第9話
「魔王様!!ナイハルト村、ヤンハン村、マラル村が攻め落とされました!!残るはここ、ジャヒルドの首都のみです!!」
あれから王国軍の動きがないと思ったら、いつの間にか攻め込んでいた。情報によると、魔族の一人の家族を人質にして、うまく入り込んだ。そして、魔王軍の武器を奪い、それを使って攻め込んでいるようだ。なんとか応戦しているが、さすがに急すぎた。その結果がこれだ。僕の落ち度だ。
「魔王様籠城しますか、それとも交戦しますか!!」
「いやここにいる民を考えると籠城だろう!!」
「いやいや、まだ我々にも装備はある!!交戦するべきだ!!」
今は緊急会議をしている。今は籠城するか城をでて交戦するかの二つで議論をしている。
僕は未だに悩んでいた。出ても王国軍に城を盗られて挟み撃ちになるかもしれないし、籠城すると、兵糧攻めになるかもしれない。精神を極限まで攻めてくるかもしれない。
「魔王様……」
数分の間が経ち、僕は席を立って宣言した。
「みんな、今までありがとうね。これだけ成長できたのは君たちのおかげでもある。だから……みんなは逃げて。遠いところまで。勇者はここで俺が相手する」
一瞬、誰もが言葉を発せなかった。そして、どよめきが起こった。
「正気ですか!?ここで全員玉砕すれば本望!!魔王様1人だけでは無理です!!」
そんな声に、軽く手で静止させながら、僕はまた語った。
「それはありがたいけど、次の世代を残さないといけない。それに僕が死んだらまた別の魔王が出てくる。僕が死んだところで、君たちが生き延びて次の魔王を支えれば次は勝てるかもしれない。だから今は逃げて、生き延びて、次は勝つ。……君たちの中にも家族がいるでしょ?奥さんや旦那さん、娘に息子、孫や祖父母までいるかもしれない。そんな家族を壊させたりしないのが僕の夢…。だからわかってくれるとありがたいな…」
もう周りの人の家族は失わせたりしたくない。僕のように……あの日、僕がここにきた時のようにならないように……。
「………わかりました。拙者、フマイル・グランバードが、国民を煽動して、逃してみせましょう!!」
「我も!」
「私も!」
「では、命令する。国民よ、全員ジャヒルドを脱出し、生還せよ!!」
「「「「はっ!!」」」」
そして後ろに振り返って、ミラにも告げる。
「君も逃げるんだ、ミラ」
ただ彼女は首を横に振るだけで、頷いてくれなかった。
「これは俺と勇者の問題だ。ミラは関係ないから…」
「私は執事兼メイド兼サポーターですよ?最後までサポートしませんといけませんよね?」
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