りょーめんさんの『皇女は異能の者たちと躍る【本編完結】』、序盤から胸を掴まれました。開通式の爆発と瓦礫の少女に誓う「この土地を変える」が物語の芯。トロイメア(新市街/旧市街/東岸)の空気の差、相棒ミセラと蜥蜴の隊長エルドレッドらの息遣いも鮮やか。富豪クロスターの賄賂を一喝し蝶ネクタイごと机に押さえつける場面は痛快で、『黒き淑女』との対決が一気に動き出す。薔薇の香りの淑女ベスティラと『黒い刃の人形』の不穏さも最高。難解さに頼らず会話で走る筆致と、迷いながらも進むジェラードの覚悟が読者の背を押す。完結まで追いかけます。
祝賀の広場に響く爆発、そして幼い皇女が叫んだ「それなら、私が変える!」という決意――ここにすでに物語の核が込められていて、胸を打たれます。
十年後、皇女ジェラードが身分を隠し、ただの捜査官として現場に立つ姿はとても印象的です。
与えられた役割に甘んじるのではなく、自らの手で真実を掴もうとする強さ。
それは彼女が過去の約束を覚えているからこそであり、痛みを抱えながらも前に進む姿がひときわ輝いて見えました。
さらに惹かれたのは、登場人物たちの個性の豊かさです。
どの人物も一筋縄ではいかず、印象に残ります。
敵キャラクターに至っては、単なる「悪」として片付けられない信念や背景を抱えており、その複雑さが物語に厚みを与えています。
不穏な空気と共に漂うのは、かすかな希望と決意。
過去の因縁と、解き明かされる事件の数々。
ファンタジーの壮大さと、ミステリーの緊迫感が絶妙に絡み合う物語です。
<第一部 序章「幼き皇女は約束を結ぶ」を読んでのレビュー>
晴れやかな祝賀の広場から始まり、突如として爆発に襲われる場面へと転じる冒頭は、幼い主人公の視点を通じて緩急が鮮やかに描かれていました。回想と現在の移動場面とが接続され、物語の舞台と人物の動機が明確に提示。場面転換が明瞭で、情景を追いやすい構成です。
火の手の上がる瓦礫の中で「それなら、私が変える!」と幼いジェラードが叫ぶ場面
悲惨な光景の只中で、無力さを超えて意志を言葉に変えた瞬間には、場面の緊迫感と同時に核となる強さが鮮やかに浮かび上がる。
列車の場面に戻り、かつての約束の地に赴く姿勢が描かれることで、時間の流れが自然で、物語全体が「約束の継承」として立ち上がっていく。人物の動機と舞台背景が強固に結び付いており、物語の厚みを感じます。
迫力あるシーンから始まるこの物語。
とある事件に巻き込まれた皇女ジェラードは、同じく事件に巻き込まれた少女と“ある約束”を交わします。ここで一気に引き込まれました。
約束を守るため、皇女という身分を隠し戦うジェラード。
ミステリー要素あり、異能を持つ仲間たちとの友情あり――
そんな熱くも切ない物語が、力強い文章で描かれていきます。
敵キャラも一筋縄ではいかず、「悪」として描かれていない深みも魅力的。
つらい現実に直面してもなお、前に進むジェラードの姿には胸を打たれます。
ファンタジー×ミステリーが好きな方、冒険譚が好きな方におすすめの一作です!
鉄道の開通式、ファンファーレが奏られ、鮮やかな風船が舞い上がっているような祝賀ムードだった。
そんな中、突然大きな爆発音と閃光、衝撃波が走った。
混乱の中、母と逸れてしまった幼き皇女は一人膝を抱え蹲る少女と出会う。
その隣には動かなくなってしまったその少女の母親の姿が……
母親は「この土地は腐っているからこうなった」と言って息を引き取ったのだとか。
その言葉を聞いた皇女は、少女に悪いことをする奴は私の手で捕まえると約束をした。
それから十年後、皇女は身分を隠し捜査官としてその土地を訪れることになる。
一時は地下書庫の書類整理係に回されてしまいそうになるが、実力を見せつけ別の部署に配属されることになった。
しかしそこは、はぐれ者が集まる部署だった。
外見から内面まで個性豊かなキャラと一緒に活躍していく皇女の姿は必見です。
祝賀の空に轟いた爆炎で未来を奪われた幼き皇女ジェラード。
10年後。身分を偽り〈東部開拓領〉へ乗り込んだ彼女を待っていたのは、はぐれ者ばかりが集う治安維持〈十三番隊〉だった。
蜥蜴人隊長エルドレッドと、寝ぼけ槍使いミセラほか厄介者ばかりの部隊である。
そんなジェラード捜査官が見つけたのは、東部開拓領・トロイメアでの新聞記事だった。
黒いドレスで舞踏会の闇を裂き、富裕層だけを八つ裂きにする怪人・黒き淑女。
連続殺人は三件目、街は恐怖とスキャンダルで沸騰する中、ジェラード捜査官は幼き日の約束を胸に、事件の解決を決意する――。
〈東部開拓領〉で繰り広げられるノワール・ファンタジー。ここに開幕!!