか。なるほど、時の力も借りたか。で、何用じゃ」

 龍王の声が頭にわんわんと響き渡った。力が大きすぎる。その圧倒的なパワーは、体全体に響き渡り、落雷に立て続けに打たれたような衝撃で頭が痺れた。

 ソラは倒れそうになるところをグッと踏ん張り、なんとか話した。

「龍王様、もう一度、この大地を鎮めるために力を貸してください。どうかこの池に戻ってください。池は私たち、みんなの力でできる限り清めました」

 龍王は、炎のようなその瞳でソラの全てを見通すように、じっと見つめ、やがて口を開いた。

「その地は空海との思い出の地であり、空海が作った力の要がある。以前とは比べるまでもないが、確かに力の流れは多少蘇っている。せっかくこのヒマラヤの神泉の地でゆっくりとしていたが、大地が枯渇していくのを黙って見ているわけにもいくまい。もう一働きする時が来たようじゃな。

 ただ、その地を陽の光で満たせ。そうでなければ、我は行くことはできぬ」

 龍王と話せるのは僅かの時しかなかった。

 龍王は、次の瞬間、ゆらめくようにして消えてしまった。

 ソラは体中から何かを搾り取られたような脱力感で、しばらく手を動くことさえができなかった。ゼイゼイ息をさせながら、小町さんに聞く。

「この池を陽にするって、どうしたらいいのかな? 小町さん」

 同じようにぐったりとしていた小町が、顔を上げる。

「そのために祀りをやるのよ。多くの人が集まって、喜び、楽しむ。それが、陽の気を増やす一番の方法よ」

「そうか、だからお祭りなのか。それなら、私たちにもできるよ。たくさんの人で、明るく盛り上がればいいんだよね?」

「そうね、感謝と他を思う、心からの祈りでね」

「龍王様、きっとみんなの力で、この池を、京の街を陽にして見せます。だから、きっとここに戻ってきてください」

 ソラは、欄間にかかる龍の絵を見上げ、もう一度祈った。

 ――もう少しよ、トビ、もう少しがんばって。

 いよいよ2日後に甲子社高校の「雨乞い」の日が迫っていた。

 その一週間後には、ソラたちの番だ。

 雨の降らない京都の街は、すでにあちこちで断水していた。給水車が回ってくると、そこに長い行列が今日もできる。並ぶ人たちの顔は、誰もが同じようなうつろな顔に見えた。

 今や、京都の街の人たちは、その多くがこの雨乞いに淡い期待をもって注目している。

 だが、そんな人々の思いは、うつろいやすく、幸せを願う「陽」にも、恨む「陰」にもなった。陰陽渦巻く気の塊は、京都の街を気の風となって駆け巡り、京都盆地全体に異様な熱となって溜まっていった。

 地の熱はますます高まっており、その限界が近いことを、小町は感じていた。

 

 その日、ソラは、寝る前に、今日も小町と力をあわせ、明日渡す分のトビの結界のお札を作った。このおかげでトビは、何とか無事を保っているのだが、最近はお札の効果がすぐに切れるというので、毎日新しいものに替える必要があった。

 今週に入って、トビは再び発熱し、ぐったりと寝込んでいる。

 葉山先生の話だと昨日から、食事もほとんどとれなくなって、話しかけても反応が少ないという。

 詳しい様子をパンから聞いた小町さんは、ソラを見た。

「さすがに我らの力だけでは限界が近いかもしれない」

 ――そんな……

 ソラは言葉を失った。

 青空が裂けて、そこから黒い陰の気が街を飲み込もうとしている。

 何とか『雨乞い』を成功させよう。龍王様に戻ってきてもらおう。トビのことを思うと、今はただそう祈るだけだった。

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