IQ30から始まるラブコメ
ぼん・さーらⅡ世
第1話 IQ30から始まるラブコメ
IQ。
きっと誰もが一度は耳にしたことがあるであろうその言葉。
知能指数を示すその数字は、精神年齢を実年齢で割って100を掛けて算出される。
つまり、精神年齢5歳の子の実年齢が5歳であれば、IQは100なのである。
「ねぇ、〇〇くん」
「なぁに、△△ちゃん」
「だーいすき!」
「ぼくもだいすきっ」
「わたし、〇〇くんのおよめさんになる」
「うんっ!」
この会話を聞いてあなたはどんなシーンを想像しただろうか。
きっと多くの人がこう思っただろう。
「幼稚園児の微笑ましいやりとりだな」と。
しかし、これと同じような会話が今まさにここ、西新宿高校の教室で繰り広げられている。
そう、これは彼らのIQ30から始まるラブコメである。
☆☆☆☆☆
「ねぇ、そーくん!」
「なんだ?」
「だーいすきっ!」
朝っぱらから俺の左腕に抱きついて幼稚園児みたいなことを言ってくるのは、小柄で茶髪ショートが似合うちょっと天然で元気印の幼馴染、橋本
ここが西新宿高校2年3組の教室であることを考えると、バカップルが朝から熱心に愛をはぐくんでいる様子に見えなくもない。
しかし俺にはここで「俺もだーいすきっ!」と言えない理由がある。
その理由がこの右腕に抱きついているコイツだ。
「爽太くん」
「なんだ?」
「私もだいすきー」
スレンダーな身体に艷やかな黒髪がトレードマークの、もう一人の幼馴染だ。
普段はクールビューティーな印象なのだが、今だけはそのだらしなくニヤけた顔により絶賛作画崩壊中だ。
そう、俺たちは付き合ってるわけではなく、ただの幼馴染なのだ。
……それで間違いないはず。
「おいおい、朝から両手に華、両腕におっぱいかよ。実に羨ましいねぇ、
そして目の前で俺をイジってくるコイツは友人の町田だ。
ってかいい加減そのセリフは聞き飽きたぞ。せめてバリエーションを増やせ。
「ちょっと町田君! それセクハラ!」
「そうですよ。私は胸ではなく愛で爽太くんを包み込んでいるのです」
コイツらもコイツらで毎日同じやり取りをして飽きないのだろうか。
「町田。そうは言うが実際は右手にミカン、左手にトマトくらいなもんだ。それでも羨ましいか?」
「はぁ……お前はなんにもわかっちゃいない! おっぱいはそれ自体が尊く高貴な存在であるのだ。サイズなど二の次だ」
「そうだそうだっ!」
おい、緒美。お前さっきまでセクハラだとか言ってなかったか?
「でもそーくんがおっきい方がいいなら……あたし頑張るよ?」
緒美は自分のその二つのトマトを一瞥してから少し赤らんだ頬とともに俺の目を見つめる。
……頑張るって何をどう頑張るんだよ。
「何を言ってるんですか緒美。爽太くんはありのままを受け入れてくれる優しい人ですよ? ねぇ、爽太くん?」
茉依は茉依で、そう言いながら俺にそのミカンをさらに強く押し当ててくる。
まったく揃いも揃ってアホだらけだ。
まぁ俺は成長過程のトマトも小ぶりなミカンもきっとおいしく頂けるが……って俺まで頭がおかしくなってきた。
「おい爽太。こんな美少女幼馴染2人に囲まれてそんなしけた顔しやがるとか、全国の男子高校生のヘイトがお前の心臓をぶち破っても知らんぞ?」
「お前なぁ。だってIQ30みたいなやつらだぞ? 毎朝これをやられる俺の身にもなってみろ!」
「え……そーくん嫌だったの? そんな、あたしそーくんのお嫁さんになりたいのに!」
「爽太くんごめんなさい……嫌なところはがんばって直すから、わたしと結婚してよー」
「…………」
「あのー、プロポーズはもっとロマンチックなところでやった方がいいんじゃないですかね、お二人さん? そろそろ授業も始まるぜ?」
町田。俺は今日初めてお前がまともな奴だと知ったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます