第3話 豆コロッケの冒険
次の料理に挑戦するため、私はまたもや異国の食材を手に取っていた。今日は、クッバという料理に挑戦することに決めた。でも、ひき肉を使う代わりに、私が見つけた豆を使ってみようと思ったんだ。思い切って、豆を潰して、コロッケみたいなものを作ったらどうだろう?それなら、日本のコロッケに近づけるんじゃないかと思った。
「カリム、この豆、どう思う?」私は目の前の豆を指差しながら尋ねた。
カリムはじっと豆を見つめてから、「見たことがないけど、面白そうだな。これをどうするんだ?」と聞いてきた。
「この豆を潰して、コロッケの中身にするの。少しスパイスを効かせて、外はサクサクに揚げてみるんだ。」私は笑顔で言った。
カリムは興味津々で頷き、「それ、すごく美味しそうだな。」と言ってくれた。私は豆を水で戻して、まずは柔らかくなるまで煮ることにした。豆が煮えて柔らかくなると、軽く潰してペースト状にする。それを小麦粉とスパイスで味付けし、少しずつ丸めていった。
「これ、形がちょっと難しいな。」私は手に取ったペーストが少しべたつくのを見て、試行錯誤しながら形を整えていた。
「うん、それは確かに。でも、形がどうあれ、美味しくなればいいんだろ?」カリムがにっこりと笑って言った。
その言葉に励まされながら、私は丸めたペーストにパン粉をまぶし、じっくりと揚げていった。少しずつ揚げると、外はきれいな黄金色になり、香ばしい香りが漂ってきた。
「どうだろう?」カリムが心配そうに見守っている。
「もう少しで完成よ。」私は最後の一つを揚げながら言った。
やがて、全部揚げ終わり、私はそのコロッケをお皿に並べた。見た目は少し不安だったけれど、香りはとても良く、少し食欲をそそるものがあった。
「できたわ、豆のコロッケ!」私は満足げに言った。
「おお、すごいな。見た目もかなりいい感じだ。」カリムはじっとコロッケを見つめている。
そのまま、家族が集まる食事の時間になった。私は自分が作った豆コロッケを家族の前に並べると、父は少し驚いた顔で言った。
「これは、何だ?見た目はちょっと不思議だが、匂いはいいな。」
「豆を使ったコロッケだよ。日本のコロッケに近いものを作ってみたの。」私は少し自信を持って答えた。
母は手に取って一口食べると、「ああ、この味、懐かしいわ。でも、少しスパイシーで面白いわね。どうやって作ったの?」と尋ねてきた。
「豆を煮て潰して、小麦粉とスパイスを加えて、丸めて揚げたの。」私は嬉しそうに言った。
兄も興味深そうに食べて、「うん、外はサクサク、中はほっこりしてて美味しい。もうすこし甘みもほしいな。」と言って、さらにもう一つ手に取った。
私は少し戸惑いながらも、「甘みを加えるのはちょっと難しいけれど、次はもう少し工夫してみるわ。」と答えた。
「でも、美味しいな。」カリムが大きくうなずいて言った。
私はその言葉を聞いて、心から安心した。日本の味に少しずつ近づけるようになってきたと感じた瞬間だった。この異国の地で、日本の料理を再現するのは簡単ではないけれど、少しずつそれに近づけていると思うと、とても嬉しくてたまらなかった。
「みんな、どうぞ、たくさん食べてね。」私は笑顔で言って、もう一度お皿に盛り付けた。
今日は、家族と一緒に普段の食事を囲んでいる。私たちの家の食卓には、いつものように香り高い料理が並べられていた。テーブルの上には、ピラフや、スパイスの効いた肉、そして豊かな香りのハーブがたっぷりと使われたサラダが並んでいる。家族全員が集まり、それぞれが食事を楽しんでいた。
「今日は少しだけスパイスを抑えてみたけど、どうだ?」父が微笑みながら言う。
「大丈夫よ、お父さん。」私は笑顔で答えた。「いつもより少し控えめだけど、それでも十分に美味しいわ。」
テーブルには、香ばしい焼きたてのピラフが盛られていて、その上には少し焦げ目のついた鶏肉が乗っている。肉にはたっぷりと香辛料がまぶされていて、焼き上がった瞬間に、肉のジューシーさとスパイスの香りが広がっている。
「お母さん、これ美味しい!お肉がすごく柔らかい。」私は嬉しそうに言った。
母は少し照れたように微笑んで、「ありがとう、でもこれはちょっと工夫してみたのよ。スパイスを前より少し軽めにしたから、子供たちにも食べやすいはずよ。」と言った。
テーブルに並んだサラダには、フレッシュなミントやレモンがたっぷりと加えられていて、そのさっぱりとした味わいが、重めの料理とのバランスを取ってくれている。香り高いオリーブオイルがドレッシング代わりになっていて、野菜の甘みとスパイスの辛みが絶妙に調和している。
「このサラダ、爽やかでいいな。」私はサラダを取りながら言った。
カリムも横で食べながら、「本当に、毎回この料理が楽しみだよ。香りがすごくいい。」と頷いた。
「そうね、この料理を作るのは少し手間だけど、その分だけ美味しさが倍増するんだ。」母は言った。お母さんはいつも、食材を大切にして、手間ひまかけて料理を作る。それが、食事を囲む時間の楽しさを一層引き立てている。
父がふと、「でも、最近は前よりも日本の料理が懐かしくなるんじゃないか?」と尋ねた。
私は少し考えてから、「うん、実はそう。特にご飯やお味噌汁が恋しくなったりする。でも、この土地での食事も悪くないよ。こんなに美味しい料理があって、みんなで食べることができるのは、幸せなことだと思う。」と答えた。
「それに、私たちの料理は、スパイスを使っても不思議と飽きないよね。」カリムが言った。「毎日食べても、また食べたくなるんだ。」
私はその言葉にうなずきながら、「本当にそうだね。毎回少しずつ味が変わるから、いつでも新しい発見があるんだ。」と続けた。
食事が進むにつれて、家族とカリムの間に笑い声が広がった。普段の食事は、もちろん日本の味とは違うけれど、この場所で過ごす時間を共に楽しむことができる幸せを、私は感じていた。スパイスや香草が効いた料理が、私たちの間に自然に溶け込んでいて、食事が終わる頃には心も体も満たされていた。
「お母さん、今日は本当に美味しかった。」私は言った。
「ありがとう。あなたが喜んでくれると、私も嬉しいわ。」母はにっこりと笑った。
食事が終わると、私たちはゆっくりと食卓を片付け、今度はリビングでお茶を楽しんだ。異国の地で、こうして家族と共に過ごす時間が、どんなに大切かを改めて感じる。
「これからも、日本の料理も大切にしつつ、こちらの料理も楽しんでいこうね。」私は微笑みながら言った。
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